ライブドアのニッポン放送買収

〜 的はずれな批判 〜



ライブドアニッポン放送株式を買い占めて乗っ取ろうとしていることについて、批判がわき起こっている。

僕は、はっきり言ってライブドアって会社、というか、堀江社長は好きではない。去年のプロ野球参入事件の時から、「なんだか胡散臭い奴」って印象だった。これは僕に限らず、多くの中高年社会人が共有した印象ではないだろうか。同じようにインターネットを商売のネタにしている会社の中でも、どちらかと言えば胡散臭い部類だ。なぜかと言えば、本業はインターネット関連ではあるが、実際の収益は、企業買収や金融的手法によって生み出したものであり、まさに虚業の典型だからだ。
今回のライブドアによる日本放送株式の買い占めに対して批判がわき起こっているのも、僕と同じように、ライブドアに対して胡散臭く思っている人が多いからだろう。


今回の事件のそもそもの発端は、フジテレビがニッポン放送を子会社化することを目指して、発行済み株式の公開買い付け(TOB)を実施すると発表したことだ。

これまでは、規模の小さなラジオ局であるニッポン放送が、規模の大きいフジテレビの発行済み株式の約22・5%を所有する筆頭株主だという、ちょっといびつな構造だった。これは歴史的に見れば、おかしいことではない。もともとテレビが発明される以前は、ラジオ局しかなかった。そしてテレビが出始めた頃、ラジオ局がこぞってテレビ会社を作った。だからテレビ会社の親会社がラジオ会社ってのは、おかしくも何ともなく、当たり前だった。それが、そのうち規模が逆転してしまったけど、資本関係は元のままだったのだ。こんなのは何もテレビ業界に限った事ではなく、トヨタ自動車の大株主に豊田自動織機がいるのも同じだ。元々、豊田自動織機から派生したトヨタ自動車が規模で逆転しただけだ。

しかし、このような資本関係は、規模の小さな会社を買収すれば、それを通じて大きな会社の経営権を握れるという意味で、危険性をはらんでいる。もちろん、意図的にそれをやっているケースも多く、例えば、西武鉄道の堤氏は、西武鉄道の大株主であるコクドという小さな会社の大株主として、間接的に大企業の西武鉄道をコントロールしてきた。この場合は、コクドが非上場会社だから問題はない。しかし日本放送は上場会社なので、いつ誰に買収されるか分からない。そういう危険性をはらんでいたから、フジテレビがニッポン放送の株式を買い占めて子会社化しようとしたのだ。

ところが、ここにいきなりライブドアが出現し、横から大量のニッポン放送株式を買い占めてフジテレビの作戦を邪魔したのだ。もちろん、フジテレビは驚き、慌てふためき、大きく反発している
ライブドアの意図は、正直言って、分からない。表面的には「提携したい」と言っているが、非常に胡散臭い。フジテレビ側も、「何の話もなく提携というのは常識ではない。ライブドアは支配という言葉を使っているが、支配すると言っている人と話し合うものか」などと語り、業務提携などの面でライブドア側と協議する意思が全くないことを強調している。
これは、まことにもっともな反応だろう。提携したいのなら、まずは、普通に提携話を打診してくるだろう。いきなり株式の大量買い占めなんていう手荒なやり方はしないだろう。しかも、フジテレビがニッポン放送の子会社化を目指してTOBを始めた矢先に横から大量に買い占めるのだから、まともな提携話ではないだろう。常識的に考えれば、「適当な時期に、買い占めた株式をフジテレビに高く買い取らせようとしているのだろう」なんていう憶測も出てくる。


そして、ここへきて、フジテレビだけでなく、経済界から批判や疑問視する声が相次いでいる

しかーし、フジテレビが反発するのは当然だが、これら経済界からの批判は、的はずれなものが多い

「奇襲作戦だ。あまり歓迎するものではない」なんていう財界トップがいるが、これは感情だけで話しており、なーんにも理論的ではない。
「資本主義の悪い面が出ている。従来の財界人の考えで言うと、正攻法ではないと感じる」なんて意見もあるが、いったい、どこが悪い面なのか、さっぱり分からない。これは単に、自分なら買収されたくないから、こういった敵対的買収を「悪い面」と言っているだけだろう。そりゃあ、自分の会社が敵対的に買収されるとなれば、非常に嫌な感じだが、それが資本主義の悪い面とは言えないだろう。資本主義は市場により効率性を追求するシステムであり、買収して効率的に運営しようとするから企業買収するのであり、それを否定するのは資本主義そのものを否定することになる。資本主義を否定するのも勝手だが、それなら株式会社という形態自体を見直さなければならない。こういう年寄りは、資本主義や経営学を勉強した事はあるのかな?まあ、自分でも「従来の財界人の考えで言うと」と断ってはいるが、まさに、こういう年寄りの財界人は頭を切り換えなくてはならないぞ。
「やり方に疑問を感じる。安易な企業のM&Aは単なるマネーゲームに過ぎない」てのも、単なる感情的な反発だろう。どこが悪いのか、理論的に説明しようとはしていない。できないからだ。
「顧客やビジネスを考えた場合、敵対的な買収が日本の風土になじむかは大変疑問だ」との意見もあるが、よおく考えてみよう。もし、敵対的買収が日本の風土になじまなければ、その買収は良い結果をもたらさない訳だから、買収したって価値は上がらない。ということは、買収した側にとってみれば、大きな損を抱え込むことになる。そんな事をするか?頭の古い財界トップ達は、買収されるのが嫌だから感情的に反発しているが、買収して価値が上がると判断したから敵対的に買収しているのであり、日本の風土に馴染むか馴染まないかなんて関係ないぞ。
「安易なM&Aは既存株主にとって企業価値を低下させることになりかねない」なんていう的はずれな批判をする財界トップがいるが、企業価値を低下させるようなことを買収側がするわけないでしょ?そんな事をすれば自分が損するんだから。

