回転ドアの事故

〜 ほかにも恐怖のメカがいっぱい 〜



六本木ヒルズで子供の死亡事故が起きてから、回転ドアが大問題になっている。
この事故では、メーカー側「事故防止用センサーの誤作動が多いため、森ビルの要請により、センサーの感知範囲を小さくした」と言っているのに対し、森ビル側「昨年12月に事故が起こったため、メーカー側に対し、センサーの感知範囲を拡大するように求めたが、誤動作が増えるとの理由で断られた」などと正反対の事を言っており、どっちが本当が分からない。分からないが、常識的に考えれば、メーカー側が言っているのが正しいような気がする。こういう事って、普通は納入業者は弱い立場にあり、たいていは無理を強いられる。メーカー側は「ドアの回転スピードも早すぎて危ないから、森ビル側に遅くするように申し入れたが、聞き入れられなかった」とも言っている。誤作動が頻発してドアが止まって困るのも森ビルだし、ドアの回転が遅くて客が滞留して困るのも森ビルだ。メーカーは感度を上げたって何も困る事は無い。もし使っているビル側が感度を上げろと言ったのなら、あえてメーカー側が反対する理由が無いじゃないの。昨年春のオープンから回転ドアに関する事故が32件も頻発しているのに、ポールを立てるなどといった子供だましの対策以外、抜本的な対策も施さずに運用を続けていたのだから、明らかに森ビルの責任だわなあ。森ビル側の説明は、責任を業者になすり付けようとする言い訳に過ぎないような気がする。
まあ、これは、いずれ警察の捜査で明らかになるだろうから、それにお任せしよう。

実際にこういう事件が起きて大騒ぎになって初めて言うのは無責任で恥ずかしい事だけど、実を言えば、僕も前々から回転ドアは怖いと感じていた。なんてったって、入るタイミングが難しくない?こんな事を言うと「トロくさい奴だ」とか「老化現象だ」とか言われそうで、今まで恥ずかしくて言えず、平気なフリをしていたが、回転ドアに入るのは怖いよ。
もともと回転ドアは欧米では昔から多かった。僕はとってもアメリカが好きで、完全にアメリカナイズされた嫌な日本人ですが、アメリカに住んでいた時、やたらとある回転ドアは好きじゃなかった。なんてったって入るタイミングを取るのが難しく、入るのが早すぎるとつっかえそうになるし、遅いと挟まれそうになる。だからと言って戸惑って立ち止まったりすると「何やってんだ。トロい奴め」なんて思われそうで恥ずかしいし。
ただし、欧米に昔からある回転ドアは全て手動式であり、その意味で、恐怖感は少なかった。手動式なら、仮に挟まれてもすぐ止まる。て言うか、欧米の手動式回転ドアは、かなり強い力で押さないと回らない。前の人のすぐ後について楽しようとしても、自分が押さないとすぐ止まってしまう。
一方、最近、日本のビルで大流行の自動式回転ドアは怖い。なんてったって動力が強いから、挟まれたらただでは済まない。今回の事故で「子供の手を引いて入って下さい」なんて声をかけているが、先に押し込もうが、手を引いて後から入れようが、どっちにしたって子供が挟まる可能性は高いぞ。非常に怖い。なんであんな怖いものが広まるんだろう。もちろん、普通の自動ドアに比べて気密性は高くなるというメリットはある。普通の自動ドアだと、開いている間に外の空気が入ってきたりするけど、回転ドアだとあまり入ってこない。でも、危険を冒してまで普及させなければならないほどのメリットでも無いんじゃない?

でも、僕は、自動回転ドア以外でも怖いメカがたくさんある
以前、何が怖かったかと言えば、自動車のパワーウィンドだ。今では当たり前すぎて「何言ってんだ?」って反応が返ってきそうだが、大変怖かった。何も僕自身が挟まれる恐怖があった訳ではない。パワーウィンドの力も強いが、自動回転ドアと違って、大人が力を入れれば止められないパワーではない。そうじゃなくて、子供が挟まれるのが怖かった。手ならまだいいが、首を外に出した時にスイッチが入って首が挟まれたりするのが怖かった。非常に怖かった。そういう事故って、あんまり聞かないんだけど、本当に起こってないのかなあ。今回の回転ドアの事故だって、死亡事故が起こってはじめて過去の32件の事故が明るみになったくらいだから、パワーウィンドの事故だって起こっているような気がする。
とにかく僕はパワーウィンドが怖かったので、前の車まではパワーウィンド無しの車に乗っていた。不便と言えば不便だが、どうってことない不便さだ。車の窓くらい自分の力で開ければいいじゃないか!ところが、3年前に今の車に買い換える時には、既に世の中のあらゆる車がパワーウィンドになってしまっていて、選択の余地は無かった。これは進歩なのか?

そして、さらにその時、新たな恐怖メカが現れた。僕が買ったのはワンボックス・ワゴンだけど、そのスライド・ドアが自動になっていたのだ。これまた怖い。目の前で見ていれば事故は少ないと思うが、たぶん使い慣れてくると、十分に確認もせずに運転席に座ったままで後ろのドアを自動で閉めたりするだろうから、その時に小さな子供を挟んでしまう可能性は非常に大きいのではないか。もちろん、いまどきだから、これにも事故防止センサーはついているが、自動回転ドアと同じく、あまり使い物にはなりそうにない。かなり強い力で押されてしまうので、衝撃度は強い。大人の体を挟んだ場合などは、なんとか持ちこたえられるが、小さな子供の頭を挟んでしまうと、かなりダメージがあるはず。しかも、自動回転ドアと同じように、すぐには止まらないので、指をはさんだ場合などは、そのまま閉まってしまう。イテテ。
こんなとんでもないものを、一体どういう理由でメーカーは用意するんだろう、と大いに疑問、っていうか怒りすら覚えるのだけど、各メーカーともそれを売り物にしている。これも事故の報告は聞かないけど、明るみになってないだけじゃあないのかなあ。もちろん、僕は断固として、そのメカが着いてないグレードの車にしたので、他の装備の選択の余地が狭まってしまった。なんてあこぎなマーケティングだろう。

僕は文明の進歩には、基本的には肯定的であり、新しい技術に自分が着いていけないから批判するようなタイプの人間にはなりたくないが、不要な進歩(って、進歩とは言えないよなあ)とか無駄な進歩(資源やエネルギーの無駄遣いにつながるような)には反対だ。その意味で、自動回転ドアなんて無用の長物だと思うのだけど、いかが?

(2004.3.31)



〜おしまい〜





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