フランスの暴動

〜 移民の受け入れは慎重に 〜



フランスで激しく暴動が起きている。結構、驚き。
アメリカなんかでは、災害とかあると、すぐに黒人を中心とする低所得者層が商店を襲撃して商品を略奪したりするのが日常茶飯事だけど、これは単なる泥棒さんであり、政治的な意識は無い。政治的な意図を持った暴動なんて発展途上国の話であり、フランスで大々的に起きるなんて、なかなか想像しがたい事態だ。先進国でも最近は、サミットだとかWTOの開催に反対して大々的なデモが行われ、一部が暴徒化して騒いだりしているが、今回のフランスの暴動は、全国的に無差別的に放火が行われ、何千台という車が燃やされているので、やはり性格的にはかなり異なり、だいぶ悪質というか嫌な感じだ。

と思ったんだけど、なんと、今やフランスでは車への放火は珍しくないらしい。今年に入ってだけでも、なんと今までに既に28000台の車が燃やされたんだって!ほんとにびっくり。毎日平均全国で100台もの車が燃やされているんだって。すごいなあ。それから警察と暴徒との衝突も今年に入って既に3800件も起きているらしい。これだって毎日10件以上も起きているわけであり、ミニ暴動は日常茶飯事と化しているらしい。日本なら1件でもあれば大騒ぎだろうと思うけど、いつのまにフランスの治安って、こんなに悪くなっていたんだろう。

このような暴動の背景は、言うまでもなく移民問題だ。暴徒の多くはアラブ系やアフリカ系の若者だ。フランスにはアラブ系やアフリカ系の移民が多い。移民の定義は難しいが、外国生まれだけどフランス国籍を取得した人、外国生まれでフランス国籍は持っていない人、親は外国人だったが本人はフランス生まれでフランス国籍を生まれながらに持っている人、さらに不法入国している人など、合わせると移民は6千万人のフランス人口の1割以上を占めている。この中にはポルトガルやイタリアなどヨーロッパ内からの移民も含まれているが、多くは旧植民地の北アフリカ諸国(アルジェリア、モロッコ、チュニジア)などからの移民だ。
フランスに移民が多いのは、かつて大量の移民を積極的に受け入れていたからだ。第二次世界大戦後の経済成長期には安価な労働力が必要だったため、大量の移民を集め、炭坑や自動車工場などの労働者として活用した。その後、経済成長が緩やかになってくると、彼らの必要性は低下し、逆に社会の中の異質な存在として認識され始め、本国へ帰国させる政策も採られたが、当然ながら彼らは貧しい母国へは帰らなかった。そして新たな移民は減少したものの、移民の子供達が増えているため、移民の総数は増加の一途だ。

移民の中でも、ヨーロッパ内からの移民と違って、アフリカ系やアラブ系の移民はフランス社会に溶け込むのが難しく、大きな問題となっている。彼らはいつまで経ってもフランス社会のアウトサイダーのままだ。肌の色が違う、宗教が違う、生活文化が違う、と言った面だけでなく、社会の底辺から抜け出せないのが重要なポイントだ。アフリカ系の人は、どこの国へ移民しても、スポーツ選手を例外として、大半の人はいつまで経っても社会の底辺から抜け出せない。同じように世界各国に移民している東アジア系の人たち(中国系、日系、韓国系など)は、どこへ行っても勤勉に働き、子供には高等教育を受けさせ、いつの間にか社会の中層、上層へと上っていく。彼らも肌の色は違うし宗教も違うし生活文化も違い、明らかな差別を受けながらも、決して社会的摩擦を引き起こす存在ではない。だから肌の色や宗教や生活文化の違いだけが暴動の原因ではない。アフリカ系などの移民がいつまで経っても社会の摩擦を引き起こすアウトサイダーなのは、あんまり勤勉じゃないからではなかろうか。なんて言うと怒られるかな。勤勉じゃないってのは必ずしも悪いことではなく、文化の問題だと思うけど。南の国で、みんながのんびり暮らしていければ、それはそれで非常に暮らしやすい天国のような社会だ。ただ、そのライフスタイルで他の国へ行けば、いつまで経っても浮かび上がれないかもしれない。

暴動の原因として、イスラム教徒の影を指摘する向きも多い。でも、たぶん、それは順序が逆なんだろうなあ。イスラム教徒は怖いけど、怖いのは原理主義者であり、大半のイスラム教徒は元から悪い人ではない。経済的、あるいは社会的理由で閉塞感がつのった若者がイスラム教によりどころを求め、その多くがイスラム原理主義に走っているのであり、イスラム教が暴動のそもそもの理由ではないだろう。

