アメリカ映画 再々評論

〜 ひどいぞ、ずるいぞ! 〜



自宅から歩いて数分のところにロッキーがあった。ロッキーとは、香川県内で圧倒的な勢力を誇ったレンタルビデオショップである。豊富な品数と各種の割引メニューにより他店を圧倒しており、他店が潰れずに残っているのが不思議なくらいの圧倒的な力であった。
そのロッキーが名古屋のゲオに身売りした。あれだけ流行っているのに、なぜ?という疑問は今だに解決できないが、取りあえず飽和状態になったビジネスに経営者が飽きて売り払ったのかもしれない。
とにかく、近所のロッキーもゲオになった。1週間くらいは改装のために閉店していた。しかし、再オープンした時に行ったけど、あまりの変化の無さに愕然とした。普通、新装開店って言ったら、いかにも新品って感じに改装すると思うのだけど、ほとんど何も変わっていない。色あせた表示板から、すり切れたバッグまで、使える物は徹底的に再利用しており、棚の位置などのレイアウトが変わった以外は、何の代わり映えもしない徹底した低コスト改装だった。さすがはコスト意識の高い業界だ。たしかに客は、店内がきれいかどうかなんてどうでもよく、品揃えと価格だけが勝負だもんな。
で、変わったところは料金だ。と言っても、従来システムとほとんど同じだが、月に3回ある割引デーの料金が、100円から95円になった。やっぱり、あんまり変わってないな。

しかし、何も私はロッキーとゲオの差違について述べたい訳ではない。その近所の元ロッキー現ゲオは、4のつく日が割引デーなので、年末の12月24日の夜に行ったのだが、時すでに遅く、めぼしい物はほとんど無かった。
で、1月4日にリベンジに行ったら、さすがに年末年始の休暇も最後の日だし、朝10時の開店早々ということもあって、めぼしい物がいっぱいあった。それで大量にDVDを借りてきた。そんなに借りてきても見る時間は限られているので、非常に厳しい闘いであったが、かなり強引に大量に見た。

借りてきたのは「パイレーツ・オブ・カリビアン」、「X−MEN 2」、「ロード・オブ・ザ・リング 2」、「マトリックス 2」などなど。今さら何を見よんじゃ、なんて言われそうな旧作リストですが、見てなかったのよねん。最近、アメリカ映画に対して怒りまくっている私だが、どれも評判は悪くないし、金もかかった大作ばかりなので、今回は期待した。
しかし、今回も、私は怒っているのである。
今回の怒りは以前の怒りとは違う。前々回は、三流映画の作りのチャチさに怒り狂った前回は、金をかけたと言われ評判も良かった大作のくせに、あまりにストーリーと映像がチャチだったので怒り狂った。今回は、ちょっと違う。

そもそも、僕はアメリカ映画に対しては、文化的側面からは全く期待していない。僕はとってもアメリカが好きで、完全にアメリカナイズされた嫌な日本人ですが、文化に関しては、アメリカ文化の底は極めて浅薄だと思っている。ちょっと前まで人も住んでなかったような荒れ地に移住してきた、文化と縁の無かった連中が作った国なんだから、仕方ないことだ。だから、アメリカ映画には、ヘタな感動を狙うのではなく、徹底的に見事なエンターテイメント作品を期待している。例えば「スターウォーズ」なら、安易でチャチで底の浅いストーリーを絡ませようとするから、程度の低い作品に成り下がっているけど、映像面では良く出来ているのだから、愚かな悪あがきは止めて、映像面だけに集中して欲しい。だから、アメリカ映画に対する評価は、映像だけだ。

まず「パイレーツ・オブ・カリビアン」だ。これは宣伝を見る限り、かなり面白そうだと期待した。ストーリーはどうせチャチなもんだと思っていたし、実際、最初の5分も見れば最後まで分かる程度のくだらないバカ話だったが、そんな事はどうでもいい。ハムナプトラのような迫力ある華麗なスペクタクルを期待していたのだ。ところが、ちょっとなあ。怒り狂ったほどではないが、期待はずれもいいところ。ぜーんぜん大したことない。どこに金かけとんのかいな、ほんまに。がっかり。

