株価急回復

〜 ドル高も同時並行の幸せ 〜



ついに東京株式市場の株価が日経平均株価1万5000円台を回復した。2000年12月13日以来、実に約5年ぶりのことだ。いやあ、ほんまに長かった。長いトンネルだった。長い長い5年間、沈みっぱなしだった私の投資が、これでやっと全銘柄浮上しました。沈んでいる時に買い増したものを合わせると、多少なりともトータルで儲けが出ています。さらに、適当な事を言って家内に買わせていた株も全て購入時の株価を回復し、長い間肩身が狭かったのが、ようやくデカいつらができます。いやあ、ほんまに良かった良かった。

今年に入ってからの株価回復は、外国人投資家の日本株買いが大きく寄与してきたが、ここへ来ての急回復を支えているのは、国内景気の堅調さに加え、超低金利政策が続くことへの期待感だ。日銀による量的緩和策の解除時期に注目が集まっているが、政府はここへきて、解除に慎重姿勢を示しているため、資金が株式市場に集まっている。
個人的な考えを言えば、日経平均で20000円までは上がっても妥当だと思っているが、少なくとも15000円以上をキープしていれば含み損は無いので、もう余裕ですな。

一方、円の超低金利政策の継続は、株高と同時並行的に円安ドル高の流れも生み出している。金融の量的緩和政策を続ける日本に対し、米国では経済が堅調に推移していることから金利先高感が強く、円売りドル買いの動きが進み、2003年8月以来、2年4か月ぶりに1ドル120円台になった
いやあ、これもほんと、長かった。1ドル120円で買ったドルがかなりあったのだが、ようやく浮上してきた。もうちょっと円高の時に買いましたドルを合わせれば、こちらも少しは儲けが出ている。しかも、この間、ゼロ金利の円と違って、ドルは利子を生んでいるから、それも考慮すれば、結構、良い投資だった。こちらも家内に適当な事を言って1ドル120円くらいで、かなりドルを買わせていたので、長い間肩身が狭かったけど、久々に強気に出られます

この円安ドル高だけど、どこまで進むかは議論の分かれるところだ。1ドル120円をトリガーとするオプション取引があったため、120円が大きな抵抗線だったが、ひとたび120円をつけてしまえば、その歯止めが無くなるので、さらに一気に円安が進む可能性がある。日米当局も円安・ドル高を容認していることだし。また、欧州中央銀行も主要政策金利を5年2か月ぶりに引き上げたことで、日本の低金利が際だち、円を売る動きが加速している。もうしばらく様子を見ても良いだろう。なんてったって、多少、円高が進んだとしても、ドルには利子がつくから、長期間保有すればするほど、ゼロ金利の円よりは良いとも言える。

さて、この株高と円安の同時進行は、普通に考えれば、おかしな状況だ。株高を支えている大きな要因は外国人投資家の日本株買いなんだけど、外国人投資家が日本株を買い進めれば、当然、円を買うわけだから円高になるはずだ。ここへきて株が高くなってきても相変わらず外国人投資家の日本株買い意欲は旺盛なままなのに円高にならない理由は、外国人投資家が円を直物で買わずに、低金利の円を借りて日本株を買っているかららしい
また、株高で余裕のできた日本の投資家が、潤沢になった手元資金を外債などに積極的に投資しているため、円安が進んでいる側面もある
そして、株高が円高を生むことなく、逆に円安がますますの株高を呼んでいる。円高による業績の底上げを見越して、輸出企業などの株が積極的に買われているからだ。主要な輸出企業は今年度下半期の為替レートを1ドル=105円程度としており、円安によって巨額の為替差益を得ることになる。

とは言え、ここへ来ての急激すぎる株高と円安について、スピード感にとまどいを感じている読者も多いことだろう。(って、誰のことや?)
いくら景気が回復していると言っても、いくら金利差が広がっていると言っても、それは徐々に進んできたものであり、この株高と円安の急激なスピードの説明はつかない。
これに関する極めて明快で分かりやすい分析が、今日、BNPパリバ銀行から送られてきたので、ここにご紹介します。この説が正しいかどうかは異論もあるでしょうが、ほんっとにクリアで分かりやすいので、思わず納得してしまいます。


「流動性の罠」からの脱出 〜株高・円安の背景〜

筆者の2006年の景気シナリオは、「デフレ終焉による実質金利の低下を追い風に、景気回復が続く」というものである。CPIコア前年比がゼロに近づいてきたため、実質オーバーナイト金利はゼロ近傍まで低下し、相当に景気刺激的な金融環境となっている。これが、最近、民間需要が好調な最大の要因である。実質金利低下が企業や家計の支出を刺激しているのである。日銀は2006年前半にも量的緩和を解除する可能性が高いが、その後もゼロ金利政策が続けられるため、インフレ率の緩やかな上昇によって、実質オーバーナイト金利はマイナスの領域で推移し、今後の金融環境は現在よりもさらに景気刺激的となる。

実質オーバーナイト金利の低下は、株高や円安をもたらすことでも、実物経済を刺激している。金融政策の「資産市場のチャネル」や「為替のチャネル」も景気刺激的になっているのである。株価の上昇ピッチが速いことから、ミニ?バブル(リスク資産に対する選好の極度の高まり)を懸念する人もいるが、現在は逆バブル(安全資産に対する選好の極度の高まり)の修正過程と捉えるべきであろう。「流動性の罠」からの脱出の過程では、「悪い均衡」から「良い均衡」へのシフトが生じるため、とりわけ資産市場では急激な変化が生じても不思議ではない。シフトの過程で具体的には何が起きるのだろうか。その前に「悪い均衡」、つまり「流動性の罠」(あるいは「デフレの罠」)がどのようなものであったかをレビューするのがわかりやすいだろう。

