横綱白鵬への批判

〜 批判するのならルールを明確化しよう 〜



6場所連続休場明けの横綱白鵬が、進退を懸けて臨んだ名古屋場所で、千秋楽の大関照ノ富士との全勝相星決戦を制し、復活の全勝優勝を果たした
昨年春場所以来、実に45度目の優勝だ。
また歴代最多を更新する16度目の全勝優勝だ。
さらに、横綱大鵬の5場所連続休場明け優勝を抜く最長ブランク優勝だ。
もう文句の付けようのない完全勝利だ。

ところが、この大横綱に対しては、批判の声が止まない
批判されているのは、まず14日目の正代戦だ。大横綱ともあろう者が、なんと仕切り線から大きく離れて立ち合いをした
テレビで解説していた北の富士は「ああいう相撲を取らなくても取れる。やっぱり、いけませんよね。なんとしてでも勝つって言っても、今まで圧倒しているんだしね。一番勝負ですから何が起きるか分からないけど、44回も優勝した大横綱がやっていいことと悪いことがある」と批判した。
また、同じく解説の舞の海も「このような相撲を取られると、これまで歴代の横綱が守ってきた伝統とか価値観が壊れてしまいますよね」と批判した。

そして翌15日目の千秋楽の照ノ富士戦では、立ち合いで左手を相手の顔にかざして見えないようにしたうえで、右肘で強烈なかち上げを見舞った。あれはかち上げというより、ほとんど肘打ちだ
さすがの照ノ富士は、この乱暴なかち上げにもひるまなかったが、続く白鵬の執拗な張り手に冷静さを失い、張り手の応酬をした結果、スキを見せて攻め込まれてしまい、最後は白鵬の小手投げが決まった。
この荒っぽい相撲について舞の海は「また立ち合い、肘打ちいきましたね。顔面を狙って」と批判した。
また、北の富士も「ありとあらゆることをやっているからね。やっていることはえげつない」と批判した。

さらに、この勝利の後、鬼の形相で右腕で豪快にガッツポーズを見せた。この行為に対しても批判が多い。
北の富士は「ここまで今まで45回優勝見ているけどね、えらい力んどるね。何かあったかね?」と驚き、舞の海は「余裕はありませんでしたね。精神的にも肉体的にも余裕がないから、ああいう相撲を取るんでしょうね」と解説していた。

そして、予想された事だが、横綱審議委員会では委員から批判が噴出した
全勝優勝は立派なもの。ただ、日本の国技でもある相撲はそれだけではないということを、どうやったらわかってもらえるだろうか
白鵬に対しては勝てばいいものではないと。横綱の持っている美学みたいなものを期待したい
結局、相撲というのは何か、国技というのは何か、ということを親方、師匠が教えなければいけない。理事長が白鵬を呼んで厳重注意をするということです
14日目と千秋楽の相撲は、もうあり得ない。ほとんど最低のレベルの相撲。横綱としては特に。また、終わった後のガッツポーズとか雄たけびとか鬼の表情とか。あれはなんだい。全然問題外でしょ。なにも語ることはないですよ
14日目の目を疑うような仕切り、連日の張り手、千秋楽の肘打ちと疑われないようなかち上げ、武道ではありえないような土俵上でのガッツポーズ。そういったものを見まして実に見苦しいと思いました
などと批判の嵐だ。

確かに、正代戦で行った仕切り線から大きく離れた立ち合いは前代未聞だ。ああいうのは大横綱に対して小兵力士がするものであり、今場所でも7日目に翔猿が白鵬に対して同じような仕切りをした。
ただ、弱い側はしてもいいけど、強い側はしてはいけない、っていうルールは無い。ルールが無いから白鵬の反則にはならない。

張り手は、軽いものならフェイントの延長みたいなものだが、真剣に繰り出されるとパンチと変わらない荒業だ。あれは相撲の技と言えるのか、という疑問が湧いてくる事も多い。
ただし、これも許された技であり、白鵬を批判している北の富士も現役時代はよくやっていた。動きが止まった土俵中央で黒姫山にいきなり強烈なビンタを食らわせたのは鮮明に覚えている。
また、かち上げも千秋楽の白鵬のかち上げは、ほとんど肘打ちであり、危険極まりないものだが、ルールとして禁止されているものではない。

つまり、いずれも明文化された禁止事項ではな
もちろん、明文化されてないからと言って何をやっても良いって事ではないんだけど、どこまで許されるのかが、とても曖昧だ

横綱は仕切り線から下がってはいけないってのなら、横綱に限らず、みんな仕切り線から下がっていはいけないというルールにすべきだろう
基本的には仕切り線に手を着かなければならなんだから、弱い側の力士にだけルール違反が許されるというのは、理解はできるけど、曖昧だ。
あるいは、番付の下の者は仕切り線から下がっても良いっていうルールにしてもいい

張り手や肘打ちは乱暴な技だし、見ていて楽しいものではないので、全面的に禁止してもいいのではないか。
禁止してないのに批判するというのは、曖昧でモヤモヤする。

圧倒的に強い横綱白鵬に対して、横綱審議会は以前から批判的だ。強すぎて我儘放題し放題の白鵬が許せないのだろう。
朝青龍に対しても同じようなスタンスだった。朝青龍は辞めさせる事ができたが、白鵬も目障りなんだろう。
明文化されていない大相撲の伝統を守りたいんだろうけど、期待された稀勢の里があっさりと引退してしまい、なかなか有望な日本人力士が出てこない中、力関係としては完全に白鵬が上位にある

そして、白鵬の行動を見ていると、相撲の取り口に関しては、好き勝手やっているだけかもしれないが、それ以外の所業、すなわち雄たけびを上げるとか、優勝インタビューの後で勝手に万歳三唱したり三本締めしたりするのは、横綱審議会に対する当てつけなんじゃないだろうか。

(2021.7.19)



〜おしまい〜





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