続く水俣病訴訟

〜 上級審の判断を待たなければならない 〜



これまで水俣病と認定されず、救済策の対象にならなかった人たちが国などを訴えていた裁判で、9月27日大阪地方裁判所は「特別措置法の基準外でも水俣病に罹患する可能性がある」と言う初めての司法判断を示した。
そして、原告全員を水俣病と認定し、国と熊本県、チッソに約3億5千万円の賠償を命じた

この判決に対して、チッソはいち早く控訴してたんだけど、それに続いて国や熊本県も大阪高等裁判所に控訴した

元々、水俣地方に住んでいた住人は早くから救済されてたんだけど、関西などに移住した人は水俣病に認定されず、救済の対象にならなかった
このような人たちを救済するために、特別措置法が出来たんだけど、当然ながらなにがしかの基準が必要なので、住んでいた地域や年代によって救済の対象を決めた
何か基準を決めないと、際限なく全ての国民が対象になってしまうからだ。

ところが、自分は水俣病だと思うのに、このような地域や年代の基準から外れているために救済の対象外になってしまった128人の住民が、それは不当だとして国や熊本県や原因企業のチッソに賠償を求めていたのだ。

控訴した国は、控訴の理由として「今回の判決は、国際的な科学的知見や最高裁で確定した判決の内容と大きく相違することなどから、上訴審の判断を仰ぐ必要があると判断した」と述べている。
具体的には、
 ・大阪地方裁判所の判決が、水俣病発症の基準とする世界保健機関(WHO)の指針を下回る濃度でも、長期間の摂取による発症の可能性を指摘したこと
 ・過去の判決で否定された、水銀を摂取して長期間が経過して発症する遅発性水俣病を認めたこと
 ・遅くとも昭和44年以降は水俣湾周辺地域でも水俣病発症の可能性のあるレベルの水銀を摂取する状況ではなくなったにもかかわらず、それ以降も広い地域での摂取を認めたこと
について、高裁の判断を仰ぐ必要があるからだとしている。

いずれも、極めてもっともな指摘だ。
特別措置法は、科学的な根拠により地域や年代の線引きをしている。それを覆すのであれば、やはり科学的な根拠が必要だろう。
しかしながら、大阪地方裁判所はそのような新たな科学的な根拠を示す事なく、極めて情緒的な判断をしている。

非常に難しい問題だ。
訴訟を起こした原告の住民たちが嘘をついているとは思えない。体調に異変が生じているのは間違いないだろう。
もし、それが本当に水俣病なのであれば、原告の高齢化が進んでいるのだから、できるだけ速やかに救済しなければならない。
情緒的には、みんな救済してあげたいところだ。

しかし、本当に水俣病なのかどうか判断するには科学的な根拠が必要だ。
原告の住民たちは特別措置法の判断の科学的基準を外れているのだから、法律に従うのであれば救済の対象外になるのは仕方ない。
歳をとってくれば誰だって体調は悪くなる。私も近年、体のあちこちに不具合が出てきて困っている。

地方裁判所の判事は、これまでも様々な裁判において、かなり極端な判決を出す事が度々あった。もちろん、そのような場合、上級審では判決がひっくり返る事も多い。
なので、今回の裁判でも、高等裁判所や最高裁判所の判断が待たれるところだ。

(2023.10.11)



〜おしまい〜





独り言のメニューへ