ライブドア摘発

〜 法制度の整備を進めろ 〜



ライブドアに強制捜査の手が入った事件は、大々的にマスコミで報道されているので、ここで書く必要性は乏しいんだけど、マスコミの論調に腹が立つので、ちょこっと書きます。

それにしても、なんだ、このマスコミのバカ騒ぎは?強制捜査が入った日のNHKの狂乱的な報道と言い、翌日の新聞のバカはしゃぎの記事と言い、あまりにもひどすぎるぞ。姉歯偽装事件はどこへ行ったんだ?
マスコミは、今まで恨みが鬱積していたライブドアに対して、ここぞとばかりに一斉に袋だたき状態だ。マスコミがライブドアに対して恨みを持っているのは、昨年のニッポン放送買収事件で、それまでぬるま湯の仲良しクラブで安穏としていたマスコミ業界のあり方が鋭く糾弾されたからだ。また、ライブドアがやっているIT関係や金融関係の胡散臭い手法を理解できない頭が古くて固い連中のやっかみもあるだろう。

最初に断っておくが、僕は元々、ライブドアという会社も堀江社長も好きではない。非常に胡散臭い奴だ。本業はインターネット関連だと言いつつ、実際の収益は企業買収や金融的手法によって生み出したものであり、まさに虚業の典型だからだ。
しかし、だからと言ってライブドアに対する一般的な批判には組みしない。多くの財界トップがライブドアの手法を批判してきたが、その多くは感情論だ。「資本主義の悪い面が出ている。正攻法ではない」とか「やり方に疑問を感じる。安易な企業のM&Aは単なるマネーゲームに過ぎない」とか「安易なM&Aは既存株主にとって企業価値を低下させることになりかねない」とか意味不明の事を言ってきたが、単に自分の会社がM&Aで敵対的に買収されるが嫌なので言っているだけだ。資本主義は市場により効率性を追求するシステムであり、買収して効率的に運営しようとするから企業買収するのであり、それを否定するのは資本主義そのものを否定することになる。マスコミと同じで、ぬるま湯から抜け出せない経営陣の戯言だ。

ただし、ライブドアの手法は法律すれすれのものが多いのは事実だ
ニッポン放送株式買収の手法も、通常の市場売買ではなく、東京証券取引所の時間外取引を利用したものだった。「企業買収には、株式公開買い付け(TOB)を使うべきだ」との批判が多かったが、もっともな批判だ。TOBは、株式の大量売買が企業経営を大きく左右するため、買い付け期間や株数、価格などを投資家に広く公表しなければならない。しかし、時間外取引には、こうした公表の義務はない。なぜなら時間外取引は、機関投資家の投資目的の大量売買やグループ内の再編などを想定した取引であり、企業買収を想定したものではないからだ。そのため、一般投資家の知らない間に企業の経営にかかわるほどの大量の株式が売買されてしまう。なので、ライブドアの手法は制度の抜け道を使ったと批判されても仕方ないものだ。
ただし、いくら本来の趣旨からすればおかしいとは言え、法規制上は違法ではなく何ら問題は無い。法律違反ではなく、逆に法制度の不備だ。東京証券取引所も問題視はしたが「違法ではない」と明言してた。

今回、検察庁の強制捜査が入った案件についても、率直な感想は「よく考えられた手法だなあ」というものだ。頭の悪い新聞記者は、意味を理解できてないため、最初っから法律違反と決めつけてバカ騒ぎしているが、率直に考えれば法律違反しているとは思えない。僕は決して金融のプロではないが、しかし財務の仕事も長らくやっており、全くの素人でもない。今回のスキームは、趣旨からすれば、制度の本来の趣旨から大きくはずれた裏技であるが、違法性は無いと思う。あくまでも法制度の不備だ。文句を言うなら、まずは法制度を整備しろと言いたい。法制度をほったらかしにしたままで、不透明な裁量で規制するのは規制緩和に逆行する。役人の裁量行政の復活は許されない