一般に「流動性の罠」は、「低成長、資産デフレ、デフレ、高い実質金利、自国通貨高(円高)」によって特徴付けられる。低成長がデフレをもたらし、デフレであるがゆえに総需要が抑制され低成長が続く。そして低成長かつデフレであるがゆえに、名目ではゼロ金利政策が採られても実質金利が高いために、成長を高めることもデフレを解消することもできない。デフレ予想が強く成長期待が萎縮したままでは、株や不動産などのリスク資産の価格低迷が続く。そして、資産デフレはデフレ同様に総需要を抑制する。もともとバブル崩壊後の資産デフレによって低成長が長引いたことがデフレの原因だが、デフレとなったことで日本経済は簡単に抜け出すことができない「流動性の罠」に陥っていたのである。

バブルが崩壊し、低成長が続いた全ての国が、必ずしもデフレとそれがもたらす「流動性の罠」を経験するわけではない。アグレッシブな金融緩和によってデフレを回避することが可能であることは、2002〜2004年の米国の金融政策で実証済みである。もっとも、米国でそれが可能だったのは、日本という反面教師が存在したおかげかもしれない。

また、通常の金融政策の波及経路が資産デフレで阻害されても、「為替レートのチャネル」が作用して自国通貨が大幅に減価すれば、デフレ予想の広がりが食い止められ、「流動性の罠」を回避できる。実際に90年代前半にバブル崩壊を経験したスウェーデンなどでは、その直後に生じた大幅な自国通貨の減価がデフレを回避した要因の一つとなっている。

しかし、90年代の日本では、「為替レートのチャネル」は様々な要因で機能しなかった。当時の日本経済の体力からすると、本来なら為替レートは円安方向に調整されなければならなかったが、実際には円高傾向が続いた。デフレには、安全資産に対する需要の極度の高まりと、リスク資産に対する極度の回避傾向という金融的な側面がある。資産市場では、現預金や国債に対する選好が極度に高まり、株などは極端に敬遠された。同じように、外為市場では、安全資産である円に対する需要は衰えず、リスク資産である外貨に対する需要が高まらない。円の名目金利がゼロでも、実質金利が高いために、それが円高圧力を生み出すのである。デフレに陥ったがゆえに円高傾向が続いていた可能性があり、それが一層のデフレと低成長をもたらす悪循環となっていた。

このように「流動性の罠」は、低成長、資産デフレ、デフレ、高い実質金利、円高それぞれが相互補完的に作用し、悪循環をもたらすため、極めて安定的な「悪い」均衡だといえる。安定的であるがゆえに、脱出も困難であった。しかし、デフレ予想が後退してきたことによって、実質金利が低下し始め、「悪い均衡」から「良い均衡」へのシフトが始まった。デフレ予想後退のきっかけについて意見は分かれるが、筆者は、2003年の日銀総裁交代と量的緩和拡大を伴った大規模な為替介入(事実上の部分非不胎化介入)など通貨・金融政策の大転換の影響が大きいと考えている。

実質金利の低下は、企業や家計の支出を刺激し、国内民間需要の増加をもたらしている。実質金利の低下に加えて、それまで萎縮していた成長期待が復活したことで、株価などリスク資産価格の回復も始まった。同時に、実質金利の低下で、円安も進んでいる。株高や円安は総需要を再び刺激する。総需要のさらなる拡大は、需給ギャップの縮小を通じて、デフレ圧力を吸収し、再び実質金利の低下要因となる。「悪い均衡」から「良い均衡」へのシフトの過程で起こる実物経済の変化は緩やかであるが、資産市場における変化は人々の予想の転換(レジーム・チェンジ!)そのものであるため、ジャンプに近い現象が生じてもおかしくないのである。

なお、日銀は量的緩和を解除した後も、ゼロ金利政策を続けると見られるため、「悪い均衡」から「良い均衡」へのシフトの鍵である実質金利は今後も低下を続け、マイナスの領域で推移するだろう。筆者は、日銀の岩田一政副総裁と同様に、インフレ率が1%程度まで上昇することが、ゼロ金利政策の事実上の解除条件になると考えている。「1%を下回る低いインフレ率は、デフレ同様に害悪が大きく、回避すべきである」、というのが世界の中央銀行の常識であり、やはり、プラスのインフレであっても1%程度に達する前のオーバーナイト金利引き上げは、外部から納得を得られない。筆者の予想では、実質オーバーナイト金利はマイナス1%程度まで低下することになる。


どうでしょう?思わず納得してしまいます。(字が小さくて読みにくいって?)

さて、株高とドル高と金高はうまい具合に同時進行してくれているが、さすがに債券高まで同時進行というのは欲が深すぎるか。普通なら株式市場に資金が流れると債券市場からは資金が流出して債券安になります。一方、金利は低いままに誘導しようとすれば、その意味では債券価格は堅調でもおかしくはない。ただ、ドル金利上昇局面にあって外債はドル建て価格が下がっているので、ドル建てでは損が増えている。しかし、まあ、それくらいはドル高でカバーできているし、許容しましょう。

(2005.12.2)



〜おしまい〜





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