日米映画再評論

〜 ひどいぞ! アメリカ映画 〜



私は映画が嫌いではない。今は、滅多に映画館なんて行かないので、「映画が好きです」なんて偉そうに言えないけど、学生時代は、1年間に100本は見たぞ。2本立てで300円の名画座に毎週行けば、それくらいはすぐ見れる。だから、映画について見る目はある、と思う。
で、日米の映画について、以前、書いたことがある。要約すれば、ストーリーや訴えている事は、アメリカ映画は大したことないけど、圧倒的な予算による映像は素晴らしいので、エンターテイメント作品としては日本は全く対抗できない。しかし、日本やヨーロッパの映画には、数少ないが、内容が非常に素晴らしいものがある。一般的に興行的には成功しないものが多いんだけど、そういう内容で勝負するジャンルなら、日本やヨーロッパの映画の方が良い。ていうか、文化の浅いアメリカには、そういう映画が存在しない。根本的にジャンルが違うので、同列には比較できない。エンターテイメント的な作品については、アメリカの力は圧倒的であり、同じ土俵で勝負していては、日本映画は、どんなに頑張ってもアメリカにはかないっこないのだから、娯楽物ではなく、深い感動を呼び起こすような作品を作って欲しい。

ところが、最近、ロッキーで借りてきたビデオを見ていると、少し意見を修正しなければならない。
もちろん、ちょっと前からアニメのジャンルでは日本映画の評価は非常に高くなった。これはエンターテイメント作品としても優れているので、文化の浅いアメリカ人にも喜ばれるし、しかも内容的にも深く素晴らしいので、ディズニーアニメとは次元が違う。
しかし、今回、新鮮に驚いたのは、エンターテイメント作品の分野である。この分野でも日本の映画がとても良くなっている

何を見たかと言えば「ピンポン」である。映画館では昨年の夏に公開になったもので、何を今さら、と言われそうだけど、娘がロッキーで借りてきたビデオを見て、私はぶっ飛んでしまった。これは良い映画ですよう。本当に。聞くところによると、日本映画としては結構話題になった映画らしい(だからこそ娘も借りてきたんだろうけど)ので、見た人も多いんだろうけど、まだ見てなければ、ビデオを借りてきて見てみてください。良いですよう。ラストの結末の意外性にもガーンって殴られたけど、なんと言っても、雰囲気が良いですねえ。僕は今までの人生で高校時代が一番楽しかったので、基本的に、高校生が主人公の青春映画って好きなんだけど、それにしても良い雰囲気です。素晴らしい出来映えです。

同じく娘が以前、借りてきた「ウォーターボーイ」も面白かった。これは、さらに1年前の一昨年の夏の劇場公開映画で、同じく高校生が主人公である。テーマはシンクロナイズドスイミングだが、ピンポンほど真剣ではなく、かなりお遊びに近い。そのため、面白いのは間違いないが、深い感動は無い。だから、一度見れば、それっきり忘れてしまう。しかし、それに比べて、ピンポンは結構、奥が深いぞ。

それに、資金力に物を言わせたアメリカのエンターテイメント作品に比べれば大した事は無いが、ピンポンは最新のCG技術を使っており、映像的にもなかなか良い仕上がりになっている。見てない人には、たかが卓球に何のCG技術を?と言われそうだが、素人が卓球の高度な打ち合いシーンを演じるのは非常に難しいが、CG技術の使用により、スピーディでエキサイティングな画像となっている。香港映画の「少林サッカー」に通じるものがある。少林サッカーは、特撮はもっとチャチで派手で、より娯楽に徹した作品だが、全体の雰囲気も通じるものがある。

