大渇水

〜 理解に苦しむ徳島県の方針 〜



今年は四国は久々の大渇水だ。貴重な水瓶である早明浦ダムの水が、ついに底をついてしまった

早明浦ダムは高知県にあるんだけど、ダムのある吉野川は北へ折れ曲がって徳島県に流れていくため、早明浦ダムの水は高知には行ってなくて、徳島県と香川県が利用している。これに関しては、なんとなく高知県に心苦しい。雨が極端に少ない瀬戸内沿岸に比べて高知県は雨が非常に多く、大きな川も多いとは言え、高知県も渇水と縁が無いわけではなく、時々水不足になるからだ。

ところで、香川県は昔から水不足が当たり前だったので、異常なほど溜め池が発達している。ものすごい数の池が県内くまなく存在する。しかし、昔ならいざ知らず、工場なんかも出来てくると、それだけではどうしても足りなくて、それで高知の山奥に早明浦ダムを作って、延々と水を引いてきたのだ。今は県内で必要な水の半分を早明浦ダムに依存している。なので、早明浦ダムの水が無くなると、あとは溜め池の水だけが頼りだ。とは言え、四国で一番雨が多い高知の山奥にある早明浦ダムの水が無くなるってことは、四国に雨が全然降ってないってことなので、溜め池の水だって少なくなっている。非常に危機的な状況だ。

昔の話をしだすと年寄りになっちゃうけど、僕が子どもの頃は、香川県では渇水は日常的な風景だった。溜め池だけに頼っていたからだ。小さい頃、近所に来た給水車にバケツや洗面器を持って水をもらいにいった記憶が懐かしい。(ポリタンクなんて存在しなかったしね)
と同時に、洪水ってほどではないけど、床下浸水なんてのも日常的だった。雨が少なくて困っている割には、台風なんかが来ると、とたんに水が溢れちゃうのよね。だから、毎年、夏になると、渇水と浸水が日常的にやってきた。
ただし、トイレも水洗じゃないし、水ったって炊事洗濯に使うくらいなので、大した量の水が必要な訳ではない。お風呂屋さんは井戸水を使っていたので大丈夫だったし。また、床下浸水ったって、ほとんど家具も無いので、畳を上げて乾かせば、どうってことない。
(幹事長)「なあ、そうだったよなあ?」
(石材店)「幹事長と私では世代が違います!」


その後、早明浦ダムが出来て延々と水を引いてくるようになって、渇水の頻度は大幅に減った。ところが、その早明浦ダムの貯水量がゼロになったのだ。早明浦ダムゼロになった時点で、高松市を始め多くの市町で夜間断水に突入する予定だった

ところーがっ!
まだ水は残っていたのだ発電用に別に分けていた水だ。「別に分けていた」って言っても、何も物理的に仕切っていた訳ではなく、計算上の話だ。すなわち、貯水量ゼロと言っても、それは上水用なんかの水がゼロになったという意味であり、実はまだダムには少しだけ水が残っているのだ。この発電用に残していた水を上水道用に転用するのは、あくまでも緊急時の人道的措置であり、11年前の大渇水以来、2度目のことである。電力会社としては、せっかくの発電用エネルギー資源をタダで寄付するんだから、よほどの事態でない限りウンとは言わんわなあ。
ただし、この発電用水は大した量ではない。早明浦ダムの現状をテレビで見ると、底の方に僅かに残っているだけだ。量にして僅か1000万トン程度だ。ダムの総容量3億トンの1/30だ。普段なら毎日550万トン、現在の第4次取水制限段階でも毎日400万トンの水を取っているので、こんなんじゃあ僅か2〜3日しか持たないぞ、と思った。

