村上ファンド捜査

〜 功績は否定してはならない 〜



ついに元通産官僚の総会屋村上世彰に捜査の手が入った
あっちこっちの企業の株を買い占めては厳しい要求を突きつけて高値で引き取らせて大儲けするという手法で業績を伸ばしてきた総会屋村上世彰の活動が、なぜ野放しにされているのか極めて不可解だったので、今回の捜査は当然というか遅すぎるくらいだ。誰がどう見ても総会屋の手口なのに、単に元通産官僚というだけで捜査当局は遠慮していたのではないか。少なくとも、ライブドア関係者が大量に逮捕されたんだから、バランスから言えば、総会屋村上世彰も捕まって当然だろう。

今回の直接の容疑は、ライブドアが主役となった去年のニッポン放送株の売買を巡るものだ。総会屋村上世彰は、ライブドアがニッポン放送株を大量に買い占める前に、大量に株を購入していた。これについて、総会屋村上世彰はライブドアによる買い占め計画を事前に知っていた可能性があり、インサイダー取引に当たる疑いがあるのだ。ライブドアによるニッポン放送株買い占めは一般のマスコミまで巻き込んだ大騒動だったが、そこに総会屋村上世彰の影まで見えたことには、大きな疑惑が感じられた。明らかに大もうけを企んで騒動につけ込んできた、って感じだった。あのとき、なんでもっと疑問視されなかったのか不思議だったが、ライブドアのニッポン放送株買い占め自体が大騒動だったので、埋もれてしまった。

この事件に限らず、総会屋村上世彰がボロ儲けしてきた手法とは、経営資源を十分に活かしていないために株価が低迷している企業の株を買い占め、「経営資源を有効に活用するか、それができないのであれば株主に還元せよ」と強引に迫り、結局は、高値で株を引き取らせるというものだ。総会屋の総会屋たるゆえんだ。投資ファンドなんだから儲けるのが仕事であり、素晴らしい実績を上げているのだが、手口は古くからの総会屋だ

おまけに、最近の話題と言えば、我がタイガースの親会社の阪神電鉄の買い占めだ。阪神電鉄の経営が良くなって安定し、タイガースにも良い影響があるのなら、今の無能な経営陣をクビにして空気を入れ換えるのに異論は無いが、金儲けの事しか考えない総会屋村上世彰の手口を考えると、会社は解体されてタイガースの行く末も予断を許さなくなってしまうので、これには断固反対だ。

なので、総会屋村上世彰がシンガポールに逃げる前に逮捕されて、死刑になろうが北朝鮮に島流しになろうが、全く同情の余地は無いし、気分もスッキリだ。ざまあみろ。

しかーし!
総会屋村上世彰が死刑になろうが島流しになろうが、日本の経営者達に大きな緊張感を与えた彼の業績を否定してはいけない

総会屋村上世彰の言う事は一理ある。「果たすべき企業努力をせず、情報公開も十分ではなく、株主に対する義務を果たさない企業を、物申す株主として厳しく育てる」なーんて素晴らしいきれい事を言っている。これは正論だ。もちろん、言う事はきれいだが、結局は、自分は株を高値で買い取らせて大儲けする事だけを考えている総会屋であり、自分の儲けだけを考えて利己的に行動しているんだけど、結果的に他の株主にとっても利益はある。
阪神電鉄にしたって、これまでの経営者は超保守的な地味な経営を行ってきており、経営資源を十分に活用してきたとは言えない。経営が良いか悪いかを判断するのは株主であり、阪神電鉄の株価が長年低迷してきたのは、経営陣の姿勢が評価されていないからだ。

株を買い占められる経営者にとっては、総会屋村上世彰は100%悪者だが、株主にとっては、それまで経営資源を活かせてなかった無能な経営者と比べて、必ずしも悪くはない。て言うか、これまで声を上げられなかった株主の意見を実現してくれた救世主かもしれない。使い道が無いくせに多額の資金を貯め込んでいた企業が、総会屋村上世彰の脅しに屈して多額の配当を行ったりしているが、これは株主にとって悪い事ではないだろう。他の株主は、同じような事を考えていてもなかなか行動を起こせなかったのが、総会屋村上世彰は脅しやはったりで声高に要求するので、通用してきたのだ。

