電磁波は体に悪い!のか?

〜 科学的な意味を考える 〜



先日、朝日新聞の一面トップに、電磁波の人体への影響に関する記事が掲載されました。国立環境研究所などによる初の全国疫学調査の中間解析の結果で、電気製品や高圧送電線から出る超低周波の電磁波により、子供の白血病の発症率が2倍以上になるというものです。
「こななマイナーな記事が全国紙の一面トップに値するのかよ」っていう疑問はさておき、個人的には「遂に出ちゃいましたねえ」って感じ。以前からくすぶり続けてきたモヤモヤとした問題だからです。科学的にも、また社会的にも、なかなか難しい問題であり、論評するのも難しいのですが、やはり書かずにはいられない問題なので、ちょっと詳しく考えていきましょう。


研究の意義

電磁波が健康に悪影響を及ぼしているのではないか、という問題は以前から指摘されており、特に原子力に反対しているような自己中心的独善的ヒステリック環境保護集団には、まさにヒステリックな電磁波反対運動が細々と生き続けてきた。明治時代に「電話は悪魔の機械じゃ」なんて恐れていた人と同じで、自分が理解できないものは何でも怖い、っていう感覚ですね。
これに対して、科学的な分析という点では、従来は、電磁波と病気の因果関係は明確ではなかった。日本では、通産省が「居住環境の磁界により人の健康に有害な影響がある証拠は認められない」との報告書を93年にまとめ、健康への影響を否定する立場をとってきた。
一方、国際的には、昨年、WHOが「電磁波で小児白血病の発症が倍増する」という、今回の報告と同様な結果を発表している。海外ではこれまでも、同様な研究報告が無かった訳ではないが、信頼性という点では疑問の残るようなものが大半であった。ま、WHOにしたって、どこまで信頼できるのか、という疑問は似たようなものだ。この類の国際機関は、ヒステリック環境保護集団が強い影響力を持つEU等の意向を反映してしまうからである。
しかし、我が国の国立環境研究所が出した報告となると、信頼性という点からは疑問は少ないと考える。


研究の概要

まずは、今回の研究報告の内容を見てみよう。
この研究は、全国各地の白血病の子供(15歳未満)350人と健康な子供700人について、室内の電磁波を1週間連続で測定したものだ。サンプルの数から言って、これは十分に信頼できるもののようだ。これまで世界各地で出されたいい加減な研究報告では、こんなに数多くのサンプルを抽出したものはなかったので、統計的に見ると、単なる誤差じゃないかと思われる結果が多かった。しかし、白血病の子供を350人も抽出したっていうのは、本当にすごいと思う。
そして、電気製品の使用状況や、自宅から送電線までの距離、それぞれの家庭の平均磁界の強さと発症率などを統計処理し、白血病の増加と磁界の強さに関連があるかどうかを分析したものだ。その結果、普通の家庭での日常環境の電磁波の平均値は0.1マイクロテスラ前後であり、これが0.4マイクロテスラ以上の環境になると、白血病の発症率が2倍以上に増える傾向が出たというものだ。脳腫瘍や他のガンに関しては、影響は見られない。
これだけのサンプルを集め、かつ、これだけはっきりした差異が出たとなると、これは否定しがたいように思える。そして、今後、電磁波低減対策を求める声が出る可能性がある。人が住んでいるところには網の目のように送電線を張り巡らせている電力会社にとって、これは非常に大きな問題だ。


