本州四国連絡橋公団の末路

〜 破綻は免れないが・・・ 〜



遂に政府が本州四国連絡橋公団(本四公団)の支援に乗り出した
3兆8戦億円もの借金を抱えて返済に困っている本四公団に対し、大蔵省が、揮発油税などを原資とする道路特定財源から無利子融資を行い、借金返済を支援する方針を固めたのだ。

こうなったのは、本四公団の通行料収入が伸び悩んでいることが原因だ。瀬戸大橋を始めとして、本四架橋3ルートが完成したけど、思うように通行量は増えていない。明石〜鳴門ルートが完成しても児島〜坂出ルートの通行量が減ってしまうなど、四国と本州との通行量全体が伸び悩んでいるのだから、トータルとしてはあんまり増えていない。そのため本四公団の収入は年間900億円程度にとどまり、年間の金利支払額1400億円にさえ全然届かない状況が続いている。元金なんて返せないから、借金は雪だるまのように増え続ける。しかも、今後も改善の見通しはついていない。

この事態を改善するために、大蔵省は道路特定財源を主力とする道路整備特別会計から、取りあえず13年度は800億円程度の無利子融資をすることになった。これはなぜかというと、本四公団の借金が、やはり国から借りているお金だからだ。財政投融資から借りている2兆1600億円もの債務返済のメドがついていないのだ。だから、このままだと貸し倒れになってしまう。今回の支援も無利子融資ということで、借金に変わりはないのだが、無利子なので、実質的にはくれてやっているようなもの。大蔵省としては、税金を使って金利負担のない無利子融資をしてでも、財政投融資の借金の貸し倒れを防ぐためには、やむを得ないと考えているのだ。
これは言わば、銀行が倒産しそうなゼネコンの債権放棄をしているのと同じですね。潰れてしまったら元も子もないっちゅうことですわ。

そもそもの原因は、需要予測の誤りだという意見もある。たしかに、通行料収入は当初計画の7割の水準に低迷している。
でも、ちょっとおかしいぞ。今の通行料収入900億円が7割なんだったら、計画通りでも1300億円程度。それなのに金利の支払額は年間1400億円。ぜんぜん足りないじゃないかっ!最初っから足りないじゃないかっ!公団の連中は、足し算引き算もできんのかっ!

だいたいやね、これだけ通行量が低迷しているのは、料金が高すぎるからやんか。往復1万円もすれば、なかなか気軽には使えないよなあ。倉敷とか岡山とか、距離的には高松から近くなったけど、松山や高知へ行くよりもはるかに高くつくんでは、なかなか身近にはなってない。
もっと料金を下げれば通行量はぐんと増えると思う。これは誰が考えたって分かる。たぶん、料金を半分にすれば通行量は2倍以上になり、トータルの通行料収入は純増すると思う。普通、そう思うよなあ。
半信半疑でも、どうせ赤字なんだから、試しに1年くらいやってみればいいのに。駄目だったら元にもどせばいい。一度大幅に値下げして、住民に橋を利用する習慣をつけさせてしまえば、後から多少値上がりしたって、そうは客も減らないと思うし。
そもそも、フェリー業者に遠慮して料金をあんまり下げないっていう推測もあるくらいで、そんなんおかしいぞ。橋が3つも出来たのに、いまだにフェリー業者がいっぱい存在することの方が、素直に考えればおかしな状況。いったい何のための橋なんや。

あるいは、民間企業の価格設定と違って、料金はコストから計算しなくてはならないのかもしれない。
しかしやねえ。それがそもそもおかしい。
ああいう国土の基幹的なインフラは全額税金で作るべきだ。これまで本四公団への税金投入は、建設費の一部に道路特別会計から533億円の出資金を出していただけ。こんな重要なものを、後から通行料金で賄おうなんちゅう発想が貧困すぎる。これは関西空港も同じですね。こういう大事なものを独立採算にするのが根本的に間違っている。

そんなことを言うと、都市部の住民は、税金の無駄遣いだと言う。「そんなに需要の無いところに作ること自体が、そもそも間違いだ」と。「そんなもの作るより、第二の東名高速道路を早く作れ」だとか。これは古くからの都市部対地方の対立の図式ですが、変動する社会に対して、なすがままの放置主義を取るのであればそうかもしれない。しかし、国土の均衡ある発展を考えるのであれば、需要が無くても必要な物は作らなくてはならない。そうしないと、都市部への人口集中がますます進み、人口過密の都市部も過疎の地方も、どっちも住み難くなってしまい、国が崩壊してしまう。市場原理では解決しないものを修正するのが国の政策であろう。第二東名高速道路なんか作ってますます人口集中を促すよりも、そういうものは作らずに、むしろ都市部を住み難くした方が人口の偏りが減るぞ。

これと全く同じことが、関西空港にも言える。関西空港については「長野県知事選挙に思う」にも怒りをぶちまけたが、今、2つ目の滑走路を作る二期工事の見直し論が叫ばれている。大蔵省は凍結論に傾いている。
確かに関西空港を運営する関西空港会社は深刻な経営難に陥っている。この上に1兆5千億円を超える二期工事をすれば、経営が破綻するのは明らかだ。
しかし、それはそもそもの話がおかしい。成田空港に次ぐ日本の2番目の玄関口の運営を民間会社に任せるという発想が根本的におかしい。そもそも、関西空港の一期工事にかかったお金が1兆4600億円なのに、関西空港会社の収入と言えば飛行機の着陸料やビルのテナント代しかない。こななんで借金を返せるはずがないではないか。最初から民間企業で成り立つ事業ではない。
しかし、民間事業で成り立たない事業だから、やらない、というのではなく、民間事業では成り立たないからこそ、国営でやる、というのがまっとうな施策やぞ。民間事業で全てが成り立つのなら、政府などいらんわ。
関西空港は、そもそも、人口密集地の伊丹空港が騒音問題で身動きが取れなくなったから、あえて騒音問題などの発生しない海の真ん中に作ったものだ。莫大な金はかかるが、地域住民の生活を守るために、あえて大金をつぎこんだものだ。経営が成り立たないのは最初から分かり切っていたことだ。
関西空港を悪者にしているのは、単に、大蔵省を中心とする、東京一極集中主義だ。こういう視野の狭い浅知恵官僚を見るにつけ、首都移転の必要性を感じる。

などと、ほんまに怒りが収まらないのですが、関西空港と違って、本四公団の場合は、実は、別に倒産したって構わないのです。だって、本四公団が倒産したって、橋が無くなる訳ではない。空港みたいに使えなくなる訳ではない。倒産して料金所が無くなればタダになっちゃうからラッキーなくらい。
それよりも困るのは、例えばJR四国のような会社。こういうのが潰れちゃえば、すごく困るよ。

(2000.12.5)



〜おしまい〜





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