郵政民営化

〜 怪しい反対勢力 〜



相も変わらず郵政民営化問題が国会を賑わせている。つい先日も、郵政民営化に非協力的な総務相の高級官僚が更迭された。なぜか小泉首相は郵政民営化に命を賭けており、極めて強硬な姿勢だ。世の中には、経済問題から外交問題まで、もっと重大な懸案事項が山ほどあるのに、なんでこななどうでもいいような問題に命を賭けるのか、小泉の発想は理解しにくい。一方、自民党の大半の議員は基本的には反対だ。ただし、小泉政権に協力した方がメリットが大きいと判断した議員達が賛成しているので、勢力的には拮抗しているようにも見える。

僕の基本的立場を言えば、実は、郵政民営化には反対だ
なぜかと言えば、郵政事業は極めて信頼性が要求される非常に重要な事業であり、民間企業には任せられないと思うからだ。

通信事業も信頼性が要求される重要な事業だけど、しかし、通信事業の場合、何らかの故障でストップしても、取り返しがつかない訳ではない。なぜなら、故障でストップした場合、それが即座に分かるからだ。故障だと分かれば、他の代替手段を取れる。電話が通じなくなれば、他の手段で伝えようとするだろうし、インターネットが使えなくなることなんて、しょっちゅうだ。また、通信事業は技術革新が非常に早く、国営企業が独占していたのでは技術方式があっというまに陳腐化してしまう。国営企業ってのは経営の安定が第一目標なので、リスクを伴う新しい技術の導入には消極的で、わざわざリスクを取って新しい投資をするわけがない。

しかし郵政事業には技術革新なんてあり得ない。昔に比べれば、地域によっては1日や2日は配達が早くなったかもしれないが、1日や2日遅くなっても、死活問題ではない。なぜなら、今は、本当に早く知りたい情報は電話やインターネットで入手するからだ。じゃあ郵便事業は何のために使うのか、と言えば、正式な書面の送付だ。正式な契約書や通知書は、インターネットなんかじゃなくて正式な書面を送付しなければならない場合が圧倒的に多い。内容証明の郵便なんて、後々の裁判に大きく影響してくる重要書類だ。それだけじゃない。クレジットカードやキャッシュカードだって郵便で送られてくるこんな重要な事業をクロネコヤマトに任せて大丈夫なのか?事実、最近もクロネコヤマトの郵便に未配達が大量に見つかったりしている。クロネコヤマトに任せる郵便なんて重要なものじゃない、のならいいけど、そんな事はなくて、最近は、クロネコヤマトを使って結構重要な書類が届いたりする。出す方は、もっと気を遣って欲しいなあ。行方不明になった場合、出した方の責任も追及したいぞ。
しかも、郵政事業は全国一律に同一料金でサービスを提供するユニバーサルサービス事業だ。通信も同じかと言えば、決してそうではなく、携帯電話会社なんて通じない場所も多いし、地域によって会社が異なり料金も異なる。郵政事業では、そんな事は許されない、と僕は考える。本当は通信や電力だって、全国一律の同一料金サービスにすべきだと思うのだけど、何でもかんでも自由化の流れにあって、それは不可能だろう。しかし郵政事業はユニバーサルサービスを守るべきだと思う。

このような重要な事業を民営化するメリットはあるのか?はっきり言って、ない。と思う。もちろん、競争原理の導入によって料金は多少は安くなるかもしれない。しかし、料金が多少安くなることで失う信頼性の重さを考えると、メリットとは言えない。小泉首相が郵政事業の民営化にこだわっているのは、何も郵政事業そのものを民営化したというより、郵便貯金事業をなんとかしたい、って事だろう。郵便貯金が諸悪の根元だと思っているのだろう。これについては僕も賛成だ。一体なぜ、こんな巨大な国営銀行が存在するのか。存在する必要があるのか。理由は簡単で、国の借金を容易にするためだ。国の絶対的な信頼感を背景に庶民からかき集めた貯金を、国の膨大な赤字公共事業につぎ込むためだ。だから、この悪循環の根元のような集金システムは何とかしなければならない。なので郵便貯金の解体あるいは民営化は進めるべきだろう。

しかし、それと郵政事業そのものの民営化は切り離すべきではないのか。郵便貯金はなんとかしても、郵政事業そのものは国営で続けて欲しい。


と基本的には考えるのだが、郵政民営化に反対する議員達の大合唱を聞いていると、何やら暗い気持ちになる。国会議員は、与党も野党も揃って大反対の合唱だ。

野党の一部議員は支持基盤である組合の意向で反対しているのだろう。組合が反対するのは、分かる。彼らは民営化によって勤務管理が厳しくなるのを恐れているのだろう。旧国鉄労組が民営化に反対したのと同じだ。彼らは利用者や国民の事を考えているのではなく、これまで楽だった仕事が厳しくなるのを恐れているのだ。なので、そんな意見に同調する訳にはいかない。
また、自民党の議員達も同じようなものだ。彼らは選挙の時に特定郵便局長にお世話になっている。特定郵便局長ってのは、今どき珍しい世襲制の官職だ。これが自民党の集票マシンになっている。特定郵便局長は当然の事ながら、民営化には反対だ。だから自民党の議員も反対している。だから、これも同調する訳にはいかない。
しかも、それだけではない。郵便貯金でかき集めた金がつぎ込まれる公共事業は、利権と不正の温床だ。郵便貯金のシステムが壊されると、これまでのように甘い汁を吸えなくなる人間がいっぱいいて、彼らが国会議員達に反対を働きかけている構図は容易に想像が付く。

このような現実の事情を考えると、郵政民営化もやむを得ないかなあ、なんて思ってくる。もし国会議員達が反対してないのなら、或いは、反対しても、その理由がユニバーサルサービスの維持などであれば、僕も反対したい。しかし、国会議員達が必死になって反対してるのは郵政事業の信頼性の維持のためなんかじゃない。単に、選挙と利権の事しか考えていない。これでは、一緒になって反対する訳にはいかない。こんな理由で反対している連中と一緒になって反対したのでは、僕まで見識が疑われてしまう。
ここは、むしろ、あまのじゃく的に賛成したくなっちゃうな。

(2005.5.20)



〜おしまい〜





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