商業捕鯨再開問題

〜 膠着状態は打破できるか? 〜



カリブ海の島国セントクリストファー・ネビスで開かれている国際捕鯨委員会(IWC)が、1982年に決定した商業捕鯨一時禁止(モラトリアム)は「もはや必要ない」なんていう、商業捕鯨再開を支持する内容の宣言を賛成33、反対32、棄権1の1票差で採択したIWCのこれまでの経緯を考えると、ちょっと考えられない画期的な宣言だ。

IWCでは、商業捕鯨再開などの重要事項の決定には4分の3以上の賛成が必要なため、今回の宣言に拘束力はなく、商業捕鯨の再開に直接つながるものではない。ただ、四半世紀ぶりに、捕鯨支持が反捕鯨を上回ったことは、ちょっと前なら考えられない状態だ。

そもそもIWCは、商業捕鯨と資源保護について冷静に議論するべき場だった。それがイギリスやオーストラリアなど反捕鯨国の陰謀で1982年に何の関係も無い反捕鯨国が大量に新規加盟して、商業捕鯨の一時停止が決まってしまった。捕鯨どころか海さえ無いような国がIWCで捕鯨反対票を投じて日本などの商業捕鯨を妨害するという誠に不毛な構図ができあがったのだ。
生真面目な日本は、ヒステリックな環境団体による科学的根拠に乏しい捕鯨害悪論などに対して、粘り強く反論してきたが、いくら科学的に反論しても、奴らは聞く耳は持たない。奴らは、キツネ刈りは大好きだけど、捕鯨にはあくまでも反対であり、理由なんて後から付けるだけなのだ。

クジラ類の中でも、ミンククジラ、ナガスクジラ、イワシクジラ、マッコウクジラなどは十分過ぎるほど資源が回復していることが科学調査ではっきりしている。さらに一方で、人類全体の年間漁獲量に匹敵する大量の魚類を、毎年クジラが餌として食べており、沿岸国の食料確保に影響を与えている。今や、世界自然保護基金(WWF)でさえも、厳密な資源管理下での捕鯨を容認している時代なのだ。
しかし、いくら科学的なデータを提示しても、反捕鯨国は「どんなにクジラが殖えても、一頭たりとも捕らせない」と開き直り始め、「商業捕鯨を進める制度の協議には応じない」と頑なな姿勢を変えようとしない。キツネは殺してもいいけど鯨は駄目だという独善的で自己中心的な信念だ。

今回の宣言は、まず、IWCが商業捕鯨再開に十分な機能を果たしていない現状に懸念を表明している。そらそうだ。だって反捕鯨国は、理由なんていらなくて、何が何でも捕鯨に反対しているだけだからだ。
そして宣言は、そもそもモラトリアム決定の経緯自体を「科学委員会の助言なく決定した」などと批判しており、IWCが1994年に、持続可能な捕鯨のための捕獲枠の計算方法や改訂管理方式を決定したことなどを根拠に「一時的な手段であるモラトリアムは、もはや必要ない」としている。

なぜ今回、日本が提案した宣言が採択されたかと言えば、日本の商業捕鯨再開に理解を示すカンボジアなどが新たに加盟して、捕鯨支持派が過半数に達したからだ。何のことはない、かつて反捕鯨国がやってきた多数派工作をやり返しただけだ。こんな事をやっていても、どうせ反捕鯨国は反発するだけだし、さらなる多数派工作の仕返しがあるかもしれない。もともと捕鯨に興味も無ければ利害も無いような国がIWCにいること自体がおかしい。

このため日本は、IWCでいくら議論しても意味が無いと見切りをつけ、IWCの枠外での正常化に向けて動き始めている。日本は「特定の国を排除するものではない」としており、商業捕鯨に批判的な米国も参加の意向だが、オーストラリアやニュージーランドなど強硬な反捕鯨国は参加しないようだ。いずれにしても、クジラ資源の保護に本当に意味のある議論を期待したい。

それにしても、オーストラリアには腹が立つ自分達は先住民であるアボリジニの土地を収奪し徹底的に虐げてきたくせに、動物のクジラは、やたら大切にしようとする。ワールドカップだって、国内のサッカー人気はいまいちなんだから、出場できただけで満足すればいいのに、日本に逆転勝ちするし。東チモールに対しても、本当は国益のためなのに、正義派づらして軍を派遣してインドネシアから独立させ、混乱を引き起こしているし。あまりにも身勝手すぎるぞ。

(2006.6.20)



〜おしまい〜





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