東京証券取引所システムダウン

〜 いつ起きても不思議じゃない 〜



東京証券取引所で11月1日、株式売買の注文を取り次ぐコンピューター・システムに障害が発生し、午前9時の取引開始から全銘柄の取引が停止した。僕は毎日、朝9時の取引開始から常に株価を監視しているので、最初から異変には気づいていた。
トラブルはなんとか午後には収まり、午後1時30分にはすべての取引が再開されたが、半日とはいえ取引が全面的に停止した影響は極めて大きい。不幸中の幸いだったのは、たまたま株価が大幅上昇した日だったということか。もしこれが下げ局面だったら、早く売りたいのに売れなくて大損した人が出て、ただじゃあ済まないだろうなあ。

もちろん、上げ局面でも、早く買いたいのに買えなかった人からの苦情は殺到するので、ただで済むはずはない。このトラブルにも拘わらず、取引が始まった後も継続して株価は上昇していったので、まだマシだったとは言えるが、証券会社にとっては、上げ局面だろうが下げ局面だろうが相場が大きく動いている時は注文が殺到するので、半日も取り引きできなかった影響は大きい。

東証のトラブルのおかげで、近年、存在感の低落が著しい大阪証券取引所に注文が殺到した。東証に上場している企業のかなりの部分は大証にも上場しているからだ。これで大証も久々の大商いとなり、ホクホクかなと思ったら、そうでもないらしい。出来高が10月の1日当たり平均高の1.5倍まで膨らんだが、大証のシステムも余裕があるわけではなく、東証のシステム復帰が遅れていれば、大証も連鎖的にトラブルに陥っていた可能性もあるとのことだ。
さらに、他の地方取引所に至っては、札幌、福岡両証券取引所は東証のシステムの一部を利用しているため、東証のシステムダウンに伴い同様に取引を停止した。東証への全面的な依存が裏目に出た訳だ。東証の代替取引所としての役割も果たせないとなれば、存在意義自体が疑問視されるよなあ。

とにかく、今や東証と言えば日本の証券市場そのものなので、今回の大規模なシステム障害は、日本の証券市場に対する国内外の投資家の信頼を揺るがす事態に発展しかねない。東証は1980年代には世界最大の市場規模を誇ったが、バブル崩壊後、世界の株式市場間競争で地盤沈下が進み、時価総額はニューヨーク市場の3分の1、年間売買代金ではロンドン市場にも抜かれて世界3位に沈んでいる。今年は景気回復で海外投資家が回帰し、株価も上昇し始め、出来高も膨らみ、存在感を取り戻しつつあったのに、その矢先に、市場運営の根幹である売買システムの不備が露呈したことで、日本買いの動きに冷水を浴びせたと言えよう。
ここ数年、中国やインドなどアジアの新興市場も成長が著しく、日本を飛び越えて欧米からの投資がアジア諸国に流れると懸念する声も強まっており、東証にとっては市場の規模拡大と機能拡充は大きな課題だったのだ。

ところが皮肉なことに、今回のトラブルは、10月にシステム能力を増強した際におきた売買プログラムの欠陥が原因らしい。株式売買においては、最近、インターネット取引が急増し、いくらシステム増強してもすぐに足りなくなり、いたちごっこで増強を重ねてきたのだが、10月のシステム増強も数ヶ月前倒しで慌てて実施したものだ。プログラムを作成したのは富士通で、東証は富士通に損害賠償請求する可能性もある。もちろん、東証としても責任を免れる訳はなく、社長や役員の進退問題に及ぶ可能性もある。


しかし、今回のトラブルに関して感想を述べれば、これくらいのトラブルは、いつ起きても不思議じゃないって事です。最近の金融取引は高度なシステム化が進み、極端に膨大で複雑なシステムになっている。その巨大なシステムを作っているのは人間であり、大勢の人間が寄ってたかって人海戦術で作っている。優秀な人間ばかりじゃなく、ちょっと変な奴とかオタクとかオカマとか色んな人が関わっている。と言うのは嘘だけど、いや嘘でもないけど、仮に優秀な人間ばかりで作ったとしても、絶対に間違いが発生しない訳がない。そのことはシステム開発側も重々承知しており、何重にもチェックしているが、人間のやることだし、絶対にミスはゼロにはできない。しかも新規に作るのなら間違いも少ないだろうが、東証のシステム増強は、古い温泉旅館が修学旅行生に対応するために後から後から増築して迷路になっているように、つぎはぎだらけのシステムだ。これで間違いが起きない訳がない。

これは金融の世界だけの話ではない。最近、あらゆるものがシステム化、コンピューター化され過ぎじゃないかと憂慮している。例えば自動車にしても、電子制御の部分が多すぎる。日本の自動車メーカーの品質管理は素晴らしいとはいえ、それでもいつ予想しなかったトラブルが発生するか気が気じゃない。しかも電子制御になっていると自分では直せない。僕が長らくパワーウィンドを拒否していたのは、そういう理由だ。さすがに最近はパワーウィンドでない車も絶滅寸前なので妥協したけど。もちろんミニバンの電動スライドドアなんかは断固拒否している。オートバイも、以前、乗っていたものは自分で結構、修理できていたが、今のは手に負えなくて困ってしまう。バイク屋へ持って行けって?動かないんだから持って行けないでしょ!

こんな事を言ってると、最新のシステムが理解できない使いこなせないオジンのぼやきのように聞こえるかもしれないが、はっきり言って、その辺の若い奴らよりは僕はコンピューターに詳しい。詳しいからこそ絶対的な信頼性はおかない。ハード面でも信頼できないし、ソフト面ではさらに信頼できない。信頼できなくても、コンピューターは大好きなので徹底的に使っている。ただし、常に信頼できないってことを念頭に置いて使っている。いつ裏切られても動揺しない姿勢が大切だ。中身も分からない癖に全面的な信頼を置いていると、とんでもないことになる。高度なシステムは高度になればなるほど、絶対にシステムダウンするって事を忘れないようにしよう。

(2005.11.2)



〜おしまい〜





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