問題の手法は、株式交換、株式分割、投資事業組合などを組み合わせたものだ。
1999年の商法改正で、企業買収するときに現金の代わりに株式交換が認められた。法律違反でも何でもない。ただし、買収企業の株価が高いほど買収がしやすくなるので、当然ながら自社株の株価を高くしようとする意図が働く。これも当たり前だ。ていうか、そもそも資本主義市場においては経営陣は株主のために株価を高めなければクビにされる。そのために株式分割や怪しい情報を流してまで株価を高くしようとする連中も出てくる。
株式分割自体も法律で認められたものであり、違法でも何でもないし、そもそも株式分割は株式の売買を容易にして投資家のすそ野を広げるためのものであり、本来、分割しても価値が上がったり下がったりするものではない。ところが、デイトレーダーなど個人の投機家が株式分割自体を1つの買い材料としてもてはやすため、株価が上昇するケースが多い。ライブドアはそれに目を付けて、1株を100株にするなど極端な分割をし、株価急騰を図っていた。株式分割の本来の趣旨からは大きくはずれている。ただし、これも決して違法ではなく、ライブドア以外にも新興企業が用いてきた手法だ。単なる法制度の不備であり、現在、制度が修正されつつある。
また、怪しい情報を流して株価をつり上げるのは違法だが、今回のケースは、ただちに違法とは言えないように思える。指摘されているのは、ライブドアが出資している投資事業組合が既に傘下に収めていた企業をライブドアが直接買収するのに、あたかも新たに買収するように発表して、株価のつり上げを図ったのではないか、ということだ。しかし、投資事業組合への出資に関しては情報開示しなくてもいいというのが法律であり、敢えて隠していたことに道義的責任は否定できないとしても直ちに違法とは言えないだろう。表面的には虚偽の発表はしていない。大事な事を隠していたとは言え、それは違法ではないのだ。
さらに、その投資事業組合が得た利益をライブドアの利益に計上したのが粉飾だと指摘されているが、これも、どう考えても違法ではない。もちろん、本来なら増資と同様な意味合いで得た資金だから利益ではないが、形式的には投資事業組合を通じて得た利益の形を取っているから、直ちに違法ではない

て言うか、ライブドアなんていう胡散臭い会社の株を買いまくって金儲けを企んでいるようなふざけた投機家連中は、新たに買収する企業の業績や将来性を考慮して株を買っているんじゃなくて、何でも良いから単に買いの名目になる新しい材料探しをしているだけだから、本当は既に支配下にあった会社なのか本当に新規の買収かなんて関係ないはずだ。そもそも、ライブドアなんていうバカな会社の株を買う連中が儲けようが損をしようが自業自得であり、ほっといたらええじゃないか。ライブドアに限らず、新興市場におけるインターネット関係の胡散臭い会社の株価なんて、あまりにもバカバカしいものが多い。ほとんど実態の無いような会社のIPOで巨額の投機資金が乱舞している。

しつこく言っておくが、僕はあくまでもライブドアも堀江社長も嫌いだし、多くの新興企業がやたら使っている株式分割や投資事業組合などの手法も嫌いだ。使い方が本来の趣旨からはずれすぎている。しかし、それは法制度が不備だからだ。悪いことをやっていると思うのなら、ちゃんと法制度を整備すればいい。法律をほったらかしにしたままで行政が裁量で規制するのは絶対反対だ。
「企業経営は法を犯さなければいいというものではない」とか「投資家を裏切り、市場の公正さをゆがめる許されない行為である」と言った批判が出ているが、それはその通りだ。しかし、そもそも金融業界は紳士協定が通用するような世界ではない。大手証券会社だって「客を自殺に追い込むくらいでなければ一人前の証券マンとは言えない」と言われた体質が無くなったわけではない。みんながみんな、人の裏をかいて出し抜いて一儲けしようとしている世界なんだから、ルールをきちんと決めておかなければ誰かがズルをする。役人は、天下り先の事を考えているヒマがあったら、後追いではなく、最初からきちんとしたルールを作れ。

さらに、役所以上に官僚的と指摘されている東証の、あまりにお粗末なシステムは、この際、徹底的に糾弾されるべきだろう。
ライブドアショックで急増した売り注文に対応できず、全銘柄の取引を停止するなんて、あまりの無能ぶりに呆然とした。システム処理能力が限界に近づいただなんて、そこまでお粗末なシステムだったのか?ついこの間、システム能力増強の際のプログラム欠陥により、システムダウンという醜態をさらしたばかりだが、システムダウンを引き起こしてまで増強したという割には、全然対応できてないじゃないか。アホとちゃうか?

今回はライブドアショックによるものだが、そもそも最近、約定が増加の一途をたどっているのは、インターネットを使った個人投資家デイトレーダーの注文が急増していることが根底にある。彼らは企業業績などの中長期的な視点から売買するのではなく、純粋な投機として同じ銘柄でも一日に何度も売買を繰り返す。タイミングだけが勝負であり、小口の取引を頻繁に繰り返す。
僕は彼らの存在にも批判的であり、売買単位とか頻度に規制を設けてもいいのではないかとすら思っているが、彼らの取引手法は違法でもなんでもない。むしろ、株価が低迷していた時期には、彼らのような個人投資家の増加を促していたのが東証の実態だ。つまり、自業自得なのだ。

去年12月のみずほ証券によるジェイコム株の誤発注でも、あり得ないとんでもない注文をそのまま受け付けてしまうというシステムの無能さが暴露されたが、これもひとえに、旧態依然とした内部体制のもとで、株式市場におけるシステム化の重要さの認識が欠落した東証首脳陣の責任である。猛省を促すぞ。

(2006.1.19)



〜おしまい〜





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