日銀総裁の疑惑

〜 究極のインサイダー取引 〜



証券取引法違反(インサイダー容疑)で逮捕された総会屋村上世彰が運用する村上ファンドに、日本銀行の福井総裁が1000万円を投資していた問題で、あちこちから叩かれている。
福井総裁は村上ファンドに1000万円を投資していたが、運用益が加算されて今では2200万円に増えているとのことだ。わずか6年あまりで2倍以上だから、すごい運用益だ。さすがは総会屋村上の面目躍如だわさ。

福井総裁が総会屋村上と知り合ったのは、福井総裁が日銀を辞めて1998年に富士通総研理事長に就任した直後だ。富士通総研が、通産省にいた総会屋村上からアドバイスを受けていた経緯があったからだ。その後、通産省をやめ、ファンド設立に動いた総会屋村上に対し、福井総裁は「日本のコーポレートガバナンスの改革のために先頭を切り開こうとしている」と評価し、「激励のため」と称して、1999年秋に富士通総研の有志で1000万円ずつ運用資金として拠出した。村上ファンドは、普通は個人客は投資できないんだけど、こういう事情で福井総裁はポケットマネーを投資したのだ。ここまでは、何の問題も無い話だ。
実は福井総裁は、村上ファンドのコーポレートガバナンスに関するアドバイザーも無報酬で務めていたが、2003年3月の日銀総裁就任時に辞任した。この時に拠出金も清算すれば良かったのだが、「清算するのも一つの考え方だが、富士通総研の有志の中で、私だけが抜け出すことについては、仲間内の意識もあった」なんて弁明している。
そのくせ、この2月には解約を申し出ている。なぜ、この時期に、という疑問が出るのは当然だ。村上ファンドに対する捜査当局の動きを内々で聞いていたのではないかとの疑念を晴らさねばならないが、明確な答弁はされていない。

以上の経緯に対し、日銀は違法行為はないとの判断しており、福井総裁自身も「投資は利殖目的でなく、日銀の内規には触れない」としている。小泉首相ら政府関係者も問題視しない姿勢だ。日銀の行員の服務を定めた日銀法や、内規にあたる日本銀行員の心得に抵触しないとの立場だ。
ただし、この心得は個人的利殖行為を規制しているんだけど、ここで言う利殖行為とは「職務上知りえた秘密をもって投資し、個人の利益を図るインサイダー行為」を指すらしく、当たり前すぎる規制だ。そんなものは心得で規制しなくても、法律で禁止されているぞ。福井総裁は拠出金の運用について「完全な一任勘定で、利殖の対象として操作できるものではない」と説明しており、日銀総務人事局は内規違反に当たらないと判断しているが、あんまり突っ張りにはならないだろうな。
この心得ではさらに、株取引などの所得について、局長級の職員に所属長への報告を義務づけ、所属長自身の場合は「コンプライアンス会議の審議を経て総裁が役職員の中から定める者に報告する」と定めている。福井総裁ら役員も対象で、「ファンドへの拠出から得た所得などは適正に報告されている」とのことなので、形式的には問題ないだろう。
もちろん、民主党など野党は納得せず、福井総裁の辞任を要求しているが、民主党の松井参院議員が村上ファンドの関連会社に私設秘書給与を肩代わりさせていたことが明るみになったこともあり、どこまで追求できるか不透明だ。
ただ、個人的には、小沢民主党には、もっと大きな事で議論して欲しい。小泉政権の後は、小沢政権も見てみたい私としては、日銀総裁の小遣い稼ぎのような矮小な問題ではなく、もっと大きな本質的な政策論争で勝負して欲しい。どうでもいいような小さなスキャンダルを捕まえてキャンキャン言っているようでは社民党と同じだ。反対のための反対に終始する旧社会党系を切って民主党を作ったのだから、次元の低い争いはして欲しくない。偽メール問題の二の舞になるぞ。

そもそも、今回の問題自体は大した問題ではない。村上ファンドだから問題になっただけであり、これが普通のファンドだったら誰も問題視しなかっただろう。辞任しろ、というのは村上ファンドに対するやっかみに起因した過剰反応だ。こんな事でいちいち日銀総裁が辞任する必要は、全く無い。
ただし、だからと言って、今回の日銀総裁の行為を容認するわけでは、ない。て言うか、今回の村上ファンドの問題ではない。そうではなくて、そもそも日銀総裁が、いかなる金融商品であろうが、投資をしていいのか、ということだ。

