どんどん進む小泉改革

〜 スピードを緩めるな 〜



ここのところ、小泉政権による行政の改革が異常なスピードで進んでいる政府系金融機関の統廃合やら、公務員制度改革やら、年金問題やら、どんどん出てくる。素直に、すごいと思う。

政府系金融機関の統廃合問題は、8つの政府系金融機関を1つに集約するという基本方針が正式決定された。最初、小泉首相が「1つにしたい」なんて言い出した時は、そうは言っても役人の抵抗は熾烈だから、結局は3つくらいは残るんじゃないかなあ、なんて思っていた。役所の言いなりになる大臣連中も、その辺りを落としどころに考えていたようだし。ところが小泉首相の意思は思いのほか固くて、なんと遂に1つになることになったのだ。
もちろん、1つとは言っても、色々とカラクリはあって、本当に1つになるのは、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫の4つだ。これは本当に2008年度に1つになる。機能も縮小するとは言われているが、これは役人の抵抗があるので、本当に縮小するかどうか余談は許さない。しかし1つになると総裁は1人になるので、役人の天下りポストが減ることだけは確実だ。さらに国際協力銀行も、資源開発業務は新機関に移して統合するが、円借款など海外支援業務をどうするかは決まっていない。今年度中には結論を出すとのことだけど、外務相や財務相の権益争いが熾烈で、どういう結論になるのか想像できない。
残りのうち、独り立ちできそうな日本政策投資銀行と商工組合中央金庫は完全民営化するということだ。政府系でなくなるという意味では数に入れなくてもいいんだろうけど、銀行としてはそれぞれ残るので、1つになるとは言えないわなあ。しかも、最初は自力での資金調達が困難との理由から5〜7年間は政府出資を残すので、完全民営化はかなり先の話だ。最後の公営企業金融公庫は、廃止されるかもしれないし地方移管されるかもしれない。
個人的には、仕事でお付き合いのある政策投資銀行とか国際協力銀行がどうなっていくのか、非常に気になるところではあるが、まあ、しかし、完全ではないとは言え、これでもすごい事だと思う。なんで政府系の金融機関がこんなにいっぱいあるかと言えば、各省庁の権益争いの中で生まれてきたものだから、どれを潰すにしてもどこかの省庁が必死で抵抗するから、そう簡単なものではない。郵政民営化でものすごい力業を見せた小泉政権だからこそ可能な荒療治だ。小泉首相に抵抗したら何されるか分からないという恐怖から反対派が黙ってしまったのだ。これは、本当にすごい事だと思う。郵政民営化法案に反対した議員を自民党から排除した事について、「そこまでやらなくてもいいじゃないか」という批判が自民党内から噴出していたが、そこまでやったからこそ、他の政治課題でもにらみが利くというもんだ。

それから、公務員制度改革では、「行政改革の重要方針」の原案に国家公務員を5年間で5%以上純減する具体策が盛り込まれている。このご時世で僅か5%の削減だなんて、民間企業から見れば「今ごろ何やってんだ」と怒りがこみ上げてくる削減率だけど、これでも実は画期的なのだ。これまで公務員の削減については、以前にも書いたが、公務員自らは、用の無くなった定員を減らす一方で、常にそれを上回る増員要求を繰り返してきており、結局いつもプラスマイナスで純増だったのだ。それを純減させるという確固たる目標を打ち出そうとしているのだから、それなりに大変なことなのだ。
もちろん、姑息な役人の抵抗にあって、国立美術館や航空大学校などの独立行政法人の職員の身分を公務員から非公務員にするなんていう数字のカラクリだけで誤魔化されないように注意しなければならないが。

さらに、年金問題では、厚生年金と共済年金の一元化を進めようとしている。この問題もずっと以前から指摘されていた課題だが、役人の必死の抵抗でたなざらし状態だった。
公務員が加入する共済年金には、追加費用の名目で毎年2兆円もの税金が投入されている。この巨額な税金投入により、公務員は保険料負担が軽減されており、公務員への優遇措置の典型となっている。これが厚生年金と一元化されれば、当然、税金の投入はなくなり、公務員の保険料率は厚生年金の水準で統一される。さらに、同じく税金が投入されている共済年金独自の上乗せ加算「職域加算」も廃止する。
年金問題では、他にも国会議員の議員年金を廃止するかどうかでもめており、国会議員に対する手厚い優遇措置に怒っている人も多いが、数が少ないので、本当はどうでもいい。投入されている国民の税金の額で言えば、公務員の共済年金の方がはるかに大問題だ。当然のことながら、各省庁は必死の抵抗を見せているので予断は許さないが、小泉政権の勢いからすれば、これも一気に片を付けてくれることを期待したい。

このように、とどまるところを知らない小泉政権の改革だが、これもひとえに9月の総選挙での圧勝のおかげだ。9月の総選挙で圧勝した小泉首相は、当然の事ながら争点であった郵政民営化関連法案をあっさりと通したのだが、その後も歩みを緩めることなく、さらなる改革を強烈な勢いで進めてきた。これは期待していた事ではあるが、ここまでのスピード感で進めてくれるとは正直思ってなかった。あと1年で終わる政権に、ここまでの力が残っているとは思ってなかった。だから、どんどん加速する改革には感動すら覚える。
9月の選挙では、郵政民営化が大きな争点だったが、それはあくまでも象徴的なものであり、何も郵政民営化だけが争点だった訳ではない。僕は基本的に自民党支持者ではないが、小泉政権に対しては、既得権にがんじがらめになったシステムを改革してくれる政権として支持してきた。既得権の権化のような自民党に本来なら改革は期待できないが、こと小泉政権に限っては、労組の足かせがある民主党なんかよりも、よっぽど改革が期待できる。僕だけじゃなく、現時点では、同じような考えの人が日本中に圧倒的に多かったからこその自民党の圧勝だ。だから、国民が求めていたのは、何も郵政民営化だけじゃなく、それを最初のステップとする改革の連続だ。
対抗する民主党は「郵政なんて大問題じゃない。もっと大事な問題がある」なんて言い続けたが、大きな勘違いだ。本当の争点は郵政民営化じゃなく、もっと本質的なところにあったのに、トンチンカンな対応をしてしまった。郵政ごときの改革すらできないようでは、もっと大事な問題だって改革できる訳がない。郵政民営化ごときに反対する政党に、他の改革なんてできやしない。

郵政民営化にとどまらず、歴代政権が知らん顔して手を付けなかったために山のようにたまった課題を、一気に解決してくれる政権として小泉政権を支持した国民としては、喜ばしい限りだが、心配は、小泉政権の命が1年も残っていないってことだ。上記の改革はいずれも役人が必死で抵抗しているものばかりだ。あいまいな部分を残していると、小泉政権が終わったとたんに、一気に息を吹き返す恐れがある。役人というのは、ばい菌と同じで、ちょっと目を離すとあっという間に増殖するものだ。政権が終わる前に徹底的に片を付けるか、後任に、改革を継続できる人を選ぶか、いずれかに期待するしかない。
相も変わらず役人の言いなりになっているようなバカを後任にする事だけは避けて欲しい。

(2005.12.10)



〜おしまい〜





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