恐るべき国勢調査員

〜 忍び寄る足音 〜



国勢調査である。
仕事柄、統計資料を多用する僕としては、大いに結構なことだ。そもそも私的にも統計情報が大好きな数字オタクの僕としては、国勢調査のような正確な統計情報は大歓迎!5年に1回などと言わず、せめて2年おきくらいには新しい情報が欲しいところである。もっとビシバシ調査して欲しい。プライバシーがどうのこうのなどと抜かす非国民は日本に住む権利を剥奪して強制収容所にブチ込んでもいいから、国民総背番号制にして、徹底的に洗いざらい国民の情報を集大成して欲しいぞ。
て言うくらいだから、調査には当然、とても協力的。今回の調査では「調査項目が22項目もあって書くのに大変」なんてたわけた意見もあるが、僅かそれしきの事で大変だなんて、テレビ見てボケッとしている暇があれば、あっという間に書けるやんけ。えーかげんにせいっ!むしろ、もっともっと色んな項目を調査して、今以上に充実した統計情報が欲しいくらいじゃ。今後の子づくりの予定は?とか、毎朝歯磨きしてますか?とか、ビールと発泡酒とどちらが好きですか?とか、音楽CDの不正コピーを月に何枚やりますか?とか。別に人に知られたって困るような内容でも無いし。困るか。ま、人それぞれ事情はあるでしょうから、人間的にまるで信用できない町内会役員か何かの調査員に渡すのではなくて、匿名で郵送するような方式にすれば良いな、とは思います。

なーんて、行政に協力的な良識溢れる市民のような顔をしていますが、ユーゴスラビアのミロシェビッチ前大統領が退陣すると、手のひらを返したように「実は私も大統領に批判的だったんですよぅ」なんて恥ずかしげも無くほざく統制マスコミのように、コロッと豹変する私。
と言うのも、実は僕は単身赴任の身。月曜日の朝に高松から高知へ来て、金曜日の夜、高松の自宅に戻るという二重生活を送っている。物理的な時間から言えば高松にいるより高知にいる方が長いんだけど、生活基盤と言うことになると、どう考えても高知じゃなくて高松になるよなあ。家もあるし家族もいるし、高知へは通勤しているっていう自覚状態。物理的には高知の方が長くても、職場とアパートの往復だけで、消費行動も食事くらい。飲みにも行くけど、それだって埼玉や千葉から東京に通っているサラリーマンと同じじゃないか、って意識。なので、本来は高知で記入すべきなのかもしれないけど(なのかな?)、高松で記入しました。住民票も高松のままだし、高知県民の意識は全く無いし。それに、高松で家内が既に勝手に記入していたものだから、それでいいじゃないかなあ、と思ったのでした。

しかし、国政調査員はやってくる。
ある日、夜、アパートに帰ってくると、ポストに「調査のお願い」とか言うようなビラが入っていた。一瞬ドキッとしたけど、取りあえず無視する。その後も何度か、「訪問したけど不在だったので読んでください」なんてメモと共に、ビラが投げ込まれる。まだまだ余裕なので、バカなやつめ、とあざ笑いながら破り捨てる。そして最後には、「調査票を渡したいので在宅時間を連絡して欲しい」なんてメモが入る。しかし、既に高松で記入している僕は、もう記入する意志も無いし、ほうっておく。そうでなくても、調査票に記入してやるために、なんでわざわざこっちから電話代出して連絡してやらんといかんのだ!なんでそこまで体制順応型協力的小市民にならんといかんのだっ!頼むんなら、そっちから菓子折の1つでも持ってお願いにこんかいっ!せめてビラに電話代の10円玉を張り付けておけっ!てな訳で相変わらず無視していたら、遂にポストに調査票が投げ込まれ、「記入したら取りに行きたいので在宅時間を連絡して欲しい」などと書いている。調査に協力するとも言ってないのに、強引に調査票を置いていくなんて、かなりのしつこさ。呆れながら、しかしこうなると、意地でも対決せんといかんので、すぐさま破り捨てて放っておく。
それにしても、何度も何度も足を運んでいるようだけど、この調査員、アホとちゃうか。僕が使用している(敢えて「住んでいる」という意識は無い)ワンルームのアパートなんか、昼間に在宅している人が居るとは思えないぞ。何度来ようが、毎日来ようが、100%誰も居ないと断言できるぞ。そもそも独り暮らしで昼間から在宅している人なんて、年金暮らしの独居老人か夜のお仕事の人くらい。うちのアパートには9人の住人が居るけど、しつこいようだけど、昼間何度来ても100%誰にも会えないぞ。それくらい、ちょっと考えれば小学生でも分かる事だ。それなのに、こうもしつこく足繁く通う調査員って、頭カラッポ?と小馬鹿にしておりましたが、余りのしつこさに、少々気味が悪くなってくる。こいつら一体、誰なんだ?名前は時々聞くけどその活動実態は一般市民には永遠の謎である「民生委員」という人種か?それとも単なる市役所の手先となったアルバイトか?はたまたロシアKGBの秘密工作員か?バカだけど恐い。バカだからこそ恐い。まさにストーカーの恐怖。初めて分かりました。やっぱストーカーは取り締まらないと。
調査票を破り捨てた数日後、今度は「何度訪問しても不在のようなので、調査票に記入の上、ポストにでも入れておいて下さい」なんてメモが入る。遂に対面での受け取りを諦めたようだ。ちょっと安心するが、そんな渡し方をしてええもんかいな。なんだかプライバシー的にアブナイ雰囲気だぞ。関係ない人が取っていったらどうする?て言うことで、当然、それも無視する。て言うか、調査票は既に破り捨てているので書けないし。それなのに、その後も、しつこく調査票の督促メモが入り続ける。おまけに、訪問時間が、以前は昼間か夕方だったのが、だんだん遅くなってきて、遂には8時頃の訪問となっている。まあ、僕が帰宅するのは、たいていは9時を過ぎているからまだ安心だが、敵が本気になって深夜に訪ねてくると、ちょっと恐いぞ。そうなったら、訪ねてきても無視して出ない、っていう対応しか無いが、ちょっと気味が悪いなあ。

