非正規労働者の待遇格差に対する最高裁判決

〜 妥当な判断 〜



正社員と非正社員待遇格差をめぐって、最高裁の判決が出揃った

結果は、東京メトロ子会社の契約社員が訴えていた退職金や、大阪医科大のアルバイト職員が訴えていたボーナスの支給は認めない一方で、日本郵便の契約社員が訴えていた扶養手当、年末年始勤務手当などの各種手当や夏季・冬季休暇、有給の病気休暇などの各種休暇認めた
おおむね妥当な判断と言えよう。

(ピッグ)「久しぶりの書き込みですね」
(幹事長)「しばらく登山遠征に行ってたもので」


近年は、同一労働同一賃金を推進する流れがあり、例えば、年賀状の作業で忙しい郵便局の年末年始の勤務手当について「郵便局で忙しいのは契約社員も正社員も同じ」という理由で支給を認めたのは納得できる。正社員特有の支給理由ではないと言えるからだ。
扶養手当になると微妙なところだが、それほど違和感は無い。

一方、退職金やボーナスは、働いたことへの対価という意味もあるだろうが、それだけではなく、正社員の様々な負担に対する総合的な報酬であるから、通常の賃金とは別けて考える必要があるだろう。

最高裁は、大阪医科大のケースでは、「似たような業務をしていた正職員は試薬の管理などに携わる一方で、アルバイトの業務は相当に軽易だった」として、業務内容に違いがあり、また「ボーナスは正職員の職務を遂行し得る人材確保の目的があった」ことから訴えを退けた。
東京メトロ子会社のケースでは、同じように売店業務に従事している正社員と比較して、「業務内容はおおむね共通するが、正社員は複数の売店を統括し、売り上げ向上のための指導やトラブル処理などを行うことがある」として、正社員との間で役割などに差があったと判断し、「退職金を支払わないことは不合理な格差には当たらない」とした。
また「正社員は配置転換があるなど一定の相違があり、ボーナスの不支給は不合理とまでは評価できない」とも指摘している。

同一労働同一賃金と言っても、そう簡単に進める事はできない
なぜなら、日本では長らく終身雇用の正社員が標準的な働き方と見なされてきたが、賃金は年功制になっており、若い時の賃金は低いが年齢を重ねるごとに右肩上がりで上昇していく。
定年まで同じ会社に勤め続けることで元が取れる仕組みなので、早期離職を防ぎ企業が長期的な人材戦略を立てやすくなるという観点からは合理性がある。
そのため、同じ仕事をしていても、年上の社員の賃金は高くなるので、同一労働同一賃金は馴染まない

また、一般的に正社員は職務内容が規定されておらず会社に命じられるままに配置転換や転勤を受け入れることが求められる。そして、その代償として定年まで雇用が保障され、またボーナスや退職金も支給される
なので、そういう負担が無い非正規労働者が同じ待遇を要求するのは虫が良すぎるだろう。

もちろん、日本型の雇用体系が絶対的に正しいという訳ではない
成果が上がらなくても歳をとれば賃金が自動的に上がる仕組みは、グローバル化が進む産業界においては優秀な人材確保が困難になり、企業の競争力を損ないかねない。
また、同質的な生え抜き正社員だけではイノベーションを生み出せなくなり、外部から多様な人材を取り込む必要性が高まっており、年功制は馴染まなくなってきている。

しかし、どんな会社もそうかと言えば、そうではない。従来型の人事制度が機能している会社も多いだろう
そのような会社においては、ボーナスや退職金は、正職員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的から正職員に対してだけ支給することに不合理性は無いだろう

(2020.10.16)



〜おしまい〜





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