東京国際女子マラソン

〜 どうした、Qちゃん! 〜


アテネ・オリンピックのマラソン競技の国内代表選考会第1戦である東京国際女子マラソンが11月16日に開催された。そして、なんと、我らがアイドル高橋尚子選手が信じられない惨敗をしてしまった

高橋選手は今回のレースの本命中の本命だった、って言うか、彼女が出るから、他の日本人有力選手は誰も出てなかった。だって、ここでどんなに良い記録を出しても、高橋選手に負けたら、やっぱりオリンピックは難しいから、残りの大阪や名古屋に出て、そこで日本人1位となってオリンピック切符を手に入れようとしていた。つまり、今回の東京国際女子マラソンは、平凡なタイムであったとしても、ライバルのいない高橋選手にとってはオリンピック切符を確実に手に入れることができる楽勝レースだったはずだ

それなのに、ああ、それなのに、どしたんや。あのぶざまな姿は!?
前半は快調に飛ばしていたし、前評判では「これまでで一番体調が良い」って事だったので、「もっと飛ばせーっ!」って感じで見ていたんだけど、終盤になり、いきなりガクンとペースダウンしてしまった。

あのペースダウンぷりは、まるで素人の走りだ。僕らがよくやるレース展開だ。マラソンをしない人から「あんな事ってあるんですか?」って聞かれたので、「僕らにとっては、ごく普通の当たり前の展開ですよ」って答えたけど、プロが同じような事は、せんだろう?一体どうしたんだ。
僕らが終盤、ガクンとペースが落ちるのは、練習不足と前半のオーバーペースが原因になる事が多い。どこでペースダウンしてしまうかは、練習量と、その日のコンディションや前半のペース次第だから一概には言えないけど、だいたいの検討はつく。個人的には、最近は、前半に飛ばしすぎることが少なくなってきたので、割と持ちこたえる事が多くなった。当然ながら、そのせいで、タイムはいまいちですけど。

マラソンにはずぶの素人らしき記者が書いたと思われる新聞記事に「あれだけ苦しそうだったから、ゴールしたとたん崩れ落ちるのではないかと思ったら、平然とした表情で笑顔さえのぞかせたのには驚いた。やはり並のランナーではない」なんて書いていたが、そんなん当たり前だ。並のランナー以下の僕だって、いつもそうだ。なぜなら心肺機能面で苦しくなってペースが落ちたのではなく、足が動かなくなっていたからだ。まだ足が動く状態で必死になって飛ばせば、これは心臓も呼吸も苦しい。満濃公園動物リレーマラソンで1周2kmのコースを全力で走って次走者にタスキを渡すと、倒れ込んだまま30分は死んでいる。短距離走と同じだ。
でも、彼女が言うように「足が棒のようになって動かなくなった」のなら、呼吸や心臓は楽勝だ。ゴールして倒れ込むというのは、全力を使ったという証拠だけど、足をひきずるようにしてゴールしながら涼しい顔で笑っているっていうのは、いつも僕がやっている事だけど、ちょっと情けない状態だ。

プロの彼女が、しかも、前回のオリンピックでは金メダルを獲り、また世界記録も出したスーパースターの彼女が、そなな素人のような事をしよるようでは、いかんのではないか?一体どうしたんだ?
走っている時は、てっきり足の故障でも起きたのかと思ったけど、ゴールした後の話し方を見る限り、そういう故障ではなく、僕らと同じように、単に足が動かなくなったって事らしい。
う〜む。不思議だ。あれだけの能力、実力と経験を持つうえに、今回は万全の状態で臨んだと言うのに、一体全体どうしたのだろう。故障ではないにしても、何か隠された秘密があるように思えてならないぞ。

とにかく、このままではオリンピック切符は非常に難しい状況だ。もちろん、大阪と名古屋のレースでパッとした記録が出なければ、実績のある高橋選手が選ばれる可能性は十分にあるが、そうでなければ難しいだろう。

レース翌日の記者会見では、残る大阪や名古屋の代表選考レースへの再挑戦を考えていないことを強調したらしい。ううむ。まあ、確かに、これまで1年もかけて今回のレースに賭けて練習を積んできた彼女としては、惨敗したからと言って、すぐに頭を切り換えるのは難しいだろう。記者会見での表情は明るかったとされているが、これは素直には受け取れない。かなりガックリ、どころか愕然としているはずだ。
「もっと悔しさや悲しさがこみ上げてくるかと思ったが、スッキリした気持ちに変わりはない。人生においていい経験をした」なんて言ってるけど、それは信じたくない。あれで悔しさがこみ上げてこなかったのなら、これからの見通しは非常に暗い。
「私は100%の力を出した。大阪や名古屋でいい記録を出した人がいたら『おめでとう』という感じ」と話したらしいが、いかん、いかん、いかんぞ。そなな弱気な事ではいかんぞ!
何があっても大阪か名古屋に出て、圧倒的な力の差を見せつけて、有無を言わさずにオリンピック切符を獲得して欲しい。

(2003.11.17)



〜おしまい〜





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