小泉新内閣

〜 ちょっと不安 〜



小泉内閣の新メンバーが決まった近年、これほど面白いというか関心を集めた組閣も珍しい
小泉首相以前の組閣人事は、派閥の均衡とか当選回数とかが重視され、政策遂行能力なんてものは考慮されなかった。ま、政府の政策自体が官僚の言いなりであり、特に何かやりたいこともなかったから、それで事が足りていたのだけど。
小泉首相になってからは、そうではなくて、首相個人の目標達成のために派閥を無視して一本釣りで人事を行い、また女性や民間人の登用も目立ち、これまでも面白かった。しかし、今回は、小泉首相自らが最後の人事と位置付け、自分の方針である政治改革を強力に推進できる陣容としたことで、どんなメンバーになるのか、とても興味深かった。

結果的には、女性が少ないとか民間人がいないとか、一見、あまり面白くないようにも思えるが、それでも、まあまあといった線か。
ポスト小泉を狙うメンバーは予想通り入った。福田元官房長官は入らなかったけど、もともと福田氏は70歳近い高齢であり、今さらポスト小泉っていう世代ではないわなあ。
そういう意味では、麻生外務相だって65歳で小泉首相より年上なんだから、本当は今さらポスト小泉でもないと思うんだけど。
実は、一見、まだ若そうな谷垣財務相だって60歳。40歳代前半の前原民主党代表と比べると、あまりにも年寄り過ぎる。なんとか若さで対抗できるとしたら51歳の安倍幹事長とか中川農水相とか竹中平蔵とかだろうなあ。内閣の平均年齢が61歳では、いかんよなあ。こんな老人の寄り合い所帯は、世界中探しても日本と中国くらいだろうなあ。


それでもまあ、結論から言えば、無難な人事だったような気はする
ただ、ちょっと不安な点もある。今回の内閣は小泉首相の推進する行財政改革を強力に推進することが使命のはずだ。それなのに、改革の足を引っ張りそうな発言をしている人が多いのだ

例えば、二階経済産業相は「すべて諮問会議が取り仕切る姿勢はいかがなものか」なんて言っている。言うまでもなく、小泉内閣で行財政改革を強力に推進してきたのは経済財政諮問会議だ。これまで自民党の政策を牛耳ってきた族議員の影響を排除して改革を推進するために小泉首相が頼りにしてきた会議だ。小泉首相が議長を務めるほか、官房長官、総務相、財務相、経済産業相ら少数の大臣と、民間企業トップや大学教授らで構成され、官僚の抵抗を極力排除して議論を進めてきた。官僚達にとっては目の上のたんこぶ、なんて生やさしいものではなく、閻魔様のような存在だ。それに対して、さっそく諮問会議を牽制する発言をする経済産業相は、ちょっとどうかと思うな。

実は、これは谷垣財務相も同じようなものだ。彼も基本スタンスは極めて官僚寄りだ。つい先日も、中川前経済産業相と共に、小泉首相から「役人の言いなりになるな」と、大声で叱責されたばかりだ。なので、谷垣財務相の留任ってのは意外だった。ちょっと、どうかなあ。

また、財務相と一緒になって行財政改革を強力に推進しなければならない与謝野経済財政担当相も、財務省よりの発言が気になる。小泉首相が「1つに統合すべきだ」と言っている8つの政府系金融機関の改革についても、「1つは難しい。3つぐらいじゃないか」なんて言っている。彼は自民党政調会長として郵政民営化法成立に奔走したから、そのご褒美としてのポストかもしれないけど、諮問会議に頭が上がらなかった財務省が復権すれば改革は進まないぞ。

国土交通相ではないけれど、沓掛国家公安防災担当相も元は建設省の道路局長で、道路公団民営化に徹底的に反対していた。小坂文部科学相も、義務教育の権限を地方に移譲するという小泉首相の方針に、さっそく腰が引けた発言をしている。日本国民を白痴化する愚弄政策である「ゆとり教育」に対しても擁護するような発言で、基本的に官僚寄りのスタンスだ。前任の中山氏が文部官僚をビシビシ叩きのめしていたのに比べ、期待薄だよなあ。

こう見ると、官僚の影響を排除してバッサバッサと改革を進められるのは総務相に横滑りした竹中平蔵くらいか。
ほんとに改革路線は大丈夫かなあ。先の総選挙で小泉政権が圧勝したのは、決して郵政民営化だけではなく、郵政民営化に象徴される行財政改革そのものなんだから、ここで手を抜くようでは次回の選挙で大敗するぞ。ま、それはそれでも、いいんですけど。


それはそれでもいいんだけど、絶対に良くないのを最後に上げると、杉浦法務相だ。なんとまあ、初登庁後の最初の記者会見で、いきなり「死刑執行命令書に署名しない」なんて信じられない血迷った妄言を口走ったのだ。裁判所が出した死刑執行命令書を無視するなんて、法治国家として許されるのか?法治国家の法務相が自ら法律を破る事が許されるのか?こんな法律無視のバカを法務大臣にしていいのか?全くもう信じられない。
このバカ、署名しない理由について「私の心の問題、宗教観、哲学の問題だ」なんてほざいているが、そんな個人的な理由で法務相が法律を破っていいのか?僕が大嫌いな亀井静香死刑廃止議連会長は自民党から追放されて影響力が激減したのでホッとしていたのに、こんな勘違いバカ野郎が法務相だなんて、ひどすぎる。
法務相と言えば、前任の南野さんが法律に関する知識が皆無で、あまりにもトンチンカンな発言で可哀想なくらい惨めだったので、もっとマシな人にせんといかんわなあとは思っていたが、こんなバカ野郎がなるくらいだったら南野さんの方がマシだったぞ。彼女は法にのっとってちゃんと死刑を執行し、「人の命を絶つ極めて重大な刑罰で、法に従い慎重に対処した。法治国家として、確定判決の執行を厳正に行わねばならないことは言うまでもない」と述べている。ま、官僚が用意した文章だろうけど、やる事はやらんといかんわな。

小泉首相は死刑なんか関心が無いだろうから、どうでもいいのかもしれないが、こんなバカ野郎は罷免せんといかんぞ。

(2005.10.31)



〜おしまい〜





独り言のメニューへ