これに比べれば「X−MEN」は、最初から期待度が低かったせいで、割と満足できた。以前見た第1作のストーリーは、僕だけでなく、家族の誰も覚えていなかったほど、どうでもいいバカ話だったけど、面白かった記憶はある。第2作も、話がどんどん大げさになっていって収拾が付きにくくなるのは続編の宿命ではあるが、なんとか破綻せずに終わったし、面白かった。

しかし、怒りだしたのは「ロード・オブ・ザ・リング」からだ。このシリーズは評判は良かったのだけど、ストーリーが昔のおとぎ話っぽくて、ちょっと引いていたのだ。しかも、長い長い話ということだし。しかし、これは見るべきだ、という声が多かったので見てみた。どうせストーリーは最初からどうでもいいんだけど、映像は予想外に素晴らしかった。まさにファンタジーという感じ。よく出来てます。長い映画とは言え、とてつもなく長い原作に比べれば、極端なまでに圧縮しているので、原作を読まずに見ると、なんのこっちゃら分からないのはハリー・ポッターと同じだけど、あらすじは単純なので問題はない。
じゃあ、何を怒っているかと言えば、シリーズごとにストーリーが完結しないところだ。そりゃあ、長い話ってのは分かるけど、突然「つづく」は無いでしょう?テレビドラマじゃあるまいし。まさに、これからどうなるんだっ!って所で突然「つづく」だもんなあ。第1作を見たときに、あまりの事に呆然とし、怒り狂いました。第2作目は、もう分かっているので、そんなに怒らなかったけど、それでも欲求不満は残った。ハリー・ポッターなんかも、たぶん第7作まで出るんだろうけど、毎回々々話が完結する。次が出るまで何年もかかる映画なんだから、そうでなければ欲求不満が残る。それを平気で「つづく」は無いでしょう?

同じ怒りが「マトリックス」だ。以前、第1作を最初に見たときは、何が何やらストーリーが分からず、混乱したが、意味が分かると素直に楽しめた。新しいパターンで、結構面白かった。今回の第2作もそれを期待して見ていたのだが、話がどんどん大げさになっていって収拾が付きにくくなるのは、やはり続編の宿命ではありつつも、これまたなんとか破綻せずに面白く展開していた。
ところが、なんと、これも突然「つづく」は無いでしょう!いよいよ、これからって時に、いきなり「つづく」だなんて、人をバカにしている。第1作は完結していただけに、呆然としてしまった。しかも「ロード・オブ・ザ・リング」の方は、1つの山場が終わったところで「つづく」になったから、まだマシだが、「マトリックス」の方は、まるでテレビドラマのCMの前くらいの場面で「つづく」だ。1分間のCMを待てば続くのなら許せるけど、何年もかかる映画で、これは無いでしょう?

続編を見させたいという気持ちは分かる。なんてったって、アメリカ映画産業の体質は、文化的側面なんて無視した、商売第一主義以外の何ものでもないんだから、当然、次のも見てもらって荒稼ぎしたい気持ちは分かる。しかし、作品が良ければ、みんな次も期待して見るはずだ。それを、そういった品質本意じゃなく、姑息にも、突然「つづく」にしておいて次を見させようなんて魂胆は、本当に腹が立つ。ずるすぎる。こすっからすぎる。商売第一主義もここまで地に落ちれば、まとも相手にしたくなくなる。
もちろん、「マトリックス」の完結編は既に映画館で上映中だし、「ロード・オブ・ザ・リング」の完結編も間もなく上映するはず。だから、すぐにつづきは見れるわけだが、そなな事は意地でもせんぞ。意地でもレンタルDVDが出るまで待ってやる!
(って、結局、安上がりに見るんじゃねえか!)

(2004.1.11)



〜おしまい〜





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