この緊張感はかつて経験したことがあるな。そう、NHKの集金おぢさんとバトルした時だった。
去年の3月に高知のアパートを使い始めて2〜3週間目。夜の8時頃に突然の訪問者。夜の訪問者に、心当たりは全然無い。そのアパートに僕が住んでいるのを知っているのは会社関係者か家族くらい。わざわざ夜中にいきなり訪ねてくる知人はいないはず。新聞のセールスなんかだと鬱陶しいなあ。可愛いおねいちゃんが突然訪ねてきたのならいいけど、でもそれはそれで、すっごく恐いな。ま、定番通り、まずは声を潜めて居留守を使う。なんどかチャイムを鳴らした後、諦めて去っていく足音。今度は隣の部屋のチャイムを鳴らしている。隣の兄ちゃんはあっさり出てきて対応している。どうやらNHKの集金おじさんらしい。危ない危ない。出なくて良かった。
そもそも僕はテレビを見ない。学生時代からずうっと、結婚するまで、パソコンはあってもテレビを所有したことはない。結婚して家内が持ってきたテレビも、ニュースとスポーツ中継以外は滅多に見ない。と言っても、家族は当然、見まくるので、高松の自宅では、ちゃんとNHKの受信料を払っている。なんと言っても良識溢れる小市民である。それどころか、子会社がやっているケーブルTVに加入しているので、そのお金もかかるし、NHK衛星放送のお金もかかるし、テレビにかなりのお金を払っているぞ。その上、高知でまでダブルで取られたんじゃあ、たまったもんじゃない。そもそも、ほとんど見ないのだし。
て言うのは、ウソで、確かにこれまでの人生ではテレビはほとんど見なかったけど、単身で生活していると、テレビは必需品です。以前、独身の人と話していて、「テレビがそんなに好きというんじゃないけど、独り暮らしだと部屋が静かで寂しいので、基本的にテレビを付けっぱなしにしている」っていう話を聞き、「そういうものかなあ?」なんて思ってましたが、まさにそういうもんでした。帰宅するとまずはテレビを付け、滅多に画面を見ることも無いのだけど、寝るまでそのまま付けている。CDを聴いているときですら、音を消してテレビはちゃんとついている。やっぱ何か寂しいのよ。チャンネルはNHK。ニュースが多いので、気になるニュースが聞こえてきたら画面を見る。ニュースでなくても報道関係の番組が多いし。歌謡ショーとか時代劇とかやりだすと衛星放送に切り替えたりする。アパートにはケーブルTVの回線が来ているので、加入して無くても、テレビショッピングのチャンネルと天気予報と、なぜかNHK衛星放送だけはタダで見ることができる。だから、きっちりNHKは見ているのだけど、別に積極的に見ているって意識でもないし、そもそも高松で高い金払ってんだから、これ以上取られたくないぞ、っていう気持ち。
しかし、NHKのおぢさんも、かなりしつこかった。その後、毎週のように夜中に訪問してくる。その都度、テレビの音を慌てて小さくして聞かれないようし、息を潜めて居留守を使う。しかし、あまりに頻繁なので、そのうち面倒くさくなって、遂にはテレビを消した上でドアを開けてやる。「なんですかぁ?」と嫌そうに言うと「あ、あの、NHKですが・・・」なんて言う。ここは強気で一気に「うちはテレビなんか無いよっ!」って言うと、おどおどした様子で「あっ、そ、そうですかっ」ってビビッているので、そのままドアをバタンと閉めました。それっきり来なくなったNHK集金おやじ。おいおい、気が弱すぎるぞ。今どきテレビ持ってない奴なんておりまっかいな。100%嘘丸出し。もっとしつこく粘らんといかんよ。

て言う具合に、NHK集金おやぢはあっさりと撃退したけど、今度の国政調査員は危ない。「わしはここには住んどらんぞっ!」なんて言ってみたって、毎日、つっこまれたビラを破り捨てていたのだから、あんまり通用しそうにないし。
ふうむ。どうする?

(2000.10.22)



〜おしまい〜





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