日銀とは何をするところだろう。お金を刷っているだけではない。一番重要な仕事は金利を決める事だ。もし日銀総裁が国債を持っていたとしよう。そして彼の一存で市場金利を低く誘導したら、彼の持っている国債の値段は上がる。これは究極のインサイダー取引だ。逆でもいい。そろそろ金利を上げようかなあ、なんて考えて、その前に国債を売り払ったら、やはりインサイダー取引だ。金融商品の中で一番インサイダー取引と縁の無さそうな国債でも、日銀総裁になればインサイダー取引が成立しうるのだ。何も国債に限った話ではなく、どんな債権を持っていたとしても、効果は同じだ。さらに株式相場にしたって債券相場と密接な関係にある。金利を下げれば資金は債権から株式に向かい、株式相場は上がるだろう。事実、福井総裁は総裁就任後、積極的な金融緩和を進め、量的緩和政策で市場に大量の資金を供給したが、市場で余った資金は投資ファンドなどに向かったため、村上ファンドなどの資金運用を下支えした側面は否定できない。
このように日銀総裁の役割というのは極めて重く、あらゆる金融市場に多大な影響力を及ぼすそのような人が金融商品に投資をするというのは、対象が何であれインサイダー取引である。間違いない。総裁に限らない。いやしくも日銀の行員であれば、多かれ少なかれ日本の金融政策に影響を及ぼしているのだから、どんな投資でもインサイダー取引と言われても仕方ない。

福井総裁が村上ファンドに出資したのは民間企業時代だからいいとして、日銀総裁になった時点で全て清算すべきだっただろう。さらに、総裁に限らず、日銀の職員は金融商品に対する投資は禁止すべきだろう
中央省庁の官僚の場合、株取引については国家公務員倫理法は規制があり、各府省庁の審議官級以上の幹部職員が株の売買をした場合には、毎年、報告書を各府省庁に提出することを義務付けている。さらに、過去に株取引などを巡る不祥事があったことから、所管業界の企業の株取引を職員に禁じたり、所管以外でも管理職には株式の6カ月以内の売買や信用取引などを禁止している省庁もある。
しかし、株以外の投資に関しては野放しだ。これも規制の必要があるのではないだろうか。あらゆる金融商品は連動しており、それらは政府の政策や統計に大きな影響を受けるからだ。


それから、おまけだが、今回の事件は、功罪相半ばする総会屋村上が関係しているから大騒ぎになっているが、そういう意味では、もっと悪質な奴がいるのを忘れてはならない。日本振興銀行という怪しい銀行の木村剛という悪い男だ。
こいつは竹中平蔵のブレーンなんだけど、竹中平蔵以上に悪い奴だ。竹中平蔵は矛盾した金融行政を進めることによって日本の金融業界に大混乱を引き起こし、混乱に乗じてあくどく荒稼ぎする外資や新興勢力から資金を得ており、これはこれで日本経済に対する大罪とも言えるものだが、法律違反はしていない。自分たちが都合の良い法律を作っているからだ。そして、木村剛は竹中平蔵のブレーンとして金融行政で強硬路線を主導してメガバンクを震え上がらせる一方で、自ら中小企業専門に融資する日本振興銀行という悪どい貸金業を設立し、私腹を肥やしている。そして、この目つきも卑しい木村剛は日銀時代に福井総裁の部下だったことから、とても仲良しだ。
総会屋村上は、マスコミからは叩かれてばっかりだが、日本の経営者に緊張感をもたらしたという意味で大きな功績がある。それに比べて陰険な木村剛は、姑息に私腹を肥やすしか能がない。総会屋村上やライブドアの堀江社長の行為が犯罪だと言うのなら、木村の行為は200%間違いなく犯罪だ。それなのに、竹中平蔵とグルだから捕まらない。こいつらは、日本の金融を自分達に都合の良いように勝手に操る金融ヤクザだ。

それからそれから、さらにおまけだけど、オリックス宮内氏も追求したい
オリックスは村上ファンド創生期から大きく関わっており、今でも多額の資金を投資している。それだけなら別にいいんだけど、彼は政府の規制改革・民間開放推進会議の議長を務めている。そして、彼の意見は小泉首相に重宝がられて政策に反映されるのだ。役人が自分達の利権を守るだけの規制は徹底的に廃止しなければならないし、役人が高い人件費で非効率にやっている仕事を民間解放することも不可欠ではあるが、よおく見ていると、当然ではあるが、宮内氏は自分のビジネスに都合の良いような政策ばかり提言している。当たり前ではあるが、自分が儲けられるようなスキームしか提案しない。広く民間企業を代表して言っているのではなく、あくまでも自分の利益だけを考えて行動している。
武中平蔵といい、宮内氏といい、小泉政権には悪い奴らが多い。(もちろん、小泉政権以前の政権には、もっともっと悪い奴らが群がっていたのだけど)
小泉政権は大いに評価するのだけど、ここらへんで一度、民主党に政権交代して、悪い奴らを排除して欲しい。

(2006.6.23)



〜おしまい〜





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