朝青龍完全制覇

〜 憎らしいほどの強さ 〜



今年の大相撲は朝青龍の6場所完全制覇で終わった年間84勝も新記録だが、それくらいは勝たないと6場所完全制覇も無理だろう。史上初の7連覇も達成したが、この調子なら10連覇くらいまでいくかもしれない。怪我さえしなければ、朝青龍の行く手を阻む者はなかなかいないだろう。琴欧州は有望だが、まだまだ下位に対して取りこぼしが多く、朝青龍に勝っても優勝は簡単ではないだろう。朝青龍の圧倒的な強さばかり目立つ今年の大相撲であった。

横綱審議委員会でも朝青龍を絶賛する声が相次いでいる。石橋委員長は「重圧がありながら達成したのは素晴らしい。横綱の務めを果たした」と高く評価した。さらに、九州場所で定年を迎えた立行司の木村庄之助に対し、朝青龍が花束と懸賞金を贈った場面について「当初は態度が悪いと言われたが、あの気配りに成長をうかがえた」と話している。かつて朝青龍の態度が悪いと文句ばっかり言っていた内館牧子のおばはんですら、「夜中まで若い衆を連れ回して飲み歩いても、お相撲さんらしく豪快でいい。横綱として、きちんとしていればいい」と手放しでほめている。

ただし、相撲協会内の評価は必ずしも高くない。師匠の高砂親方(元大関朝潮)は「数字を見ると、確かに偉大だ。でも、ずっと一人横綱で、これといった強敵がいない中で作った記録だからな」と冷めた見方だし、27年前に自分が作った年間最多勝記録を塗り替えられた北の湖理事長も「今の状況じゃあ連覇記録は10ぐらいはいかないと」と淡々としている。北の湖は確かに彼自身が無茶苦茶強かったから批評する資格もあるが、たかが朝潮ごときにケチつけられたんじゃあ、朝青龍も立つ瀬が無いわな。ま、日頃から朝青龍は親方をないがしろにしているから、好かれてないのだろうけど。

しかし、今の相撲を支えている一人横綱の存在は非常に大きく、過小評価してはいけない。大関陣は揃いも揃ってふがいなさ過ぎる。毎場所、必ず誰かが交代でカド番だ。あまりにも情けない。みんなカド番では頑張って、なかなか陥落しないのは立派だけど、カド番の記録ばかり塗り替えている大関陣は情けないの一言に尽きる。
大関陣がふがいないから朝青龍が勝ち続けるのではあるけれど、大関陣がふがいないから朝青龍の記録の価値が下がる訳ではないぞ。どんなに強くたって、誰だって、取りこぼしってのは避けられないのに、1年6場所90番のうち6敗しかしなかったってのは、驚異の勝率だ。

それなのに、ああ、それなのに、朝青龍の人気は、いまひとつだよなあ。九州場所の千秋楽なんか、カド番を脱出したばかりの魁皇にばかり声援がいき、大記録を達成した朝青龍は四面楚歌状態だった。勝ったあと、土俵の上で朝青龍は泣いていたが、大記録達成の喜びの涙なのか、周りが敵だらけの悔し涙なのか分からなかった。魁皇は僕も大好きだし、九州は地元なので大応援になるのは分かる。しかし、仮に魁皇が勝ったところで、なんの変哲もない平凡な勝ち星だ。それに対して、朝青龍の勝ちは偉大な記録なんだから、勝った後くらいは朝青龍に拍手してやってもええではないか。九州人って、そんなに心が狭かったのか?

朝青龍が、なんでこんなに人気が無いのかは、幾つか理由が考えられる。
まずは、外国人であることが考えられる。日本の国技である大相撲の一人横綱が外国人じゃあ、ちょっとしらけるわな。ただし、曙みたいなのと違い、モンゴル人は人種的には日本人と全く同じぞよ。中国人や朝鮮人よりも日本人に近いぞ。高校の時から高知の明徳義塾高校に留学してきて、日本語も完璧だし、どう見ても日本人だぞ。そんな差別するなよ。て言うか、完璧な外国人である琴欧州の方がはるかに人気が高いってのは、ちょっとミーハーすぎるぞ。
琴欧州の人気が高いことから分かるように、朝青龍の人気が無い一番大きな理由は、外国人であることではなく、強すぎるということだろう。これは、かつての北の湖も同じだった。朝青龍と同様に、他に大したライバルがいなかったからだが、圧倒的に強すぎて、確かに面白くなかった面もある。結局、いつも勝つのは北の湖。最終的に優勝するのは、いつも北の湖。これじゃあ、場所は盛り上がらないわな。しかも、態度がふてぶてしくて愛嬌が無くて嫌われやすい。朝青龍も北の湖に似ている。強すぎて、ふてぶてしくて、あんまり人気者にはなりにくい。

でも、あの圧倒的な強さを見せつけられると、まっとうな相撲ファンは、素直に評価しようよ。強すぎる、というのは才能だけで達成できるものではない。コンディションの調整も不可欠だし、精神力も極めて重要だ。強すぎる、という状態を維持できるだけでも、すごいことなのだ。
気合いを入れるパフォーマンスだけで高見盛が人気を得ている状況は、いくらなんでも本末転倒でおかしい。やはり、ここは基本にもどって強さで評価するべきだろう。強い者が偉い。圧倒的な強さで一人横綱を勤め続ける朝青龍を大いに評価するべきだ。

(2005.11.30)



〜おしまい〜





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