さて、これだけなら、「ううむ。一部のマイナーなジャンルだけでなく、日本映画も、なかなか素晴らしくなってきたなあ」と感心しておしまい、だったかもしれない。
しかーし、私は今、その比較対照であるアメリカ映画に対して怒り狂っているのだ。何かと言えば、スパイダーマンだ。
これも去年の映画で、同じくロッキーで借りてきて見たんだけど、「全米での公開初日の興行収入が史上最高」とか、「日本での公開2日間の興行収入が歴代5位」とかの宣伝文句に期待して見てしまったのが失敗だった。
なんじゃ、こりゃあ〜っ!
あまりにもひどすぎるぞーっ!
もちろん、ストーリーがひどいのは許容できる。最初の5分を見れば、最後まであらすじは分かってしまう。とにかくアクションシーンを無理矢理作り出すための強引で無茶苦茶なストーリー。しかし、最初からストーリーには期待なんかしていない。奴らはストーリーなんかどうでもよく、ストーリーなんて、とにかくその場その場のシーンをつなげるだけの言い訳みたいなもの。
大筋のストーリー以外にも、最初、レスリングしてた時はダボダボだったコスチュームが、いつの間にかピチッとフィットして縫い目すら消えてしまい、猛火にもめげない素材になっていて、あ〜ら不思議、どこで手に入れたんだろう?なんていう不可解な事もいっぱいあるけど、まあ、それもこれも、とにかく、映像が素晴らしければそれでよろしい。もともと嘘で塗り固めたバカ話なんだから。
しかーし、それなのに、なんじゃあ、ありゃ!?映像がものすごくチャチでないかい?一昔前のテレビのウルトラマンシリーズみたいなチャチさ。ひどいぞーっ!今時の特撮とは思えないぞ。予算の無い安っぽいアニメのCGみたい。ひどすぎ。全然、迫力ない。ぜんぜんワクワクしない。あれで制作費166億円だって!?どこに金使っとんだ?スタッフで飲み食いしてただけちゃうか?
グリーンゴブリンなんて、何よ、いったい。あそこまで人をバカにしたようなマスクって、あり?今どき、幼児向けのマンガにも出てこないぞ、あんな顔。動きもおもちゃそのものだし。バックの背景との違和感もアリアリだし。
それから、あのヒロイン、何?どこが飛び切りの美女なん?どこが天使なん?ひどすぎる。ブスすぎる。あまりにもブスすぎる。もう、ボーゼン。あんなん、守りたくならないぞ。
おまけに、最後は、露骨なまでの「続編がきっとあるから期待してちょー」的シーン。あななバカみたいな映画で続編作るのか!?

この映画で思い出したのは、10年くらい前に、アメリカで見たバットマンだ。その時、ちょうど時間をもてあましてて、映画でも見ようかという事になり、映画館へ行くと、ちょうど話題作のバットマンリターンをやっていたのだ。
あの映画も当時アメリカでは爆発的に人気を博していて、かなり期待して見たけど、見た後の怒りは、今回の怒りと全く同じだ。あまりもチャチぃ。ひどすぎ。バカにしすぎ。なんじゃ、ありゃあ〜っ!?って激怒した。アメリカは映画代が1000円程度と安いので、怒りも半分くらいだったけど、それにしてもひどすぎ。
今回のスパイダーマンは、最初から、それを覚悟すべきだったのだが、あれから10年も経っているので、さすがのアメリカ人も少しはお利口になって、かつ映像技術も飛躍的に向上したから、あななぶざまな映画にはなってないだろうと勝手に想像していたのが敗因だ。

このように、アメリカ映画をクソボロにバカにすると、アメリカ人は青筋立てて反論する。「バットマンやスパイダーマンには子供の頃からの思い入れがあるんだ。文化や環境が全く違う日本で育った人たちには決して理解できない面白さがあるんだ」なんて言うんだ。日本で言えば、ウルトラマンや仮面ライダーみたいなもんか?しかし、日本なら、仮面ライダーの映画が出来たとしても、大人が爆発的に見に行ったりはせんぞ。アメリカ人は、思考の成長というものが無いのか?
同じく、僕がよくバカにするアメリカ映画にスターウォーズがある。あのストーリーも全く支離滅裂でひどすぎる。そもそもストーリーなんて重視してないんだろうけど、それにしてもひどすぎる。しかし、スターウォーズは、最初から映像がすごかった。映像だけで見せてくれる。非常に素晴らしいできばえです。だから許せる。(もちろん、アメリカ人は、あのストーリーにこそ感動するんだ!とムキになるんだけどね)
それに比べて、スパイダーマンのひどさは許し難いですねっ!
本当に大金をかけてるんだったら、もうちょっとマシな映画を作ってもらいたい。

(なーんて、ロッキーで借りて見ているだけの私に批判する権利は無いか)

(2003.8.30)



〜おしまい〜





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