麻薬で死刑

〜 刑罰の国際格差は大きい! 〜



とんでもないニュースが入った。日本人が中国で麻薬密輸の罪で死刑判決を受けたのだ。
この日本人は福島県出身の61歳の男性で、昨年7月遼寧省瀋陽市の桃仙国際空港で関西空港行きの中国南方航空機に搭乗しようとしたところ、ビニール袋5個に分けて詰めた覚せい剤1.25キログラムを腰ベルトに隠しているところを当局者に見つかり、麻薬密輸罪の現行犯で逮捕された。中国から日本へ密輸しようとしたらしい。そして、瀋陽市中級人民法院(地裁)が2月3日に麻薬密輸罪で執行猶予の付かない死刑判決を言い渡したのだ。日本人が中国で、執行猶予の付かない死刑判決を受けるのは初めてだ。


中国の裁判事情

中国の裁判は通常、地裁、高裁の2審制をとる。被告は遼寧省高級人民法院(高裁)に控訴中だが、通常数ヶ月以内に控訴審が開かれ、死刑が確定すれば即執行されることが多い。地裁の死刑判決に最高人民法院(最高裁)の許可が下りているため、再審請求は難しいとみられている。刑が確定し執行されれば、日本人が海外で刑法犯として死刑に処される初のケースとなる。

中国刑法では麻薬は重罪で、製造、運搬、販売、密輸にかかわった罪は麻薬の種類によっても異なるが、ヘロインなどは最低50グラムから死刑になる可能性がある。事実、一昨年、覚せい剤を中国から密輸しようとした韓国人男性の死刑判決が高裁で確定し、執行されている。ひえ〜。持ち込むのなら厳しくても分かるけど、持ち出すのも死刑だなんて、ひえ〜っ!

ただし、中国の刑法では、死刑判決にも執行猶予が付くことがあり、執行猶予中に故意に犯罪を犯さず服役態度が良好と判断された場合は、無期懲役に減刑される。2001年7月に傷害致死罪で起訴された日本人男性は、高裁で死刑(執行猶予2年)判決を言い渡された。らっきー。無期懲役になっちゃえば、そのうちドサクサに紛れて恩赦とかで出てくるよ。
また、麻薬犯罪でも必ずしも死刑になる訳ではなく、これまで中国国内で麻薬密輸事件で逮捕された日本人は1999年と2001年に1人ずついるが、前者は懲役20年、後者は無期懲役が確定し、現在も服役している。
ただ、今回の被告は家族や領事館員とも相談して、費用が安い中国人の国選弁護士に弁護を依頼した。もしかして、これが良くなかったのかも。中国人の国選弁護士だなんて、いかにも頼りなさそう。て言うか、麻薬密輸の日本人なんて、はなから真剣に弁護しようなんて思ってないのでは。日本の国選弁護士だって、麻薬密輸のイラン人の弁護なんて力入らないでしょう。


背後の組織

中国で麻薬密輸は重罪だ。しかし、必ずしも死刑という訳ではない。実は、逮捕の際、別の日本人男性が一緒にいたらしいのだが、この男は日本に逃走しているらしい。被告は、この男についてよく知らないらしい。覚せい剤を運ぶよう指示した人物についても詳しく知らないと供述している。被告は地裁の公判で、麻薬密輸の起訴事実は認めていたのだが、日本国内での依頼主や中国から逃走した共犯者の情報を提供できなかったことが、公判で非協力的とみなされ、情状酌量による減刑が認められなかった可能性があるらしい。でも、これは本当に気の毒。だって、本当に知らなかったと思われるからだ。