発ガンリスクの現実的な意味

ただし、ここで冷静に科学的に考える必要がある。なぜなら、科学的分析に対する非科学的で非現実的な論法が世の中にまかり通っているからである。特に独善的で低脳なマスコミに著しい。新聞や本が売れさえすれば内容なんてどうでもいい、というモラル欠如の商業第一主義により、センセーショナルな書き方で国民を惑わし続けてきたからである。代表的な例が、以前から指摘している発ガン性物質である。
かなり以前に「焦げた魚は発ガン性がある」という研究報告が出た。最近になって、これは全くの嘘っぱちだったという報告が出たので、この事例では研究報告自体が非科学的だったわけだが、そもそも最初に研究報告が出た時のマスコミの反応はキチガイじみたものだった。まるで「少しでも焦げた魚を食べると、すぐにガンになってしまうぞ」みたいな。でも、その研究報告は、マウスなどを使った動物実験の結果をそのまま人間に当てはめているだけのものだった。食べる量を人間の場合に換算すれば「毎日、焦げた魚をどんぶりに山盛り食べればガンになる可能性が高まる」という程度のものだ。一体、誰が毎日、どんぶりに山盛りのお焦げを食べるんだ?脅かすのもいい加減にしろ、と言いたい。
同様に「味の素には発ガン性がある」という記事も出たことがある。これだってマウスに毎日スプーン一杯の味の素を食べさせた結果だから、人間に直せば「毎日どんぶりに山盛りの味の素を食べるとガンになる」というレベルの発ガン性だった。一体、誰がどんぶりに山盛りの味の素を食べるんや?そなな事してたらガンになる前に死ぬぞ。味の素に限らない。塩だって砂糖だって、毎日どんぶりに山盛り食べてたら死にます。毎日どころか、塩なんて、一回食べただけで死ぬんとちゃうか?
発ガン性とか発病性の問題は、科学的かつ現実的に論じなければ、全く意味をなさないのである。つまり、現実問題として、どれくらい深刻な問題なのか、ということを考えなければならない。それなのに、商業主義に麻痺したモラル欠如のマスコミは、一般市民がもっとも陥りがちな恐怖観念を刺激するような書き方しかしないため、頭の悪い多くの人が騙されている。雑菌をあまりに怖がって抗菌商品を使う人や、残留農薬を心配するあまり有機野菜などを愛好する人など、多くの愚かな市民がマスコミによって作り出されている。狂牛病事件で雪印や日本ハムが大打撃を受けている問題だって、元はと言えば、現実には誰も発病していない狂牛病問題をことさらセンセーショナルにわめき散らしたマスコミと、それを無批判に受け入れて踊らされた消費者の不買運動の被害者と言えよう。


今回の研究結果の現実的な意味

それでは、今回の研究結果は、どう評価したらいいのだろう。
通常、小児白血病の発症率は10万人に3〜5人と言われる。これが今回の研究報告によると、10人程度に増えるということだ。これは、どれくらい深刻なんだろう。
今回の調査を統括する総合推進委員会の委員である志賀健大阪大学名誉教授が「家庭内には、もっとリスクの高いタバコの煙や食材などがあり、電磁波だけを針小棒大に扱うのはよくない」と言っている。まさに、これが正論であろう。さらに「サンプル数自体は多いが、疑いの持たれている0.4マイクロテスラの環境で白血病になっている子供自体は数人しかおらず、統計的にも絶対とは言えない」とも言っている。実際、日本で0.4マイクロテスラの環境に住む人の割合は1%以下と見られており、大半の人の生活に影響は無い。
これに比べれば、毎年、数万人もの人が肺ガンで死んでいくタバコは論外としても、コーヒーや酒の影響の方が大きい。つまり、ガンになりやすい。さらに、ほとんど知られていないが、水道水やミネラルウォーターの中に広く存在するヒ素のリスクの方が若干大きいくらいだ。もっと言えば、あらゆる食品に発ガン性はある。何も、残留農薬や食品添加物の話ではなく、食品そのものに発ガン性がある。その強さは、食品添加物や残留農薬の数十倍もの高レベルである。だからと言って何も食べなければ死んでしまうので、発ガン性のリスクは無視される。当たり前だ。逆に言えば、バカマスコミが大騒ぎしている食品添加物や残留農薬のリスクなんて、食品そのものの発ガン性に比べれば、取るに足りないレベルなのだ。もっともっと言えば、食品に限らず、あらゆる刺激には発ガン性がある。外を歩けば日光にあたるし排気ガスも吸い込む。仕事をすればストレスも受ける。運動すれば乳酸が溜まる。ガンって、そういうものよ。発ガンが嫌なら何もしないで寝ているしかないのよ。
或いは、毎年、全国で交通事故で1万人もの人が死んでいる。平均寿命を80歳とすれば、だいたい150人に1人は交通事故で死んでしまう計算だ。これに比べれば、タバコなどのように極めて発ガン性の強いものを除いて、一般に発ガン性のリスクは小さい。
上記のWHOの報告では、電磁波を発がん性グループ2Bというところへ分類しているが、このグループにはコーヒーや漬物などが含まれており、漬物レベルの危険性ということになる。なんのこっちゃ、って感じよね。
別の見方をすれば、このように低いリスクが問題になってくるというのは、それだけ、社会が成熟してきたからとも言える。100年前の日本の乳児死亡率は1000分の150だった。つまり、なんと10人に1.5人もの赤ちゃんが死んでいたってことだ。それが今や1000分の3.2である。もちろん、これでも10万人当たりにすれば320人もの赤ちゃんが死んでいるのだから、10万人当たり10人程度の発症率が必ずしも高いとは言えないが、それでも赤ちゃんが死ななくなり、日本人の寿命が世界最長寿になってくると、それまで全く問題ならなかった小さなリスクが問題にされるようになってくる。