ライブドアも同じだけど総会屋村上世彰に対する経済界からの批判は、的はずれなものが多い。「資本主義の悪い面が出ている」なんて意見が多いが、どこが悪い面なのか、さっぱり分からない。単に、自分が買収されたくないから、こういった敵対的買収を「悪い面」と言っているだ。自分の会社が敵対的に買収されるのは嫌だろうが、それが資本主義の悪い面とは言えないだろう。資本主義は市場により効率性を追求するシステムであり、買収して効率的に運営しようとするから企業買収するのであり、それを否定するのは資本主義そのものを否定することになる。資本主義を否定するのも勝手だが、それなら株式会社という形態自体を見直さなければならない。敵対的な買収が嫌なら、上場を廃止するしかない。上場しておきながら「買収は駄目だ」なんて言うのは、全く矛盾した希望だ。
「敵対的な買収が日本の風土になじむかは疑問だ」との意見もあるが、敵対的買収が日本の風土になじまなければ、その買収は良い結果をもたらさない訳だから、買収したって価値は上がらない。買収して価値が上がると判断したから敵対的に買収しているのであり、日本の風土に馴染むか馴染まないかなんて関係ない。「安易なM&Aは既存株主にとって企業価値を低下させることになりかねない」なんていう的はずれな批判もあるが、企業価値を低下させるようなことを買収側がするわけない。そんな事をすれば自分が損するんだから。
買収されて価値が上がるということは、今の経営陣が能なしだという事である。買収する側は、今の経営陣を入れ替えて企業価値を高めることにより、利益を出そうとしているのだ。今の経営陣にとっては、自分のクビが危なくなるから、買収に反対するのは当然だが、株主としては、何も現行の経営陣に同情する必要はない。能なし経営陣のせいで、企業価値が低くなっているからだ。

阪神電鉄の場合などは、「買収した会社をバラバラに切り売りして儲けるだけ」との声もある。阪神電鉄がタイガースを上場させて株式を手放すと、球団の独立性が高まり、阪神電鉄の企業価値は下がるかもしれない。しかし、タイガースを手放せば阪神電鉄の価値は大きく下がるだろうけど、手放す時に多額の利益は得られる。トータルとして利益が得られれば、株主としては喜ばしいことだ。
一般的に言えば、バラバラに切り売りして儲けることが出来るってことは、株主にとっては、その方が利益があるってことだ。今の形態にしがみついている経営陣が能なしだという事であり、今の形態よりもバラバラにした方が良いということだ。PBRが1を割り込んでいる(株式の時価総額が純資産よりも少ない)悲しい会社が日本には大量に存在する。これなんか、バラバラにして切り売りした方が、はるかに利益になるっていう典型だ。

これまで株式の持ち合いなどにより、大多数の企業は株主の声なんて気にしないで経営されてきた。その結果、多くの企業で非効率的な資産運用が行われてきた。もちろん、世界を相手に戦っている日本の製造業は、研究開発から生産システムまで、血の滲むような努力を重ねて切磋琢磨してきた結果、非常に強い競争力を持っている。しかし、個々の製品や分野を見ると強くても、企業全体として見た時の資産の効率性は、必ずしも最適ではない。こんな部門は赤字垂れ流しが改善する見込みも無いんだから、さっさと手放した方が良いと思われるような部門でも、企業全体の業績が良い限り、なかなか手放さない。整理に手を付けるのは会社全体が傾きかけてからだ。口先だけ「株主のための経営」なんて言いながら、実際には株主の事なんて考えてこなかった日本の経営者達に、本当の意味での株主重視の視点を訴える総会屋村上世彰の存在価値は大きい

その意味で総会屋村上世彰が逮捕されて北朝鮮に送られて死刑になるのは、誠に惜しいことだ。
(どっちやねん!)

(2006.6.2)



〜おしまい〜





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