アメリカのグリーンランド買収

〜 バカげた話ではない 〜



お騒がせ男のトランプ大統領がデンマーク領のグリーンランドを買収したいと言い出し、それに対してデンマークの首相が拒否したため、トランプ大統領がデンマーク訪問を急遽中止したとて騒ぎになっている。

もともとトランプ大統領は、デンマークのマルグレーテ女王の招待でデンマークを公式訪問する予定だったんだけど、グリーンランドを買収したいっていうトランプ大統領の意向に対してデンマークのフレデリクセン首相が拒否したことから、トランプ大統領は「グリーンランド購入交渉に興味がないというフレデリクセン首相のコメントを受けて、予定していた会談を延期する」などとツイッターで招待を断ったらしい。
こういう重大な外交事項をツイッターで連絡する神経も信じられないが、そもそも他国の領土を買いたいだなんて、常軌を逸した事を言い出し、それを拒まれたからと言って公式訪問を急遽中止するなんて、常識ではあり得ない傍若無人で無礼千万な行動だ。

デンマークの政治家からは「グリーンランドとデンマークの人々に対して失礼極まりない。グリーンランドを買うなどという選択肢がないことを、あらかじめトランプ氏に教える人が米国務省には誰もいなかったのだろうか。全くどうしようもない。この男を頼りにすることはできない」なんて声が聞こえてきている。
また、超大国の大統領を相手に堂々と拒絶したデンマークの首相に対しては賞賛の声が上がっている。彼女は41歳で、デンマーク史上最年少の首相であり、女性首相としては2人目だ。その若い女性首相がトランプ大統領に堂々と拒否しんだから、英雄視されつつあるのだ。

しかーし、実はトランプ大統領は、そんなにアホではない。アホはアホだけど、見境なく泣きわめく韓国の大統領ほどのアホではない。トランプ大統領のグリーンランド買収の意向は、荒唐無稽な与太話ではない。決して、そうではない。そこを多くの人は見過ごしている。
グリーンランドは世界最大の島で、面積は日本の5倍以上、本国デンマークと比べたら50倍以上もある巨大な島だ。デンマーク領なんだから、なんとなくヨーロッパにあるようなイメージだが、地図を見れば分かるが北米にある。普通に考えたらカナダ領のように見える位置だ。
なぜここがデンマーク領なのかと言うと、もともとイヌイットが住んでいたが、10世紀頃にアイスランドからヴァイキングが移住してきて、13世紀にはノルウェー王国の支配下に入り、その後、色々あって1814年にデンマーク領となった。北極に近く寒冷で氷が全土の85%を覆っているような厳しい土地だから、どこの国もあまり重要視しなかったためだ。

このような経緯もあり、デンマークの一部とは言え、1979年に自治権が与えられ、さらに2009年に自治権が拡大され、今では外交や防衛を除くほとんど分野で自治権が確立されている。さらに、多くの島民はデンマークから独立したいと思っている。だがしかし、自治政府の歳入の半分はデンマーク政府の補助金頼みで、経済的には自立していない
この広大な島に人口は僅か5万6千人ほどしか住んでいない。そのため、デンマーク政府もあまり重視はしておらず、本音を言えば持て余しているのではないだろうか。

そして、そこに目を付けたのが悪の帝国である中国だ。
グリーンランドでは空港の拡張計画があり、自治政府は、それによって一気に経済発展を図り、最終的には独立を目論んでいるんだけど、費用が高額なのでデンマーク政府は負担に消極的だった。それで自治政府は中国に頼り、中国が金を出す方向で計画が進み始めた。
この動きに対してアメリカが猛反発した。なぜなら、グリーンランドには米軍基地があり、そこにはアメリカに向かって飛んでくる大陸間弾道ミサイルを検知するレーダーがあるからだ。グリーンランドはアメリカの軍事的な要衝なのだ。それでアメリカはデンマーク政府に対して、中国を進出させるなと強く圧力をかけ、それを受けてデンマーク政府は一転して自治政府に空港拡張の資金提供することになった。

なぜ中国が地球の反対側にあるグリーンランドを狙っているのかと言うと、なんと中国は、北極を宇宙や深海などと並ぶ戦略上の新領域と定め、自らを北極近傍国家などと位置づけし、氷上のシルクロード構想なんてものを臆面も無く提唱して北極圏への進出姿勢を鮮明にしているのだ。一体、どういう風に地図を見たら中国が北極近傍国家になるのか理解不能だが、世界制覇を目論む中国は北極だろうが南極だろうか月だろうが虎視眈々と狙っているから、恥も外聞も無く何でもやる。
そのため中国はグリーンランドに対して、空港拡張だけでなく衛星通信施設なども持ちかけており、それが現実となるとアメリカにとっては安全保障上の重大な脅威になる。そして、さらに、もしも将来、グリーンランドが中国の資金により経済発展してデンマークから独立したら、なんと北米に親中国の国が誕生してしまうのだ。これはトンでもない悪夢だ。かつての民主党政権は日本にとっての悪夢だったが、グリーンランドが中国になるなんて、世界平和にとっての悪夢だ

なので、トランプ大統領が先手を打ってデンマークを買収しようとしても、それほど荒唐無稽な話ではない。実は過去にもアメリカは、1946年にトルーマン大統領が1億ドルでグリーンランドの買収をデンマークに持ちかけたことがあるが、この時も拒否されている。
しかし、体力の無い小国デンマークは、グリーンランドを維持する力が無いのであれば、世界の平和を真剣に考え、アメリカに売却するのが得策ではないだろうか

(2019.8.31)



〜おしまい〜





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