モロッコとイスラエルが国交正常化

〜 もちろん、このままでは終わらない 〜



トランポ政権の仲介により、西サハラ紛争の当事者である北アフリカのモロッコイスラエルとの国交を正常化することで合意した。

トランポ大統領は、長年対立してきたイスラエルとアラブ諸国の関係改善を仲介していて、今年8月以降、電撃的にイスラエルとの国交正常化で合意したのはアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、スーダンに続いてこれで4ヵ国目になる
大統領選でヨボヨボバイデンに負けたばかりのトランポ大統領だが、大統領選挙の再選を目指して外交成果を出そうとしてイスラエルとアラブの接近を強力に推進してきたものだ。今回は既に大統領選挙での負けが確定した後なので、せっかく成果を出したのに少し虚しいが、自分では「中東に平和をもたらす画期的な成果だ」と強調している。

トランポ大統領の思惑が何であれ、イスラエルとアラブ諸国の接近は、トランポ政権の外交政策で最大の成果の一つになっているのは間違いない。
なぜ、大統領選挙での負けが確定したこのタイミングで事を急いだのか疑問が残るが、イスラエルとアラブ諸国の接近は、中東で影響力を拡大するイランへの包囲網を強化することにもなっている。
イスラエルは、もちろんトランポ大統領に大感謝だ。ネタニヤフ首相は「イスラエルと中東に平和をもたらすためのトランプ大統領の並外れた努力に感謝したい」なんて述べている。トランポが大統領選挙でヨボヨボバイデンに負けたことが残念でならないようだ。

ただし、今回のモロッコとイスラエルの国交正常化には別の側面がある
今回の国交正常化の合意に当たっては、モロッコが領有権を主張する西サハラについて、トランポ政権はモロッコの主権を認めるとした。
つまり、アメリカがモロッコの不法占拠を認める代わりに、モロッコがイスラエルとの国交正常化に合意した取引だった訳だ。

10月にイスラエルとスーダンの国交正常化を仲介した時も、トランポ大統領はスーダンが求めていたテロ支援国家指定の解除に応じた。米国は1993年にスーダンをテロ支援国家に指定して制裁を課していたため、スーダンの経済に大きな重荷となっていたものだ。
自分の成果を出すためには何だってやっちゃうトランポ大統領の常套手段だ。

西サハラは、50年以上不法占拠するモロッコと、西サハラの独立を目指すポリサリオ戦線と間で1991年に合意した停戦が、つい最近、崩壊して戦闘が再開されたばかりだ。
1991年と言えば、ナゴルノ・カラバフ紛争の舞台であるナゴルノ・カラバフがアゼルバイジャンから独立宣言をした年でもある。これは決して偶然ではなく、1991年にソ連が崩壊した事が要因だ。ソ連の崩壊は世界各地で様々な紛争に影響を及ぼした訳だ。

西サハラ紛争では、不法占拠を続けるモロッコに対して民族の独立運動をしているポリサリオ戦線に同情したくなるが、事はそう簡単ではない。
なぜならモロッコはアフリカでも数少ない西側諸国寄りの国だが、ポリサリオ戦線やバックにいるアルジェリアはロシアや中国と関係の深い国だからだ。
モロッコによる領有権の主張は大多数の国から認められていないものの、欧米や日本などの先進諸国はモロッコとの関係を重視して、ポリサリオ戦線が樹立した亡命政府であるサハラ・アラブ民主共和国を国家としては承認していない。モロッコの不法占拠を黙認しているのが実情だ。
トランポ政権が黙認から一歩進んで正式にモロッコの不法占拠を認めたのは、モロッコがイスラエルとの国交正常化に合意した事への見返りだ。

当然ながら、西サハラの独立を目指すポリサリオ解放戦線強く反発しており、紛争は解決するどころか、ますます激しくなるだろう
アラブの盟主であるサウジアラビアとイスラエルの国交正常化も間近だと言われており、そうなれば長年にわたるアラブ対イスラエルの構図が一気に塗り替わるだろう。そうなるとパレスチナ問題が解決するかと言うと逆で、紛争はますます泥沼化するだろう。

(2020.12.14)



〜おしまい〜





独り言のメニューへ