小久保のトレード

〜 プロ野球界の倫理崩壊 〜


ダイエーの小久保が、なんと突然、巨人へトレードされることになった。しかも無償で。一体、何がなにやら訳が分からん。
なんなんだーっ?これはっ!

ダイエーが非常に厳しい財政難にあることは承知している。ダイエー本体が潰れかけているため、これまで宣伝広告費などの名目で年間約15億円を資金提供されていたのが、来季は半分の7億5000万円に減額される方向だ。また、球団の身売り話もやかましい。球団はダイエー本体から80億円以上を借り入れ、約60億円以上の債務超過になっているため、球団は新たに発行する株をダイエー本体に渡し、約60億円の借金を免除してもらおうというスキームを進めている。

一方、小久保の給料はチーム一の高額の年俸2億1000万円であり、巨人にとっては、どうってことない額だが、ダイエーにとってはこの負担は小さくはない。しかも、今年は日本一になったことで、2億円の城島や1億6000万円の松中も倍増が予想される。かと言って、今年活躍した城島や松中を出す訳にはいかないので、今年、足の故障で出番の無かった小久保の放出となったのだろう。
リーグ優勝&日本一というタイトルを手にしたことで、ますます球団経営が苦しくなったというのは、皮肉ではあるが、世の常だ。我が阪神タイガースだって似たような状況だ。タイガースが17年も低迷したのも、球団側が「選手に高給を払うくらいだったら優勝しない方がいい」と考え続けてきたからだ。球団としては、「優勝争いはして客は入るが、結局、優勝はしなくて給料も上げない」っていうのが理想なんだろうけど、そなな不埒な事を考えていると、結局は最下位低迷になるのだ。星野監督が電撃辞任したんだって、補強に当たって金を渋る球団側と溝が大きくなった事も大きな要因だろう。

確かに、戦力的に見ても、去年までは欠くことのできない存在だった小久保だが、今年はオープン戦で怪我して、そのまま1試合も出ないままシーズンを棒に振ったのだが、なんとチームはリーグ優勝&日本一になってしまった。小久保の後釜は、はるかに給料の安い川崎が十分に埋めてしまい、小久保の必要性は決定的に薄れてしまい、単に金のかかる居候となってしまった。
阪神タイガースだって、高給を取りながら後半は崩れていった伊良部あたりは出したがっているんじゃないかなあ。

しかし、だからと言って、今回のトレードがすんなり受け入れられる訳ではない。王監督も言っているが、「交換要員を求めず、代替選手を獲得する資金も要求しなければ、戦力が低下するだけ」だ。同じ放出するにしても、もっとうまいやり方があるだろう。本人は以前からダイエーから出たがっていたのだから、交換トレードでも金銭トレードでも、そんなにおかしくはない。無償トレードの方がはるかに異様だ。
さらに、今年のダイエーの場合、ほかにも井口と村松がチームを出たがっている。彼らを引き留めながら、小久保を無償トレードで出したのでは、引き留める説得力が無くなってしまう。さらに、チームに残るメンバーに対しても、ガタガタになってしまう。

球団側は、小久保の希望に沿ったことを強調した上で、無償としたのは、小久保が有利な条件で巨人と契約できるようにするためと説明している。功労者を金銭で売ったとみられたくない思惑もあったようだ。

しかし、それでも納得できない。できるはずないっ!
これは陰謀だ。絶対に陰謀。すなわち、ダイエーが球団として存在させてもらうための取引だ

ダイエー球団の身売り話が持ち上がってからと言うもの、巨人の渡辺オーナーは「そんな勝手な身売り話は認められない。外資になど売ろうものなら、リーグから除名する」なんて脅し続けてきた。なぜ、そこまで脅しているのかは分からないが、とにかく銀行主導のダイエー債権話には嫌がらせをしてきた。他球団のオーナーにも働きかけてダイエー包囲網を構築し、渡辺オーナーの号令ひとつで、いつでもダイエーのプロ野球参加資格をはく奪できる立場にいた。
ただし、これについては、僕も同感だ。プロ野球というものは、経済原理だけで運営するものではないと思う。もちろん、とんでもない経済不合理は駄目だろうけど、100%経済的な理由だけで売り買いするのは許せない。経済的に苦しくても、安易に売買するのではなく、色々と努力するべきだ。これはアメリカでも、球団売買のたびに問題になる課題だ。経済的な理由だけで売り買いしようとするオーナーに対して反発する地元市民との軋轢は激しい。だから、いくら親会社が経営危機だからと言って、その救済交渉の駒として球団が銀行に弄ばれるのは許せない。なので、この件に関しては、憎き渡辺オーナーに頑張って欲しい。
しかし、もし、今回の小久保トレードの話が、球団身売り話などと裏で結ばれているのだとすれば、それこそ許し難い暴挙だ。

直前の10月31日のオーナー会議では、これまでどおりのダイエー球団の存続が認められた。そのお礼の無償トレードだったのではないだろうか?あるいは、小久保を無償トレードするから球団存続を認めてもらう裏取引が出来ていたのか。ダイエー本体から完全に疎外されながらも、なぜか執拗にオーナーにこだわる中内オーナーは、どうしてもオーナー職を失いたくなかったから、渡辺オーナーの助けを得ようと、小久保を巨人に無償でトレードしたのではないか?

老獪な渡辺オーナーなら、やりそうな事ではある。
しかし、一体、巨人っていうチームは、何をやろうとしているのだ?各球団の4番バッターばかり集めてオールスターチームを作って、そんなに嬉しいんだろうか?僕なんて、今年のタイガースの優勝は、そりゃあ18年ぶりだから嬉しいに決まっているけど、唯一複雑な気持ちは、移籍選手が多く、彼らの力無くしては優勝なんてできなかった事だ。移籍選手は悪いことはないが、余りにも多すぎると、なんだか阪神で無いような気がしたりする。そうは言っても阪神はまだマシだが、巨人なんてどうなるの?もちろん、次から次へと主力選手を集めまくっていれば、そのうち昔集めた選手が不要になってくるから、今回も、早くも清原や江藤はリストラ対象で窮地に立たされるだろう。ノコノコと巨人なんかへ行った自分が悪いんだから自業自得だが、こんなんでプロ野球は発展するのかなあ。

(2003.11.4)



〜おしまい〜





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