香港を含む中国で麻薬密輸容疑で逮捕された日本人は、以前は少なかったが、昨年は1年間で香港、上海、瀋陽、大連、広州など6空港で9件13人(20歳代から60歳代、女性1人を含む)もいる。彼らはみんな、暴力団や覚せい剤の密売組織とは無関係の退職者や失業者、ホームレスで、見知らぬ人物に数十万円程度の報酬で中国行きを頼まれている。こうした人々を利用した中国からの覚せい剤密輸ネットワークがあるらしく、今回の被告も定年退職して金に困っていたため、日本国内で何者かに数十万円の謝礼で中国から覚せい剤を日本に運ぶよう依頼された。
昨年11月7日、上海空港の手荷物検査場で1.5キロの覚せい剤を隠し持っていて逮捕された20歳代の男性も、新宿で暮らすホームレスで、公園で見知らぬ男に20万円で頼まれ、偽造パスポートや渡航費を渡されていた。

これらの背後には暴力団関係者の関与が疑われている。北朝鮮の工作船銃撃事件などで日本近海の海上警備が強化される中、雇われた退職者やホームレスなどが空路、小口に分けて中国ルートで覚せい剤密輸にかかわっているのだ。数百キロ単位の密輸が摘発されている海上の密輸ルートに比べて航空機による密輸は小口だが、運ぶ人数と回数を増やせば大量の密輸も可能だ。


気の毒な運び屋

ただし、中国国内の空港にある探知機は高性能らしく、麻薬を隠し持ったすり抜けが極めて難しい。だからこそ、暴力団関係者は自らは実行せず、事情を知らないホームレス等を使っているのだろう。
昨年拘束された日本人13人は中国への渡航歴はほとんどなく、麻薬関連の刑罰が日本に比べて非常に重いという知識はなかったという。彼らが数十万円の報酬で引き受けたのも事情に疎いからであり、死刑になる可能性があるのなら、いくら金に困っていても数十万円では引き受けないだろう。

中国の裁判所が日本人男性に極刑を言い渡したのは、旅行者を装った運び屋の急増を懸念したためとみられる。中国入管当局は昨年秋から日本人が入国する査証(ビザ)を免除しており、渡航手続きが簡略化された。往来人数も300万人以上と年々増加している。このため、強い態度を示しておかなければ、運び屋がどんどん急増する恐れがある。
13人のうち1人は覚せい剤約7キロを運ぼうとして香港で起訴され、懲役20年の実刑判決を受けた。あとの11人は、4人が公判中、7人は公判が始まっていない。今回、死刑判決を受けた被告以外の逮捕者も、覚せい剤約1〜7キロの密輸容疑で調べられているため、いずれも死刑を含む重罪に問われる恐れが出てきた。


刑罰の国際格差をどう考えるか


これまで海外で日本人に対する死刑が実際に執行されたケースはない。大麻所持の罪を問われたフィリピンの裁判など数例で死刑判決が言い渡されたことがあるが、いずれも終身刑などに減刑されている。もちろん、終身刑でも厳しいが、死刑と終身刑では次元が異なる。オーストラリアでも麻薬密輸容疑で懲役刑を受けた男性がいる。彼の場合は、「よく知らない人から頼まれた荷物を運んでいただけ」との事で、容疑を否認しているのだが、信じてもらえなかったらしい。本当に知らなかったとすれば、「随分、認識が甘いなあ」って印象を持つが、真偽のほどは定かでない。
いずれにしても、死刑にしても無期懲役にしても、麻薬ごときでやたら思い刑罰だなあっていう印象があるけど、どうでしょう?日本じゃ殺人を、しかも通常は2人以上を殺さないと、死刑はない。もちろん、これはこれで、どうかとは思う。少女を誘拐拉致して何年間も監禁していたような事件の犯人は死刑にすべきだと思うけど、被害者が死んでないから死刑はあり得ない。子供を衰弱死させようとした夫婦も、子供が死んでないから死刑はあり得ない。これはこれで理不尽さを感じます。
一方、独善的勘違い集団のEU諸国などは、死刑制度そのものに反対で、死刑を続ける日本などを非難し続けている。ほっといてくれ!
このように同じ罪を犯しても、って言うか、オランダ辺りじゃ軽い麻薬は罪にもならないのだけど、同じ事をしても国によって刑罰が極端に違うってのも、何となく割り切れないものが残ります。(いまだに不倫が重罪になる国も多いのよ。ひえ〜っ!)

(2004.2.18)



〜おしまい〜





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