中には、まともな人もいて、「日ごろから企業価値を高めて買収されにくいようにするなど、企業として独立を保つための対策が必要になっている」と言っている人もいる。まさに、これが正論だ。買収されて価値が上がるということは、今の経営陣が能なしだという事である。買収する側は、今の経営陣を入れ替えて企業価値を高めることにより、利益を出そうとしているのだ。だから、今の経営陣にとっては、自分のクビが危なくなるから、買収に反対するのは当然であり、また悪いことでもなんでもないが、株主としては、何も現行の経営陣に同情する必要はない。能なし経営陣のせいで、企業価値が低くなっているからだ。
「買収した会社をバラバラに切り売りして儲けるだけ」との声もあるが、バラバラに切り売りして儲けることが出来るってことは、株主にとっては、その方が利益があるってことだ。もちろん、経営陣や従業員にとっては悲劇だが、社会的に見れば、今の形態よりも、バラバラにした方が良い、ってことだ。つまり、今の形態にしがみついている経営陣が能なしだって事だ。
株式の時価総額が純資産よりも少ないという悲しい会社が日本には大量に存在する。これなんか、バラバラにして切り売りした方が、はるかに利益になるっていう典型だ。純資産より時価総額が少ないってことは、すなわち経営陣が会社の資源を生かし切れていない能なしということだ。

自民党の森元首相に至っては、「疑問を感じる。カネさえあれば何でもいいんだ、力ずくでいいんだという考え方は、今の日本の教育の成果なのか」なんて批判しているが、ここまで的はずれな批判になると、バカバカしくてまともに論評する気もしない。全く資本主義を理解していない。まあ、この人は、もともと非常に頭が悪くて放言のオンパレードだった人だから仕方ないか。

はっきり言おう。敵対的な買収が嫌なら、上場を廃止すればいいことだ。
上場しておきながら「買収は駄目よ」なんてのは、全く矛盾した希望だ。気持ちは分かるが、そんなうまい話があるか?


ただし、今回の買い占めに対しては、その買い占め手法そのものに対しても批判が強い。ライブドアが、通常の市場売買ではなく、東京証券取引所の時間外取引を利用したからだ「企業買収には、株式公開買い付け(TOB)を使うべきだ」との声が強い。これは、もっともだ。
TOBの場合、非常に透明性が高く、敵対的買収に対抗して、買収されようとしている企業が自社株をTOBで買い集め、防衛するといったケースもありうる。1年ほど前に、米系投資ファンドから敵対的TOBをかけられた毛織物染色大手のソトーが、国内証券会社と協力して自社株にTOBを実施して防戦した例もある。
ところが、ライブドアは、今回、TOBを使わず、東証の時間外取引を活用した。時間外取引はもともと、機関投資家の投資目的の大量売買や、グループ内の再編などを想定した取引で、企業買収を想定したものではない。そのため、一般投資家への情報開示が不十分なまま、企業買収が行われた。
TOBは、株式の大量売買が企業経営を大きく左右するため、買い付け期間や株数、価格などを投資家に広く公表する。ところが、時間外取引には、こうした公表の義務はなく、一般投資家の知らない間に企業の経営にかかわるほどの大量の株式が売買されてしまう。「ライブドアは制度の抜け道を使った」との批判が出ており、これは正しい。実際に、金融庁はTOB制度の形骸化を防ぐため、時間外取引の規制強化に乗り出す方針だ。

ただし、これにしても、少なくとも、現行の規制上は、何ら問題は無い。違法でも何でもない。単なる法制度の不備だ。東京証券取引所は「情報の格差が株主の利益を損なう可能性がある」と問題視はしているが、「ライブドアが行った時間外取引は違法ではない」と明言している。批判は結構だが、それは自分たちが今まで規制の不備を野放しにしてきたせいだ。批判するなら自分を批判しなければならない。こういう自体が想定できなかったとすれば、あまりにも甘すぎると言えよう。

規制緩和により、今後は、外資系企業による日本企業買収が容易になっていくご時世なのに、今頃になって、これくらいの事で慌てふためいていて大丈夫なんかいな? って心配になってくる。


さらに、「放送各社は国から電波を割り当てられているが、電波は国民のものだ。その国民のものを総務省が認可をして電波を預けて放送をやっている。そういう会社があっという間に売買の対象になってしまってよいのか」と批判する人もいるが、それなら、そもそも、ラジオ会社やテレビ会社を上場するのがおかしいのではないか?買収させたくないのなら、非上場にすればいいじゃないの?上場させておきながら、買収は駄目よ、なんていう無茶苦茶な理屈は通用しないよ。

それに、フジテレビなんて、非常に低俗で低レベルな番組を垂れ流しているだけの放送局なんだから、どうでもいいけど。もう免許を取り上げたら?

(2005.2.18)



〜おしまい〜





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