怪しい考古学者

〜 信用する方がバカなのよ 〜



藤村新一という名前の民間考古学者による「発掘ねつ造事件」が大騒ぎになっている。
自分がこっそりと埋めた新しい石器を、あたかも古い石器を掘り当てたかのごとく嘘をついていたのだ。彼の新発見によって、日本の考古学がどんどん書き換えられてきたのだから、こりゃ、とんでもない事だわな。
うちの研究所にも藤村という名の研究員がいるが、彼の場合は女性関係ではメチャメチャ怪しいけど、ちょっとジャンルが違うな。
そもそも、「民間考古学者」だなんて、それだけで超怪しすぎるじゃないか。所属する「東北旧石器文化研究所」だなんて、あまりにもマイナーなジャンルで、もう怪しさ爆発ですねえ。きわ物マニアには垂涎の的でしょうね。

しかし、冷静に考えればおかしいのはすぐ分かる。このおっさんが発掘した実績を見ると、北海道、岩手、宮城、山形、福島、群馬、栃木、埼玉、東京の9都道府県で、東北が中心になっている。日本列島への人類の入り方は、朝鮮半島ルートと南方諸島ルートであり、どちらにしても西日本を経由して入ってきている。その西日本で発掘される遺跡よりはるかに古いものが東北地方でどんどん発掘されるなんて、どう考えても普通じゃない。

そもそも、騙された方がアホなんです。このおっさん、電機関係の会社の従業員で、考古学関係の何の専門教育も受けてないんだけど、名だたる大学の教授らが、コロリと騙されている。自分達がいくら探し回っても見つからないのを、初めて現場に到着して、わずか15分で石器を掘り出すなんてことが繰り返されたら、詐欺だと疑うのが普通ですけど、この世間知らずの大学の先生どもは、それを神がかりだと思って、信仰していたみたい。
「神の手」だなんて、よう言うわ。そりゃマラドーナやんか。日本の考古学のレベルの浅さが知れますな。

それから地元自治体も情けない。原人が居たとされる宮城県の地元では、「原人が見上げた空のある町」なんていう恥ずかしいキャッチフレーズで町おこしを進めている。たぶん、町役場の職員は名刺にデカデカとこのキャッチフレーズを刷り込んでいるんでしょうね。あー恥ずかしい。
町には「原人ラーメン」から「原人まんじゅう」まで、恥ずかしいネーミングで溢れているらしいし、なんと原人マラソン大会なんてのもあるんだって。もう4回もやっているぞ。今後、どうするんだ?
まあ、この類の事は、これに限らず、全国の浅薄な自治体がやっているんだけどなあ。

ま、このおっさんの気持ちは良く分かる。学歴も無いこのおっさんが名声を得られる道は、画期的な発掘の実績しかないもんな。ねつ造を認めたのはたった2ヶ所だけど、そんなん誰が信じられるかっちゅうに。
それなのに関係者は信じているらしい。この2ヶ所以外でも、信じられない神業で発掘しまくっているというのに、「もう失うものの無い彼が言うのだから本当だろう」なんて信じ切っている先生達って、本当に世間知らずのお間抜け者ですね。
だいたい、このおっさん、自分が埋めたものを、自分だけでなく、わざと同行の学者に掘らせるなど、芸の細かいところを見せているくらいなんだから、絶対に信用はできんぞ。

でも、この事件、僕個人としては、なーんの不思議もない。
て言うのは、僕の昔の同級生で、同じような発掘をしている奴がいて、うまいことK川県Z通寺市のK育委員会に採用されているのだが(知ってる人が見ればまる分かりやね)、これがまた怪しさ爆発なのだ。ローカル的にはかなりの業績をあげており、道路工事現場などで遺跡を掘り当てては、地元紙などでは何度か紹介されたりしている。
しかし、こやつの昔の所行を知っている僕としては、100%信用できない。えっと、これは、100%は信用できない、っていうことじゃなくて、100%嘘だろうと思うのである。ほら吹きもすごいけど、学生時代は、学校に授業料を納めたときに押してもらう領収印を偽造したり、自転車にトラックのクラクションを付けたり、変なことばっかりしよった。そう言えば、何かものすごい機械を発明したと吹聴しておきながら、僕らが「それやったら見せてみい」と家に押し掛けると、「もう庭に埋めた」などと無茶苦茶な嘘を付いたりしておりました。こいつらは、土の中に埋めたり出したりするのが得意なのかもしれない。

て言うことで、そもそも発掘なんてしている連中の言う事を鵜呑みにする方がおバカなのよ。特に、考古学的な発見となると、なぜかしらんが大騒ぎしてトップ記事にする新聞記者の猛省を促す。(なんて言っても、新聞記者はこななホームページは見ないか)

(2000.11.25)



〜おしまい〜





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