頻発する無理心中

〜 子供を殺すな! 〜



このところ、無理心中と見られる大量殺人事件が相次いでいる。

まず1つ目は、岐阜県中津川市で介護老人保健施設の事務長が母親、長男、長女、長女の息子と娘の計5人を絞殺した事件だ。事務長は長女の夫も包丁で刺し殺そうとしたが、長女の夫は重傷を負いながらも逃げ延びた。事務長は5人を殺した後、自ら首を刺しており、無理心中と思われる。
この事件は、非常にミステリーだ。この家族は、近所には仲の良い家族と見られていた。近所の人たちは、事務長はきまじめだが、気さくな性格だと言っている。孫に対しても、目の中に入れても痛くないくらい可愛がっていたとのことだ。家族内に争いごとがあったとは考えられない。
しかも、事務長の犯行は、極めて計画的だ。彼は警察犬の訓練士もしており、犬を非常に可愛がっていたのだが、この犬たちを前もって林の中で殺している。家族を殺す前に、まず犬たちを殺したのだ。そして、犯行は妻が日帰り旅行に出掛ける日を選んで実行された。妻を駅まで送っていった後、犯行に及んだのだ。全てが計画的である。長女一家は自宅から約1キロ離れたところに住んでいるのだが、わざわざ「おばあちゃんが孫の顔を見たがっている」などと嘘を言って母子3人を連れ出しているのだ。単なる自殺や、同居している母親などを道連れにするだけでなく、なぜわざわざ離れて住んでいる娘家族まで殺したのか。しかも、そこまで徹底的に家族を殺しているのに、妻だけは殺そうとしていない。妻が留守の日を選んで犯行に及んでいるのだ。
一体、これは何があったんだろうか。非常に不可解で訳が分からない。事務長は最近、持病の神経性が急激に悪化し、食事に不自由するほどになっていたとのことだが、そなな理由で可愛い孫までわざわざ呼び出して殺すことはないでしょう。母親が痴呆だとかいう噂もあるが、それで可愛い孫を殺す理由にはならない。ミステリー作家にでも謎解きしてもらわないと気になって仕方ない。事務長は自殺を図って重体だったが、その後の治療で回復して退院したので、今後は警察の事情聴取が本格化するだろうから、動機の解明に期待したい。

もう1つの事件は、神奈川県厚木市で会社員の男が妻と三歳の長男、一歳の二男を絞殺し、自分も首つり自殺した事件だ。
この家族も、知人によると、とても仲が良さそうな家族だったとのことで、理由は不明だ。しかも、最初の事件と違い、犯人が自殺してしまっているので、謎が解明されるかどうか、難しいと思われる。遺書も見つかっていないし。
ただ、この事件は、最初の事件よりは想像がつかないこともない。あくまでも仮定の話ではあるが、仕事の事とか家計の事とか家族の病気の事とか、何かで悩んでしまい、自分の将来に絶望し、ひいては自分が面倒見ている家族の将来も悲観して無理心中してしまったのかもしれない。何らかの客観的な証拠さえ見つかれば、謎は解けるかもしれない。


しかし、謎が解けようが解けまいが、いずれの事件も、小さな子供を殺しているのが許せない。これは、絶対に許せない!
僕は無理心中が一概にいけないとは言わない。ただの「心中」じゃなくて「無理」が付いている限り、無理矢理なんだから、良くないと言えば良くないのだけど、やむを得ない無理心中もあるだろう。例えば痴呆老人となった親を抱えて介護に疲れ果て、親を道連れに無理心中するなんていう場合は、とっても同情しちゃう。すごく共感しちゃう。或いは、配偶者や子供が事故なんかで植物人間同然になっちゃって介護がすごく大変だとか。

しかし、今回のような事件は、あくまでも自分個人の悩みで家族を勝手に一方的に道連れにしている殺人。このような無理心中を「無理心中」という言葉で表現していたら、なんとなく「やむを得ない悲劇」みたいな印象になってしまう。そうじゃなくて、こういうケースは、あくまでも大量殺人事件なんだから、そう呼んで欲しい。無理心中じゃなくて大量殺人者だ。だって、そうでしょ?何の罪も無い小さい子供達を一方的に勝手に殺しているんだよ。これが極悪非道な殺人でなくて何なんだ!

(2005.3.17)



〜おしまい〜





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