電磁波は危ないのか

いくら現実的には心配するほどのリスクではなくても、マスコミは絶対にそうは書かず、相変わらずセンセーショナルな煽り方しかしないから、電磁波が危ないとなると、何でもかんでも電磁波なら危ないって思う奴らが出てくる。
これは放射能と同じ構造だ。そもそも「原発から放射能がまき散らされている」なんてわめき散らしている奴らの大半は、放射能と放射線の区別もついていない。放射能は物質ではなくて放射線を出す能力なんだから、放射能がまき散らされるはずがない。言うのなら、放射線が出ているか、或いは放射性物質がまき散らされているか、だ。さらに、放射線が全て悪いかと言えば、これも不正確だ。そもそも放射線って言ったって、α線、β線、γ線とかあって、これらは全く別物。γ線なんて電磁波だし。それに、微量の放射線が健康に良いっていうのは、ホルミシス効果として科学的に立証されていることだし、だからこそラジウム温泉なんかが存在するのだ。そもそも太古の昔から地球上には放射線が溢れており、その中で生まれ育ってきた生物が放射線に無防備な訳がない。味の素と同様に、量というか程度の問題だ。量が少なければ体に良いし、多すぎれば悪いだけだ。

それなら、電磁波はどうか。
しかし、そもそも電磁波って一体なによ。何なのよ。理科系の人間なら、誰でも知っていることだけど、理科音痴のバカ文部官僚が画策する日本人低脳化作戦によって作り出される理科音痴の人間には、混乱されることが多い。
電磁波って、いっぱいあるんだ。目に見える光だってそうだし、ラジオやテレビの電波もそうだし、X線だってそうだし、赤外線や紫外線だってそうだし、ぜーんぶ電磁波だ。単に波長が違うだけだ。体に良いとか言いふらされている遠赤外線だって、電磁波だ。遠赤外線が体に良いのかどうかは、これまた極めてインチキ臭いのだが。
電子レンジに使われているマイクロ波は、そもそも水の分子振動と共鳴させて熱を発生させようという仕組みであるから、水分を含む生体に影響を与えてもなんの不思議はない。もっと波長の短い紫外線は、日焼けという分かり易い生体影響がある。さらに波長の短いX線やγ線になれば、エネルギー粒子としての性質が強くなってくるから、DNAに傷を付け、重大な人体影響がある。一般的に言えば、波長の短い電磁波はガンの原因になる。つまり、体に悪いと言える。ただし、それは程度の問題であって、極めて微量なら気にするほどのことはない。レントゲン撮影なんかは、そのリスクよりも、それから得られる効用の方が大きいということで、みんな受検するのだ。
逆に、波長が非常に長い電磁波は影響が少ないと言える。
ところで、じゃあ、送電線はどうか、となると、話はややこしい。送電線を流れる電気は周波数が50〜60Hzという、とんでもなく少ないものだ。電磁波の波長と周波数は反比例するから、周波数が少なければ波長は長くなり、数千キロメートルにもなる。しかし、それは送電線を流れる電流の話であって、そもそも、送電線から出ている電界・磁界は、環境問題としては電磁波に分類されて議論されているのだけど、本当は電磁波と言うより「電磁界」と呼ばれるもので、磁界としての性質が強い。でも、放射性物質や放射線を放射能と言い張るマスコミによって、電磁界も電磁波と呼称されようとしており、そのため話が分かりにくくなっているのだ。携帯電話や電子レンジから出る波長が数センチの高周波の電磁波は磁気よりも電波としての性質が強いが、その影響と送電線を流れる電気によって生まれる電磁界の影響が、ごっちゃまぜになって議論されている。
