アゼルバイジャン軍事パレード

〜 このままでは終わらない 〜



30年ぶりに再発したアルメニアとの軍事衝突に勝利したアゼルバイジャンが、停戦合意から1ヵ月の節目に、首都バクーで戦勝記念の軍事パレードを行った。

同じ旧ソ連に属しながら、ナゴルノ・カラバフの帰属をめぐって長年対立してきたアゼルバイジャンとアルメニアだが、今回の軍事衝突ではアゼルバイジャンが圧勝し30年もの間、アルメニアに不法占拠されていた領土の大半を奪回した
戦闘はロシアの仲介で停戦合意したが、実質的にアゼルバイジャンの大勝利を追認する停戦であり、アゼルバイジャンとして大いに祝いたい気持ちは分かる。

軍事パレードには3,000人の兵士が参加し、戦闘で威力を発揮したトルコの無人攻撃機(ドローン)や地対地ミサイルなどのほか、アルメニア軍から押収した戦車も披露された。
また、アゼルバイジャンを全面的に支持してきたトルコの兵士も行進したほか、トルコのエルドアン大統領も駆けつけ、両国の連携を印象づけた。

式典で、アゼルバイジャンのアリエフ大統領は「アルメニアが不法占拠してきた自国領土を取り戻し、正義と国際法を復活させた。トルコとの兄弟愛を示すことができた」とトルコに謝意を示し、エルドアン大統領も「アゼルバイジャンとトルコが協力すれば、あらゆる脅威に立ち向かえ、困難を乗り越えて成功を手にできる。トルコとアゼルバイジャンの関係は『二つの国家、一つの民族』だ」とまで言い切った。

とりあえず停戦は実現したが、問題の根本であるナゴルノ・カラバフの帰属は決着しておらず、今後も予断を許さない。
今後の鍵を握っているのは、もちろんトルコだ
トルコは、民族や言語が近く、同じようにイスラム教徒が多数を占めるアゼルバイジャンとの間で兄弟国と言われる親密な関係を築いてきた。また、トルコにとってアゼルバイジャンは、ロシアと並ぶ主な天然ガスの輸入相手国でもある。
一方、トルコとアゼルバイジャンの間に挟まれたアルメニアとの間では、オスマン帝国時代に大勢のキリスト教系アルメニア人が殺害されたとされる歴史をめぐって対立し、いまだに国交が無い。
このような背景から、今回の軍事衝突の開戦当初からトルコはアゼルバイジャンを全面的に支持してきた
単なる経済的支援だけでなく、トルコがシリア人の戦闘員を傭兵としてアゼルバイジャン側に送り込んでいたほか、トルコ製の軍事用ドローンも提供した。これらはアゼルバイジャンの勝利に大いに貢献したと見られている。
エルドアン大統領としては、戦勝記念の式典に出席することで、旧ソビエトの一部だったアゼルバイジャンとの関係強化を印象づけ、ロシア側をけん制する狙いもある。

このようにトルコがアゼルバイジャンに接近して影響力を拡大しようとしている事に対して、ロシアは警戒感を強めている
ロシアはアルメニアと軍事同盟を結んでおり、一応、アルメニア側の立場なんだけど、トルコはロシアにとって地対空ミサイルなどの武器やエネルギーの重要な輸出先であり、またシリアでも停戦と和平を実現させる取り組みで連携してきただけに、トルコとの全面的な対立は避けたい
そのため、今回の戦闘でロシアはアルメニアを積極的に支援することはなかった
停戦に当たっては、ロシアは2,000人の平和維持部隊を派遣するなど、なんとか旧ソ連であるこの地域での影響力を確保する事ができたが、非常に難しい立場だ。

一方、アルメニア国内では、事実上の敗北となる停戦合意を受け入れたとして、停戦合意以来、パシニャン首相の辞任を求める抗議活動が続いている。こちらも、このままでは済まないだろう。
まだまだ目が離せない状況が続く。

(2020.12.11)



〜おしまい〜





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