高知人の酒好き

〜 日本酒が好きなんよ 〜



私は酒が好きだ。とっても、好きだ。酒無くしては、ほとんど生きていけない。一年365日のうち最低363日は酒を飲む。うどんも、一年に700玉は食べるほど好きだけど、酒はもっと好きだ。飲まないのは風邪などひいて高熱で立ち上がれない時くらいだ。とにかく、夕食を酒抜きで食べるなんて、もったいなくてできない。味気ない。食べ物に失礼。人生の浪費。お前、何のために生きとんのや?

でも、断っておくが、私は酒が弱い。とっても弱い。体質的に無茶苦茶弱い。ビール1杯飲めば顔が赤くなる。だから昼食にちょっとビール、などということは難しい。お客さんと昼食を取るとき、自分もビールを飲むかどうか、かなり迷ってしまう。ほとんどの場合は誘惑に負けて飲んでしまい、午後のしばらくは顔を伏せて仕事をしている。
私の周りには、酒が強くてなんぼでも飲むけど、別に好きでもなんでもないっていう奴もいるので、酒が好きかどうかと強いかどうかは、あんまり関係ないみたい。
僕としては、酒が弱いので、もっと飲みたいと思っても飲めなくなってしまったりするので、残念なこともありますが、体の健康とお金の心配を考えると、僕のように酒が好きな人間は、酒が弱くて良かったかな、とも思います。

僕が一番好きなのはビールで、まずはビールを飲むことが多い。ビールなら、何も食べなくても、ビールだけひたすら飲んでも美味しい。ワインも好きなので、食べ物によっては、ワインから攻める。読書しながらワインをちびちび飲むのも美味しい。キッチンの床下には、安いワインがしこたま貯蔵されている。さらに食べ物や季節によっては焼酎のお湯割りから攻めたりする。焼酎は癖の無い黒糖焼酎に限ります。一方、日本酒はほとんど飲まない。以前はお寿司を食べる時には日本酒と決めていたけど、最近は寿司でもビールですね。お酒に弱い僕は、日本酒を飲むと、ちょっと悪酔い気味になってしまうんです。体力の衰えを感じるこの頃。

ところで、私は今、高知県で勤務している。何も、僕が、わざわざこななマイナーな場所で言わなくても、高知人の酒好きは有名だ。私の高知赴任が決まったとき、例によって、ほとんどの人が「高知は恐い所やぞ。酒ばっかり飲まされるぞ。なんぼでも飲まされるぞ。断れんぞ。死ぬぞ」などと徹底的に脅かされた。「少々飲む」と言えば「升升で2升飲む」と取られるというのも有名な話で、「まずは、私は酒は全然飲めません!と嘘を付け」とアドバイスされた。しかし、高知人の基準から言うと、確かにほとんど飲めない私だけど、酒は好きなので、酒宴を避けるのも寂しいので、どないしょうかと心配していた。
でも、嘘ですよ、そんな。死ぬまで飲まされるなんて。高知も今は文明化されているし。
確かに、一昔前は、かなり厳しかったらしい。なんちゅうても、返杯を延々と繰り返す習わしのため、ここらで打ち止めっていうタイミングがなく、果てしなく飲んでしまう。そのため、目上の人と飲んでいると、潰れるまで許されないっていう雰囲気はある。でも、私もこの歳だし、そんなに無理強いされることは無い。完成された大人の風格が、無理強いを許さない雰囲気を醸し出しているのだろう。

それで、まことにどうでもええことですが、気づいた点を一つ。それは、高知の人は、酒は酒でも、日本酒が好きだってことです。
私の職場の、Y中氏は野生児公務員だが、ものすごい酒好きで、というか、酒と麻雀が人格の一部を形成しており、分離切除することができないのだが、こういうのが典型で、あんまり女性には興味が無く、ひたすら酒を飲む。一体、家計はどうなっているんだ?と他人事ながら心配になってくる。ほんまに良くできた奥さんと、二人の娘さんと一人息子さんです。特に二人の娘さんは、どちらもよくできた子だ。
しかし、同じく同僚のF村氏は、無類の女好きで、男の目から見ても、いかにも女にもてそうな奴で、実際に女にもてまくっていて、県内各市町村役場にエージェントがおり、部長の怒鳴り声にも馬耳東風で、一日中、女の子にメールを送っている品行方正な公務員ですが、その彼にしても、やはり日本酒が好きなのよ。
そして、東京の大学へ行き、勤務地も東京が長かったK知銀行のA沢氏にしても、最初はスマートな飲み方をするのだが、だんだん乱れてくると、結局は日本酒に手を出してしまう。ま、S国銀行のA光氏の、想像を絶する酒乱ぶりに比べれば300倍くらいマシだが。

高松では、ビールだけしか飲まないっていうことが珍しくない。僕は特にビールが好きなので、そういう事が多い。そもそも、食べ物によっては、ビールしか合わないとか、ワインしか合わない、っていうものもあるでしょう?せいぜい、ビールの後にチューハイ飲むくらいで。別に高松に限ったことではなくて、東京でもどこでもそうだと思う。
でも、高知はそうじゃない。最初くらいはビールが許されたとしても、絶対に日本酒に移行する。今の職場は、宴会となると、割と場所にこだわったりするのですが、どこへ行っても、最後は日本酒となる。去年の忘年会は高級焼き肉屋へ行きましたが、僕の感覚だと、焼き肉にはビールでしょう?それなのに、日本酒の一升瓶が乱れ飛ぶのでした。どこへ行ってもその調子で、中華へ行こうが、イタ飯喰おうが、場所をわきまえず日本酒を飲む。

そして、今年度の高知の一番喜ばしい出来事である「バドカーニバル高知店オープン」のニュースをぶちこわした、今年度の高知の一番悲しい出来事である「バドカーニバル高知店閉店」の事件の要因もここにある。普通、バドカーニバルなんかに行くと、やっぱビールでしょうが?バドなんやから!きれいなおねいちゃんを横目で見ながら軽くビールを飲むところでしょう?バドカーニバルって。せいぜいワインとかチューハイなら許されるけど。
でも、高知の人は、バドカーニバルへ行っても、やっぱり熱燗日本酒を飲みまくり、普通なら2時間も居れば店を出るのに、閉店まで何時間でもウダウダと飲み続けるのです。おねいちゃんなんか見向きもせずに、ひたすら日本酒を飲み続ける。で、ふと、「座敷でないと席も移動しにくいし、落ち着いて飲みにくぜよ」と気づき、ばったり客足が途絶えたのでした。バドカーニバルでそういう飲み方をしたらいかんぜよ。

要は、バドカーニバルが閉店になったのが、今だに許せない僕ちんでした。

(2001.1.9)



〜おしまい〜





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