大リーグは甘くない

〜 勘違いも甚だしい 〜



元近鉄バッファローズの中村紀洋内野手が米大リーグのドジャースからマイナー行きを通告され、念願の開幕メジャーはならなかった。
これに対して中村は即答せず、他球団への移籍も含め、検討するらしい。中村はマイナー行き通告に怒り狂っており「成績を残してきたつもり。どれだけ打てば、守ればいいんや。大リーグは実力の世界ではないのか。明らかに他の選手より自分が勝っている。納得がいかない。代理人と相談したい。日本復帰もオファーがあれば考えたい」と話している。

中村は元々メジャー契約ではなく、あくまでもドジャースとのマイナー契約だった。そして3月から招待選手としてキャンプに参加していた身分だ。それでも中村は実績を残す自信があったようだし、事実、そこそこの実績を残している。オープン戦では20試合に出場し、打率2割9分5厘、チームトップタイの3本塁打、8打点だった。
球団側は中村が残れなかった理由として「開幕25人枠の中で投手を12人と優先した」ことと「控えとしてたまに出場するよりもマイナーで常時出場して投手に適応してほしい」なんて事を上げている。しかし、中村にとっては、そなな取って付けたような理由はどうでもよく、オープン戦で打率が1割台のサインツ選手に負けたことが納得いかないようだ。

ただ、中村の怒りも分かるが、これは最初から仕方ない話だった。中村が残れなかったのは契約のせいだ。中村と同じように今季加入したバレンティンは昨季ホワイトソックスで30本塁打した実績があり、ド軍はレギュラー起用を保証している。また、中村の怒りの矛先であり、最後まで控えの枠を争ったサインツ選手は、確かに打率0.139と不振だったが、彼との契約にはマイナーに落とせるオプションが無いのである。だからサインツ選手はメジャーに残すか解雇するかの選択肢か無いのである。一方、中村はそもそもがマイナー契約なので、サインツを解雇してまで中村をメジャーに引き上げる必要がないのだ。そもそもは、全て、中村のマイナー契約が原因なのだ。

それじゃあ、なぜ中村はマイナー契約をしたのか
これには中村の過去の汚点がある。彼は2年前にニューヨーク・メッツに加入合意しておきながら、ドタキャンした悪い実績があるのだ。あの時、中村は、総額約700万ドル(約8億4000万円)の2年契約という好条件だったのに、土壇場で寝返って近鉄に戻ったのだ。ピークを過ぎて衰えが見え始めた中村に、あんな好条件を出すなんてメッツは気が狂ったのかと思ったのだが、(もちろん、それと同レベルの給料を払う近鉄も愚の骨頂だけど)、大リーグの相場から言えば特に好条件でもなかったのだろうなあ。でも中村としては千載一遇のビッグチャンスだったのに、土壇場で裏切るなんて、結局、最初かっら大リーグに行く気なんて無かったんじゃないか、なんて疑われた。あの事件について中村は「最終合意の前にメッツがマスコミにリークした」なんていう訳の分からない理由を述べていたが、本当に理由は不明だ。結局、最後の最後になって大リーグが怖かったのではないか、なんて思われる。

それが今回は近鉄球団が無くなってしまったので、踏ん切りがついて大リーグへ行ったんだろうけど、悪い前科があったため、今回は好条件を提示してくれる球団は無かった。もともと力も衰え始めているしね。それでも後が無い中村はドジャーズとのマイナー契約に甘んじた。オープン戦で実績を残してメジャーに上がれると考えていたのだろう。
しかし、マイナー契約からメジャーに上がるには、オープン戦で大きな実績を残さなければならない野茂のように過去に偉大な実績がある選手なら、オープン戦の成績がそこそこでもメジャーに上がれるだろうけど、アメリカで実績がゼロの中村がメジャーに上がるには、オープン戦で強烈な成績を残さなければならないだろう。出場機会が少ない中での打率2割9分5厘、3本塁打、8打点は悪くないが、居なければならない必要不可欠な選手とは言えないよなあ。

以上の事情を考えれば、中村の考えの甘さが際だつ。イチローや松井のような超一流選手なら通用するが、中村レベルでは大リーグがホイホイ言って迎えてくれるほど甘くはない。それなのに、ちょっと考えが甘すぎる。これは中村に限った事ではない。孤立無援でアメリカに渡り圧倒的な実績に新境地を切り開いた偉大な野茂のあと、「それなら俺も」って安易な考えで大リーグに行く選手が後を絶たないが、行くのはいいが、甘い考えは捨ててもらいたい。これじゃあ、日本の受験競争に失敗して行くところがなくなり、英語の勉強に行くと称してアメリカの訳の分からない無名学校に留学し、結局、日本人同士つるむだけで遊びほうけて帰ってくるバカな若者達と変わらないよ。

中村の今後の選択肢は、マイナーに落ちて3Aラスベガスでプレーするか、大リーグの他球団へ移籍するか、日本球界に復帰するか、だ。ただし、デビルレイズとマイナー契約した野茂は開幕ロースターから漏れた場合にFAになる条項を盛り込んでいたが、中村の契約にはそなな強気な条件は無く、中村の保有権はあくまでもド軍にあるため、中村が自由契約を主張しても球団が認めない限りは3Aでプレーすることになる。もしドジャーズが中村との契約を解除すれば、日本球界復帰の道も開ける。しかし、そうなれば「今回の大リーグ挑戦も、またまた一体何だったの?」って事になるよなあ。

(2005.4.4)



〜おしまい〜





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