で、そもそも、50〜60Hzの電界・磁界が人間に与える影響は、いまだに、かなり疑わしい。ただ、高圧電線からそれ以外の電磁波が出ていないか、と言われると、これがまた難しい。50万ボルトといった高圧電線だと、放電を起こして電磁波がいっぱい出ている可能性も否定できない。
要するに、やっぱり、よく分かんないっていう事ですねえ。なんのこっちゃ。

また、電磁波が危ないとなると、テレビやパソコンも危ないのか、という問題になる。これについては、今回の調査の詳細が分からないので、何とも言えない。このような電気製品が危ないという事になると、怖くてテレビなんて見ていられなくなる。(って言っても、小児白血病にかかる歳ではないけど)
携帯電話については、かの偏向独善マスコミの盟主朝日新聞が出しているAERAという雑誌が「携帯電話がこわい」という記事を書いていたように、危ないのではないか、という疑いが出ている。ただし、この記事は「電磁波を感じる事ができる」という超能力まがいの嘘っぱち内容で塗り固められた典型的な商売第一主義の恐怖本的な内容なので、最初から信じるには足りないが。他にも、携帯電話は電波は微弱だけど頭に押しつけて使うから危険だ、という論調もある。基本的に携帯電話が嫌いな僕としては、どうでもいいんですけどね、ほんとは。て言うか、バカみたいに一日中携帯電話をかけまくっているパッパラパーのねいちゃん達なんて、脳腫瘍になるほどの脳みそも無いだろうし。ま、結論から言えば、携帯電話が使っている電磁波は、電子レンジと同じマイクロ波なので、影響は無いとは言えないだろう。ただし、周波数がかなり違うし、強さも全然違うから、脳が熱くなるってほどでもないだろうけど。

結局、結論を言えば、今回の研究結果を見る限り、統計的には悪影響は否定できないが、現実問題としては特に気にするほどのレベルの危険性ではない、ということだ。つまり、飛行機が墜落する可能性は否定できないけど、だからと言って飛行機に一切乗らないっていう選択はバカげている、っていう事と同じだ。もっと他に気にすべきリスクがいっぱいあるって事だ。少なくとも、タバコを吸って周囲の人にまで発ガンのリスクをまき散らしている人は発言の資格はない。もちろん、人の生き方というものは自分の勝手だから、「どうしても気にしたい人は、どうぞ好きなだけ気にして下さい。電気も携帯電話も無い無人島にでも行って暮らして下さい。その代わり、もっと大きなリスクがいっぱいありますよ」というくらいのもんだ。

なんて言ってみたところで、頭の悪いヒステリック環境保護集団には理解してもらえないだろうなあ。奴らは確率論的なリスクという概念が理解できず、いくらリスクが小さくても、100%安全と断言できないものに対しては反対し続けるんだもんなあ。世の中に100%安全なんてものは存在しないんだけどなあ・・・。

(2003.1.29)



〜おしまい〜





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