キルギスとタジキスタンが軍事衝突

〜 ややこし過ぎる中央アジアの国境 〜



旧ソ連構成国であるキルギスタジキスタンの国境地帯で、双方の軍部隊が衝突した
キルギス政府によると、キルギス側の死者は13人、負傷者は130人以上に上ったという。またタジク側にも死傷者が出ているようだ。
旧ソ連の中央アジアの国々と言うと、なんとなく仲良さそうな気がするので、軍事衝突が起きたとなると少し意外だ

(幹事長)「意外やろ?」
(ピッグ)「全く何の興味も知識も無いので分かりません」


大半の日本人はキルギスとかタジキスタンと言っても、全く何の興味も知識も無いだろうから、簡単な紹介をしておこう。
旧ソ連を構成していた国は15ある。これらの名前と場所を正確に言える人が数少ないだろうというのは容易に想像できる。
つい先日、NHKの番組で、リトアニアを紹介しているのに、地図では間違ってロシアの飛び地であるカリーニングラードを指していたので、すぐさまNHKに抗議のメールを送ったら、丁寧な言い訳の回答が送られてきた。

(ピッグ)「そなな抗議をしてるんですか!」

以前には、乗鞍岳から中央アルプスを映した映像を、八ヶ岳だなんて間違って紹介していたので、すぐさま抗議のメールを送ったら、その時は素直に「すんません。間違ってました」っていう回答が来たが、今回は見苦しい言い訳をしていた。

旧ソ連を構成していた国は15あるが、割と簡単に覚えられる。
まず中心はロシアだ。これは誰でも知ってるだろう。
ロシアの左(西)の北欧に面した地域にはバルト三国がある。北からエストニア、ラトビア、リトアニアだ。
ロシアの左下(南西)の地域にはロシアと割りとつながりの深いベラルーシ、ウクライナ、モルドバの三国がある。
ロシアの下(南)のカフカス地方にはグルジア、アルメニア、アゼルバイジャンの三国がある。
そして右下(南東)には中央アジアの五か国がある。大きなカザフスタンの下(南)にキルギス、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタンがややこしくごちゃごちゃとからまって存在してる。

(幹事長)「さあ、覚えたかな?」
(ピッグ)「興味ないので覚える気も無いです」


旧ソ連の国々の国境はややこしい。これはアゼルバイジャンとアルメニアのナゴルノ・カラバフ紛争の記事でも紹介したが、旧ソ連時代の国境が緩かったため起きた問題だ。
その中でも特に中央アジアの国々の国境はややこしい

そもそもの問題の起源は帝政ロシアによる中央アジアの征服だ。帝政ロシアはシベリアを征服した後に、今度は南へ向かってどんどん拡大していった。この地域には元々ウズベク系が支配する国があったが、全てロシアに占領されてしまった。
その後、ロシア革命が起こり、中央アジアにもソビエト政権が成立した。この時、カザフ、キルギス、ウズベク、タジク、トルクメンの5つの民族別に国が作られた
これによって、史上初めて中央アジアに民族別の境界線が出来た。これが現在も続くカザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタンの五か国だ。

元々、これらの民族は、ちゃんとした国を持っていた訳ではなく、かなり入り乱れて住んでいた。それを強引に民族別の国に分けたもんだから、国境はかなりややこしくなった。これはアゼルバイジャンとアルメニアの問題と全く同じだ。
ただ、旧ソ連時代は、ソ連と言う大きな1つの国の中の話だったので、国境がややこしかろうが曖昧だろうが特に問題は無かった。
ところが、ソ連の解体により、旧ソ連を構成していた国々が一斉に独立してしまった事で問題が発生する。しつこいが、アゼルバイジャンとアルメニアの問題と全く同じだ。

中でもややこしいのはキルギスとタジキスタンとウズベキスタンの国境だ
地図を見れば分かるが、この三国の国境は、なんでこんな事になったんだ?と驚くくらい複雑に絡み合っている。まるでジグソーパズルか知恵の輪のようだ。
そして、これらの国々の国境は今も確定していないところが多い
しかも、これまたアゼルバイジャンとアルメニアの問題と同じだが、お互いの領土内に飛び地も多い
それは、元々色んな民族が混じりあって生活していたのを強引に民族別に国を作ったからだ。

このうちキルギスとタジキスタンの国境では、976kmある国境のうち、半分の472kmで国境が画定していない。
もちろん、国境の画定作業は進められており、土地交換や住民移動なども行われているが、まだまだ完全な解決には程遠い。

そして、国境が未確定な地域や複雑な境界に位置する地域では、土地や水資源を巡る対立が続いている
今回のキルギスとタジキスタンの軍事衝突も、水資源の問題のようだ。
キルギス領内にある給水施設について、タジキスタンの住民が「給水施設のある地域は自国領だ」と主張し、まずは住民同士の投石が始まり、それが軍部隊の衝突に発展したものだ。
このような衝突も今回が初めてではなく、近年、何十件も起きている。

(ピッグ)「国際紛争オタクの幹事長としてはワクワクですね」
(幹事長)「そうでもないんよ」


アゼルバイジャンとアルメニアの紛争なんて、血沸き肉躍るコーフンのイベントだが、中央アジアの国々の国境問題は、いまいち盛り上がらない。
なぜかと言うと、これらの国境紛争は小さな地域に限定された紛争だからだ。あくまでも、その地域に住む人たちの争いであり、国全体の争いには発展しそうにない
国というか政府としても、ことさら問題を大きくしようというインセンティブは無い。あくまでも限定的な地域住民同士の争いだ。
て事で、今回のキルギスとタジキスタンの軍事衝突は、アゼルバイジャンとアルメニアの紛争のようなワクワクするような展開にはなりそうにない、つまんない事件に終わるだろう。

(2021.5.1)



〜おしまい〜





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