氷ノ山 雪山キャンプ遭難

〜 雪山を舐めてはいけない 〜



兵庫県の氷ノ山(1510m)で男性5人が遭難し、4人は救助されたが1人が死亡した。ちょっと理解に苦しむ遭難事件だ。

遭難したのは30〜70代の男性5人で、昨年12月25日から1泊2日の日程で山に入っていたが、下山予定の26日に降りて来ず、28日になってようやく4人が救出された
これを最初に聞いたときは、大雪の中、何日もビバークして救出されたとすれば、かなりのベテラン登山者かと思った。吹雪の中をビバークして生き延びるには、それなりの技術と体力が必要だからだ。

ところが、詳しい事が分かって唖然とした。彼らは登山ではなく、なんとキャンプに来ていたと言うのだ
吹雪の中でキャンプ!?一体どういう事!???

そして、4人は残りの1人を残して下山してきたのだが、その1人を、なんと車の中に残してきたと言うのだ。つまり、遭難と言っても、車の中にいたのだ
それって遭難なのか!???

全く状況が理解できないが、彼らは雪山を甘く見て、ノコノコと車でやってきたらしい。現場周辺の国道29号の積雪量は入山した25日までは8cmだったとのことなので、完全に山を舐めていたのだろう。
しかし、いくらその時点で積雪量が少なくても、天気予報では天候が悪化するのは確実だった。氷ノ山に限らず、日本海側は全国的に記録的な大寒波に襲われ、極端に天候が悪化すると言われていた
NHKなんか、しつこいくらい朝から晩まで警告を叫びっぱなしだった。
それなのに、それを無視してノコノコと車で繰り出したらしい。一体、何を考えていたのだろう。たぶん何も考えてなかったのだろう。

そして、天気予報どおり強烈な悪天候となり、26日未明からの24時間で112cmもの大雪になった。この大雪のために車が動かなくなったらしい。
そらそうやわ。私は青森に3年間暮らしていたので雪道の怖さを分かっている。四輪駆動のスタッドレスタイヤでも、少し雪が積もると、すぐ車は動かなくなる
四輪駆動のスタッドレスタイヤであっても、車が動けるのは雪が圧接された道か、交通量が多くて雪が踏み固められている道に限る。フワフワの雪が積もっていれば、すぐに車は動けなくなる。
そんな事も考えずにノコノコの悪天候の山に入り込んだとしたら、あまりにも無謀と言うか自殺行為だ。

それでも4人は28日になって自力で下山しているところを救出されたとのことだが、なぜか1人は車に残してきている。恐らくは、自力で歩いて下山する体力が無くなっていたのかもしれない。
そして、今月2日になって、ようやく兵庫県警のヘリコプターが積雪で動けなくなった車中に残っていた1人を発見し、病院に搬送したが、死亡が確認されたのだ。
車は雪で動けない状態と言うか、雪に完全に埋まって見えなくなっていたらしい。

これらの行為には当然ながら疑問がいくつか出てくる。
まず、車の中でひたすら待つ事はできなかったのか、ということだ。たぶん、燃料や食料が尽きてきて、それ以上は車で待つ事ができなくなったのだろう
それなら、逆に、まだ体力があるうちに、みんなで自力で下山することはできなかったのか、ということだ。たぶん、1〜2日待っているうちに天気が回復すると期待したのだろう。
結局、その甘い判断が命取りになった。28日まで待っても天候が回復しなかったので、仕方なく自力で下山を始めたが、その時点では1人が体力を消耗しきって自力下山ができなくなっていたのだろう。

この判断の甘さは、やはり山を舐めていたという事に尽きる。
ある程度の登山の経験者なら、そもそもこんな悪天候の時に山には入らないだろうが、仮に天気予報が外れて悪天候になった場合でも、即座に下山を決断しただろう
そもそも、悪天候になって自力で下山する事ができないような山には入ってはいけない。登山はあくまでも100%自己責任の行動なので、最悪のケースでも自力で下山する事ができないような行動をとるべきではない。
しかし、遭難した連中は登山の経験と言うか、山の知識は乏しかったのだろう。

近年、キャンプの人気が高まっている。今から20年ほど前には、全国的にキャンプが大人気で、私も小さかった子供たちを連れてよくキャンプに出掛けていた。
その後、キャンプの人気は下火になっていたが、近年、再び人気が急上昇しているようだ。去年、妙高山や戸隠山に行った時、登山口があるキャンプ場が首都圏からわざわざやってきたキャンプ客で大いに賑わっていてびっくりした。
そして、知らなかったのだが、夏だけでなく、近年は雪の中に張ったテントにストーブなどを持ち込む冬キャンプ人気を集めているらしい。
非日常の空間で自分の時間を楽しめるのが冬キャンプの魅力」とのことで、それは確かにそうだろう。とても魅力的だろう。

しかし、冬の雪山に入るのなら、最低限、それなりの装備が必要だ
遭難した連中は、デニムズボンなど軽装だったらしい。やはり雪山を舐めていると言うか、雪山の事を全く知らなかったのだろう
単に雪の中でルンルンでキャンプするというだけの発想で、他のシーズンとは異なる危機管理はゼロだったのだろう。
自分の責任で命を落としたのだから、別に構わないが、あまり気持ちの良い話ではない。

(2022.1.2)



〜おしまい〜





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