このような移民の問題はフランスに限らず、ヨーロッパの多くの国で共通する。ちょっと前にはイギリスでも移民の暴動があった。これもアフリカ系やアラブ系の若者が中心だった。イギリスでも第2次大戦後の復興期に、人手不足を解消するため旧植民地から移民を積極的に受け入れた。それが今では大きな問題につながっている。

このような移民の問題は、不思議でも何でもなく、誰でも容易に想像が付く。日本にイラン人や中国人がどんどん増えていったら、何か問題が起きるって誰でも容易に想像が付く。(中国人は世界各地へ移民して勤勉に働き社会的地位を向上させてきたが、日本では外見が同じなだけに、悪いことばかりする奴らも多い)
そんな事も考えずに過去に移民を積極的に受け入れたヨーロッパ諸国の人々は、ちょっと考えが甘すぎたんじゃないかって思うが、ま、それは自業自得なので、どうでもいいことだ。ちょっと腹立つのは、自分たちだって移民問題で苦労しているのに、日本の移民政策に文句を付ける事だ。

日本はこれまで、移民に対して極めて慎重に対応してきた。日本はヨーロッパ以上に少子化が進み、労働力不足が一部で深刻になってきている。今どき、肉体労働で仕事がきつい割には収入の低い仕事に就く日本人の若者は激減しており、アジア諸国などからの外国人労働者なしではやっていけない産業も多い。産業立国の日本において労働力不足は致命的なので、政府は色々と姑息な制度をつぎはぎしてアジア諸国から労働力を輸入してきた。しかし、あくまでも短期間の暫定的な労働力として使っているだけであり、恒久的な移民の道は極めて狭くしたままだ

これに対して、自己中心的で独善的な人権主義者であるヨーロッパ諸国は、人道上の問題があるとして日本のやり方を非難してきた。「外国人労働者をもっと受け入れろ」とか「外国人労働者の地位向上を進めろ」なんて文句を好き勝手に言ってきた。しかし、外国人労働者を積極的に受け入れてきた自分たちの足元では暴動が起きている。一体、これをどう考えるんだ?

僕は、自分自身の海外志向が強いため、決して民族主義的な思想は持たないので、外国人労働者を一切受け入れるな、と言うつもりはない。現実問題として外国人労働者無くしては成り立たない産業も多いのが現実だ。ただし、自分が住んでいる社会の秩序と安定性を考えると、日本社会に溶け込むのが難しそうな人たちについては、恒久的な移民への道は限りなく閉ざしたままの方がいいのではないか、と思う。

ところで、外国人労働者による社会秩序の破壊について意見を書いたけど、最近、日本人だけでも同じような問題が起こるのではないかと心配している。悪平等とまで思えるほど平等だった戦後の日本社会だが、最近は社会の階層が固定化され始めたのではないだろうか下層の人たちの子供が、なかなか下層から抜け出せないような社会になりつつあるような気がする。これは非常に大きな問題だ。階層が固定化されると、下層の子供達の閉塞感、絶望感が強まり、モラルの低下や生産性の低下や治安の悪化など様々な問題が引き起こされる。

これを解決するには教育の大改革が必要だ。独善的な人権万能主義者の妄動に影響されることなく、もっとビシビシと社会的モラルを叩き込むのは言うまでもないが、それだけでなく、日本人総白痴化計画を企てる文部科学省を叩き直し、全ての子供達が平等に質の高い教育を受けられるようにしなければならない。
今、大都市部では、高学歴の親あるいは高収入の親は公立の小学校を避けて子供を私立の小学校に通わせている。公立の小学校のレベルが余りにもひどいからだ。教師のレベルも低いが、何よりも文部科学省に扇動された白痴化教育のせいだ。このままでは下層の子供達はいくら優秀でもロクな教育が受けられず、抜け出すことができない。ちなみに、田舎では私立の小学校が無いため、みんな仕方なく公立の小学校に通わせており、大都市部との機会均等が崩れている。田舎の子供はロクな教育が受けられないのだ。また田舎においても、塾に行ける子と行けない子の差が開いている。

僕は極端な悪平等は嫌いだけど、子供の機会均等という意味での平等さ、公平さは絶対に守らなければならないと思う。

(2005.11.11)



〜おしまい〜





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