コンビニの労働環境
コンビニのフランチャイズ(FC)店主らの労働組合が、セブンイレブンとファミリーマートのコンビニ大手2社に対して団体交渉に応じるよう求めていた二つの労働紛争で、中央労働委員会は「店主は労働者とはいえない」として団体交渉権を認めないとの判断を示した。
中央労働委員会がコンビニ店主の労使上の位置付けについて判断を示すのは初めてで、団体交渉権を認めていた地方労働委員会の判断を覆すものとなった。
コンビニのFC店オーナーが労働組合法上の労働者ではなく独立した事業者だというのは、当たり前すぎて議論の余地は無いように思える。
なにもコンビニ店主が労働していない、と言ってるのではない。自分で働いている店主の場合は、働いているのだから当然ながら労働者だ。ただ、労働組合法上の労働者ではないと言ってるだけだ。
誰かから給料をもらうのではなく、店の収益から収入を得ている事業主なのだから、労働組合法上の労働者とは言えないだろう。
しかし、一審の東京労働委員会では「労組法上の労働者に当たる」という判断を下していたくらいだから、実は、それほど自明ではないほど微妙な問題だ。
形式的に自営業者とか業務委託などの形をとっていても、実質的に支配従属関係があれば、労働法上の労働者として扱われる。そうしないと、労働者が契約の形式だけで自営業者にされてしまい、無防備な状態におかれるからだ。
例えば、運送業では、社員にトラックを購入させて、業務委託に契約を切り替える形での自営業者化が問題になった。自営業者の形はとっているものの、仕事は断れず、単価も言い値の支配された自営業者なので、こういう場合には労働法が適用される。
つまり、コンビニ店主は自営業者ではあるけれど、実質的に支配された契約であり、労働法が適用されるのではないか、という問題だ。
ただ、運送業の場合と比べると、やはりコンビニの場合は自営業者的な要素が強いと思う。土地と建物があり、自分で商店を始めたいが、自分で独自に商店を始めるのは大変だ。とてもとても大変だ。一方、コンビニのFC店になれば、ノウハウから仕入れまで全て本部が面倒見てくれて、誰でもすぐに始める事ができる。なので脱サラしてコンビニを始める人も多いが、あくまでも自由意志で店を開いた訳であり、トラックを買わされた運送会社の社員とは根本的に異なるような気がする。なので、労働組合法上の労働者だというのは無理があるような気がする。
ただし、労働組合法上の労働者でないからと言って、本部と交渉できないなんて事はあり得ない。あくまでも契約でフランチャイズに加盟しているのだから、契約について交渉すればいい。単に労働組合法上の団体交渉とは見なされないだけであり、交渉することが禁止されている訳ではない。
セブンイレブンなどの店主らでつくるコンビニ加盟店ユニオンは、24時間営業の見直しを求めて本部のセブンイレブン・ジャパンに団体交渉を求めたが、本部側は拒んでいる。これは労働組合法上の団体交渉を求めたため拒まれたものであり、個々の契約は、契約なんだから当然ながら交渉はできる。個々で交渉すると力関係が弱いから相手にしてくれないだろうけど、集団で交渉すればいい。
労働組合法上の団体交渉として位置付けようとするから拒まれるのであり、例えば全国のフランチャイズ店がみんな揃って交渉を要求すれば本部も嫌とは言えないだろう。今は、そこまでの力の集結が無いから相手にされないだけだ。一部の店主だけの要求では通用しないだろうけど、力を集結させればいい。
最近、大きな問題になっている24時間営業についても、やりたくない店主が多いのなら、みんなで力を合わせて交渉すべきだろう。
そもそも、コンビニの24時間営業なんて不要だと思う。昔はコンビニなんて存在しなかったから、そもそも深夜に営業している商店なんて無かったが、コンビニが登場してからだって、最初は深夜には閉店していた。セブンイレブンだって朝の7時から夜の11時までやっているからセブンイレブンって名前だった。「開いててよかった」なんていうキャッチフレーズは夜の11時までの事を言ってたに過ぎない。誰も11時を過ぎてまで営業することを期待してた訳ではない。
それなのに、東大阪市にあるセブンイレブンが朝6時から深夜1時までの営業に切り替えたところ、「契約書に抵触しており、このまま時短営業を続けると契約解除になる。契約解除になると1700万円の賠償金が発生する」と告げられた。
FC制度はそもそも、自分の意思でこのビジネスを選んだオーナーと、経営ノウハウを提供する本部との、対等の契約に基づいている。その契約で24時間営業が義務づけられている以上、違反すれば違約金を求められるのは当然と言えば当然だ。
しかしながら、この問題が明るみになると、セブンイレブン本部も問題の深刻さを理解し、少しずつではあるが改善の動きが見られる。なぜなら、今回の問題はこの店に限った特殊事情ではなく、日本全体で起こっている構造的問題だからだ。
この店が24時間営業を止めたのは学生バイトのやりくりがつかなくなったからだ。近年は人手不足が深刻で、新しく入ったバイトも深夜勤務が多いとすぐ辞めてしまう。この店に限らずコンビニ店員の人手不足は深刻で、このままでは24時間営業体制は崩壊すると思われるからだ。
繰り返すが、コンビニが不要とまでは言わないが、少なくともコンビニの24時間営業は必要とは言えない。
(石材店)「でも幹事長もよく利用してるでしょ?」
(幹事長)「はいな。登山やスキーに行く時は深夜の移動が多いから重宝してます」
ただ、深夜でも開いてるから利用しているだけであり、深夜に開いてないのなら、前日に買って用意しておく。昔はみんなそうやっていた。当たり前だ。深夜でもホカホカの肉まんが食べられるのは嬉しいが、別に無くても困りはしない。
最近、コンビニは住民票や印鑑証明などの発行までやり、社会インフラとして無くてはならない存在になっている、なんて論調があるが、そんな事はない。単に便利になっただけであり、無くても困りはしない。だって、ちょっと前まで、そんなサービスは存在しなかった。なんでもかんでもコンビニに頼っているのは、逆に恐ろしい世の中だと思う。
コンビニに限らず、なんでもかんでも便利すぎる世の中になってしまったが、本当に必要なんだろうか。世の中はおかしな方向に走りすぎてるんじゃないだろうか。
(2019.3.16)
〜おしまい〜
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