麻薬とひき逃げ

〜 刑罰のバランスが悪いよ 〜



朝日新聞の秋山社長の長男のプータローが、麻薬取締法違反で捕まった事件で、東京地裁が懲役1年2月の実刑判決を言い渡した。
この男、朝日新聞のエリート社員の息子として甘やかされて育ち、好き勝手に適当な人生をフラフラ歩んできたんだと思うので、全く、同情する気は起こらない。一応、肩書きは「テレビのフリーディレクター」なんてなっているけど、要するに、親の威光によってテレビ局から仕事を恵んでもらっているフリーターみたいなもんだろう。ニートよりはマシかもしれんが。
そもそも、独善的で他人の悪口ばっかり書きまくっている偽善の固まりのような朝日新聞の社長が、自分の息子すら、まともに教育できないという無能ぶりをさらけ出した小気味よい事件だ

ただし、この男に対する同情は皆無なんだが、なんとなく麻薬に対する刑罰の重さに釈然としないものがある
今回の実刑判決は、この男が再犯であり、しかも前回の有罪判決の執行猶予中だったことが大きな原因だ。2年前に麻薬使用と大麻所持で懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決を受けており、今回の判決が確定すれば、前回の執行猶予も取り消されるため、かなり厳しい刑罰となる。執行猶予付きの有罪判決を受けておきながら、その執行猶予期間中に再犯したんだから、同情の余地は無いと言える。でも、それにしても、かなり厳しい刑罰だ。

もちろん、麻薬や覚醒剤は世の中から撲滅せねばならない。軽い麻薬は許可してもいい、という議論もあるし、オランダなんかでは許可されているが、僕は、絶対に許してはいけないと思う。歯止め無く広がるからだ。しかし、それは製造や流通を厳しく取り締まるのが最優先だ。もちろん、使用者を厳しく取り締まることによって麻薬使用の広がりを抑え込むのは必要不可欠な措置だが、それ以上に悪いのは製造と流通だ。大量に覚醒剤を製造して日本に密輸している北朝鮮なんか、地球上から抹殺してもいい。東南アジアやオーストラリアでは、麻薬を大量に保持していると、売人と見なされて、死刑や終身刑が科せられる。ときどき日本人も捕まっている。日本でも、麻薬や覚醒剤を密輸して売りさばいている関係者などは、死刑にしてもいいかもしれない。それくらいしないと、使用者に対する刑罰とバランスが取れないぞ。

さらに言えば、麻薬使用の刑罰に比べると、他の犯罪に対する刑罰も、どうも軽いように思われて仕方ない以前にも書いたけど、麻薬よりもっと悪質な犯罪との刑罰のバランスが悪いのだ。日本では殺人を、しかも通常は2人以上を殺さないと、死刑にはならない。少女を誘拐拉致して何年間も監禁していたような事件の犯人は死刑にすべきだと思うけど、被害者が死んでないから死刑はあり得ない。子供を衰弱死させようとした夫婦も、子供が死んでないから死刑はあり得ない。

そしてそして、最近、非常に憂慮しているのが、ひき逃げ
ひき逃げ事件が最近、急増している。去年1年間で2万件近く発生しており、数年前の3倍に達している。これは、なんと、飲酒運転などの悪質運転に対して、刑罰の厳しい危険運転致死傷罪が制定された影響だ。飲酒運転して事故を起こした犯人が、ひき逃げしているのだ。ひき逃げしたら、普通は罪が重くなるんだけど、それでも危険運転致死傷罪が適用されるよりは軽いからだ。本来は飲酒事故などの抑止を目的とした刑罰強化が、逆効果を招いているのだ。
ひき逃げしたと言っても、とことん逃げ切るわけではなく、酔いが醒めたら出頭するのだ。危険運転致死傷罪を適用するためには、飲酒運転だった事を立証する必要があるが、酔いが覚めてから出頭すれば、飲酒運転を立証できないのだ。さらに悪質なケースとして、「重ね飲み」といって、事故後に故意に飲酒を続け、事故時点での血液中アルコール濃度が検証できないように偽装工作を行う者もいる。「事故を起こして気が動転して落ち着くために酒を飲んだ」なんて言えば、見え透いた嘘であっても、なかなか立証はできない。

去年の2万件のひき逃げのうち、250件で被害者が死亡している。このうちの何十人かは、直ちに救護すれば命が助かったはずだ。そういう意味では、ひき逃げは確信的な殺人とも言える
それなのに、ひき逃げの法定刑は救護義務違反であり、5年前にそれまでの3年以下の懲役または20万円以下の罰金から5年以下の懲役または50万円以下の罰金に引き上げられたとは言え、まだまだ軽い。通常の交通事故の刑罰である業務上過失致死傷との併合罪でも、最高で懲役7年半だ。危険運転致死傷罪最高刑が懲役20年なのに比べると、圧倒的に軽い。
酒を飲んで事故を起こすのは、その可能性を自覚しながら運転するという意味で厳しく罰せられなければならないのは当然だろうが、ひき逃げは、どう考えても、それ以上に悪質な犯罪でしょう?この卑劣きわまりない犯罪に対して、刑罰が軽すぎるのだ。

それなのに法務省は、ひき逃げに対しては、危険運転致死傷罪を適用することは検討していないという。なぜなら、危険運転致死傷罪というのは、「故意に悪質で危険な運転行為を行ったことにより人を死傷させた者を重く処罰するもの」なので、事故を起こしてから犯した卑劣な行為に対しては、適用できないとのことらしい。
それじゃあ、ひき逃げに対する特別な刑罰を作ればいいじゃないか。それくらい簡単なことだろう。ひき逃げは即刻死刑にすればいいじゃないか。どうして法務省は腰が重いんだ。

麻薬に対する厳しい刑罰が仕方ないとすれば、もっと卑劣な犯罪に対する刑罰も厳しくして欲しい。

(2006.6.1)



〜おしまい〜





独り言のメニューへ