社会保険庁

〜 救いようがない役所 〜



社会保険庁による国民年金保険料の不正免除が、いつまで経っても収まらない。て言うか、どんどん広がっている。役人のやることにはウンザリして、批判するのもバカらしくなっていたのだけど、とどまるところを知らない泥沼の様相を呈してきたので、ちょっと書きます。

問題になっているのは、国民年金保険料が未納の人のうち、所得額などの理由から免除や猶予に該当する被保険者に対し、免除や猶予の申請がなくても勝手に手続きを行った手口だ。一見、免除や猶予に該当する被保険者のための親切のように見えるが、実際は、単に納付率を上げることだけが目的だ。免除・納付猶予者は納付率の計算から除外されるため、見かけ上、納付率が改善するからだ。

この手口は、最初は今年2月に京都社会保険事務局で発覚したもので、その後、社会保険庁が全国の社保事務局長に対して3回調査を実施したのだが、調査を重ねるたびに、それまでは「問題なし」と回答した多くの事務局から不正が次々に明るみに出ている。今のところ判明しているだけで、26都府県で11万4千件もの不正が発覚している。最初は、ごく一部の特異な事務所での不正だと言い張っていたが、全国で組織的に行われていた不正だったのだ。まあ、国民の多くは、見抜いていたはずだ。

例えば、静岡では、社会保険事務局が管内の社会保険事務所を集めた会議で、この手口を「できるところから、この方法を取り入れるように」と直々に指示していた。「違法性の認識はなかった。納付率向上という目標に向かって一生懸命だった」と言っている。違法性の認識はなかったとのことだが、親切心じゃなくて納付率向上が目的なんだから、その時点で制度の悪用という認識はあったのではないか?
26都府県のうち、静岡のように事務局が主導的役割を果たしていたケースは7府県、事務所が主導し事務局も了承していたケースが6府県で、組織ぐるみの不正の構造が明らかだ。社会保険庁自身が、昨年11月に各県の社会保険事務局長に対して納付率向上の目標数値を具体的に示した際に、「免除等の早期勧奨・獲得を徹底せよ」などと、保険料免除手続きを進めることを指示しているのだ。
そして、単に社会保険庁だけでなく、この不正は厚生労働省自体の意向も反映しているものと思われる。保険料を独自財源に抱える厚生労働省にとっては「社会保険方式の維持」が至上命題なんだけど、未納が増えて「財源は保険料でなく全額税方式にすべきだ」との声が強まることを警戒しており、見かけの納付率が上がる不正の温床となった側面がある。

それにしても呆れるのは、相変わらずの隠蔽体質だ。静岡では、京都で不正が発覚した後、それ以上の不正処理を取りやめるように指示したうえで、社会保険庁の調査には「適正」と虚偽の報告を繰り返していた。
何度、調査しても、次々に不正が出てくるってのは、逆に言えば、今でも隠している事務所がいっぱいあるだろうって事だ。全国26都府県で発覚しているって事は、絶対に残りの21道府県でも行われているはずだ。僕は断言するぞ。

しかも驚くのは、バレた後も、しつこく言い訳する。「免除した方が年金権確保のため加入者のためになる」と言い張るのだ。
これまでの3回の調査では、「不正は無い」と言い張っておきながら、ついにバレた三重の社会保険事務局長は、社会保険庁から「出処進退をかけて相違ないか」と問われても「相違ない」と嘘をついていた。それなのに「納付率アップのためにやったのではなく、無年金者をなくしたいという善意でやった」と強弁している。それなら、なぜ嘘をついてきたんだ?おかしいじゃないか。「納付率達成がうまく進んでいないことはあったが、納付率アップは後から発生した実績だ」と数字合わせの指摘をあくまで否定しているが、どう考えても見え透いた嘘だ。厚顔無恥め!
沖縄の社会保険事務局に至っては、「県民の年金権をいかに確保するかが命題だ。不正とは思っていない」と今だに強情を張っている。役人と言うのは、居直ると、とことん嘘をつき通すものなんだなあ。

社会保険庁に限らず、役所がいかに嘘つき体質なのか、いかに税金の無駄遣いばかりやっているのか、いかに国民のためを考えていないのか、これ以上、言うのが嫌になるくらい言ってきたので、もうウンザリなんだけど、今回、黙っておけないのは、「本当に悪いのは不正をした社会保険庁ではなく、納付率向上を強く指示した政府が悪い」なんていうような論調が出てきたことだ。おいおい、いい加減にしてくれよ。責任の転嫁はやめてくれ。

以前は、保険料の徴収は市町村が代行していたが、徴収業務が社会保険庁に移管されてから、全国的に納付率は急減した。社会保険庁は2007年度の保険料納付率について80%を目標にしているけど、2004年度は63.6%で、かなり厳しい目標だ。そして、納付率を上げるための厳しいノルマが今回の不正を生んだとする論調が見受けられるのだ。もちろん、そんな論調は主に役所サイドから出ているのだが、小泉改革路線に反対する勢力からも出ている。
しかし、数値目標は、一見、厳しいように見えるが、ほんの数年前に比べれば、まだまだ圧倒的に低い数値だ。少しでも回復させようという控えめなレベルのものだ。こんな甘いノルマがダメと言ってたら改革なんかできるはずがない。もともと社会保険庁は、国民から徴収した保険料を無駄遣いしまくって年金財政の破綻を導いた、だらしないダメ官庁だったのだ。そこにカツを入れるために民間人を長官に起用してノルマを課したのだけど、甘い甘いノルマなのに、それまでの腐りきった体質から抜け出せなくて、ヒィヒィ言ってるだけだ。同情の余地は無い。

小泉首相は「社会保険庁の職員の中に政府の改革に反対している勢力があるから、その改革つぶしに乗らないように。改革は行政のあきれた意識、無駄の実態を改めることが原点だ。だから長官も民間から起用した」と述べているが、全くその通りであり、今回の問題の責任を民間人である長官に取らそうというのは、役人の浅知恵だ。
叩けばもっともっといっぱいホコリが出てきそうな社会保険庁だけど、もっともっと叩いて徹底的に体質改善しないと、国民年金は本当に破綻しちゃうよ。

(2006.5.31)



〜おしまい〜





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