ところーがっ!!
このわずか1000万トン程度の水のおかげで、なんと1ヵ月も持つのだ。このカラクリが非常に興味深い

普段、早明浦ダムから取る水は日量557万トンだが、このうち香川県にくるのは僅か13%の73万トンだけだ。残り87%の484万トンは徳島県が利用している。早明浦ダムが出来る前から徳島県は自然に流れてくる川の水を使っていたので、これは、まあ仕方ない。ただし、ダムが出来る前に流れていた水は平均104万トンなので、徳島県はちょっと取りすぎだと思う。まあ、しかし、このあたりのいきさつは昔の話なので、今さら言っても仕方ない。

今、言いたいのは、取水制限する水の量だ。通常、毎日557万トンの水を使っている早明浦ダムの水だが、渇水への対応として取水制限を実施してきた一番厳しい第4次取水制限では、香川県が取水する水は75%もカットされている。ところがなんと、徳島県が取水する水は、たった20%程度のカットなのだ。この理由も、「徳島県は早明浦ダムが出来る前から川の水を使っていたから」というものだ。ダムが出来る以前の水に比べ、現在、徳島県がダムから取っている水は4〜5倍も多いのだから、非常におかしな話だ。このために、いくら第4次取水制限で75%カットなんて言っても、それはあくまでも全体の僅か13%しかない香川用水が75%カットになっているだけで、残り87%の徳島用水は、あまり減らすことなく使い放題だったのだ。そして、そのせいで、急激に水は無くなってきた。

そしーて!
ついにダムの水がゼロになって発電用水を緊急に使わせてもらう段階になって、ようやく香川用水と徳島用水が、約半分ずつとなったのだ。日量にして16万トン程度ずつだ。香川用水は第4次取水制限で73万トンが既に18万トンにまで減らされていたから、これがさらに16万トンになっても、それほど大きな違いはない。しかし、相変わらず日量385万トンもの水を使い放題だった徳島県としては、これが一気に16万トンになるんだから、ものすごい激減ぶりだ

はっきり言おう!徳島県は自分で自分の首を絞めていたのだ。香川県が75%カットしている時に、同じように75%カットするか、せめて50%カットくらいしておけば、まだまだ水はいっぱいあったはずだ。そうすれば自分とこが使う水だって、ずっと長持ちしたはずだ。それなのに僅か20%カットでバンバン使っていたがために、あっさりと水が無くなってしまい、激減させられたわけだ

こんな事は誰が考えても、幼稚園児が考えても分かることであり、事実、これまで四国地方整備局や香川県は徳島県に何度も要請してきた。ところが、徳島県知事は、頑なに拒否してきた。これは実は11年前の大渇水の時も同じだった。あの時も香川県が困って徳島県に「もう少し水を節約してくれないか」とお願いしたが、徳島県知事は頑なに拒否して水をバンバン使い続けた。当時とは徳島県知事は代わっていて、今の知事は若くて頭の柔らかい人のはずなんだけど、なぜか態度は全く同じだ。
11年前は、しばらくして台風が大雨をもたらしてくれて、結局、ダムの水はゼロにはならなかったが、今年は台風がきそうにない。それでも最後まで頑なに拒否し続ける徳島県の態度って、ちょっと理性的とは思えない

そして、笑わせるのが、その後の徳島県知事の行動だ。上水用の水がゼロになったとたん、今までいくら水の節約をお願いされても無視してきた四国地方整備局に対し、立場が逆転してしまい、「発電用水を緊急用に使わせて欲しい」と頭を下げに行ったのだ。当然、四国地方整備局からは、かなり皮肉を言われたらしい。本音は「今まで節約せんかったお前んとこが悪い。なんで今さらお前んとこに水を分けてやらんといかんのじゃ!」ってところだろうけど、さすがに小泉首相じゃないから、ゼロにはせずに、香川用水と同じだけ水を回すことになったのだ。

確かに、水の争いってのは昔から熾烈だったようだ。農民に取っては死活問題だったから。しかし、節約すれば自分自身のためにもなるんだから、もうちょっと理性的に考えることはできないのかなあ

(2005.8.19)



〜おしまい〜





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