北朝鮮ミサイル発射 C

〜 不可解な国連 〜



国際情勢がどんどん変わっちゃうので、よい子の不可解シリーズも第4弾になっちゃいました。

まず、北朝鮮のミサイル発射に対する国連での決議なんだけど、日本が米英仏などと一緒に国連安全保障理事会に提出した北朝鮮に対する制裁決議案は、中国とロシアの反対にあって見通しが立たなくなっていた。単なる非難決議なら中国やロシアも目をつぶったかもしれないが、国連憲章に基づく実効力を伴う制裁条項が盛り込まれていたから、中国やロシアは強い抵抗を示した。最初は、「ロシアはサミットの議長国をつとめるので、露骨に反対できず棄権に回るだろう」とか、「ロシアが棄権すれば、中国だけ一人反対する訳にはいかないだろう」なんて楽観論も出ていたが、予想外に両国の反対は強かった。
で、「中国が北朝鮮を説得するからしばらく待とう」だとか言いながら膠着状態になって空中分解するのかと思っていたら、意外にも両国は早々に別の非難決議案を出してきた。で、ここへ来て、日本なども制裁条項にはこだわらず、中国とロシアが提示した非難決議案との一本化を図る方針を固めて調整を始めた。これまで北朝鮮を属国のように扱って庇護してきた両国が自ら非難決議を出すということは、考えてみれば画期的な事であり、アメリカや日本なども、このあたりで妥協してもいいのかもしれないと思ったのだろう。

現実的な落としどころとしては、こんなものだろうと思うし、特に感想もない。好きにやって、って感じ。ただ、1つだけ言っておきたいことがある。国連の決議なんて、ほとんど何の意味も無いってことだ。
北朝鮮に対する国連の決議について、日本のマスコミは連日、とても大きく報道してきたので、ぼうっとテレビを見ていると、国連での決議って、すごく重大なものであり、決議が採択されれば、北朝鮮に対してものすごく大きな力を持つかのごとく錯覚させられてしまう。北朝鮮に対し、全世界が一丸となって非難して制裁をするかのごとく。
しかーし、そんな事はない。国連の決議なんて、ほとんど何の意味も効力も無い。

国連決議の無意味さを象徴するような事態が、日本ではロクに報道もされないまま進行している。日本では今、北朝鮮のミサイル発射が世界の平和にとって重大な危機であるかのごとく報道されているが、世界では、もっと重大な平和の危機が進行している。ていうか、既に平和じゃなくて戦争が始まっている。イスラエルによるレバノン攻撃だ。そして、日本国内が北朝鮮に対する決議で大騒ぎしている間に、イスラエルのパレスチナ人殺戮に反対する決議が即座に出され、そして即座に否決された。とてもあっさりと。それくらい国連の決議って軽いものなのだ。

日本でぼうっとしていると、世界の関心が全て北朝鮮に注がれているかのごとく錯覚しちゃうけど、世界の大半は北朝鮮には関心はない。関心があるのは、日本と韓国の両国民と、アメリカ、中国、ロシアの政界だけだ。だって北朝鮮が攻撃する可能性があるのって、日本と韓国だけだもんな。アメリカや中国でも国民は無関心だ。今、世界平和の危機は、誰が見ても北朝鮮ではなく中東情勢だ。

国連の決議にしたって、北朝鮮の単なるミサイル発射実験よりも、中東情勢の方がはるかに深刻なはずだ。北朝鮮の場合、あくまでもミサイル発射実験である。しかも海に向けた発射実験だ。一番近かったのは日本でもアメリカでもなくロシアだった。なので、北朝鮮が「単なる実験だ。日本やアメリカは関係ない」と言い張っているのに対して、論破するのは容易ではない。そもそもミサイルの発射実験そのものは国際法違反でも何でもないし。
しかしイスラエルによるパレスチナ人殺戮は、誰がどう見ても、実際に行われている重大な人類に対する犯罪行為だ。現実なんだから言い訳のしようがない。ユダヤ人はアラブ人の命なんて虫けらのようにしか思ってないから、全く平気で殺しまくっている。今回の騒動も、元はと言えば、子供を含むパレスチナ人がビーチでくつろいでいたところをユダヤ人が無差別に攻撃して多数の死傷者を出した事が原因だ。パレスチナ人側は、その仕返しでユダヤ人を襲撃したり人質を取ったりしただけだ。それなのに、さらにその仕返しでユダヤ人は大規模な殺戮をくり返している。まさに負の拡大連鎖反応である。北朝鮮が海にミサイルを落としたのとは全く次元の異なる現実の大殺戮が起きているのだ。

このようなユダヤ人の残忍な行為に対しては、当然の事ながら、いつも毎度のように非難の声があがる。これまでもそうだったし、今回もそうだ。今回はカタールが声をあげた。カタールが国連安全保障理事会にイスラエルの軍事行動の中止を求める決議案を出したのだ。これに対して、中国やロシアはもちろん、日本やフランスだって賛成したけど、アメリカ1国が拒否権を行使したために否決されてしまった。ちなみにイギリス、デンマーク、ペルー、スロバキアの4ヶ国は棄権した。
このような結果は何も珍しいことではなく、イスラエルを非難するような決議に対しては、これまでも500万回くらい、アメリカはことごとく拒否権を行使して葬ってきた。せいぜいイギリスなどの同盟国が棄権するだけで、常にアメリカだけが反対するのが決まり切った図式だ。アメリカはユダヤ人が好きだから仕方ないことだ。そしてそれは、決議案を出したカタールだって、こうなることは最初から分かり切ったことだ。分かり切っていてもアラブ人の同胞が殺戮されているので出さないわけにはいかんし、アメリカの孤立ぶりをあぶり出すという意味合いもある。

しかし、アメリカは、自分だけが反対であっても、屁とも思っていない。アメリカは圧倒的な唯一の超大国であり、全世界が反対したって、屁とも思っていない。アメリカと全世界が戦争したって、アメリカの圧勝だろう。て言うか、アメリカ以外の全滅だろう。実はアメリカは国連自体を屁とも思っていない。何年か前は分担金の支払いを止めていたくらいだ。
これは、逆に考えれば、実はアメリカは、北朝鮮のミサイル発射に対する非難決議だって、どこまで真剣に考えているか分からない。というか、分かっている。あんまり真剣には考えていないはずだ。だって、一方でイスラエルを非難する決議に拒否権を使ってあっさりと反対してるんだから、真剣な訳ないじゃない。
日本は「ロシアが棄権すれば、中国は孤立を避けるために、自分だけ拒否権を使うことは無いだろう」なんて根拠のない見通しを持っていたが、アメリカの行動を見れば、そんなん屁のつっぱりにならないことがよく分かる。5大国は、世界平和のために行動しているのではなく、自分の利益だけを考えて行動しているのであり、拒否権を使うことに何のためらいもない

そもそも、国連安全保障理事会の決議って、可決されたとしても、どれだけの意味があるのか。決議があったら何か変わるのか。
そもそも国連って何よ。国連なんて会議体であり、国連という実行部隊があるわけではない。加盟国が何かをしなければ、いくら決議したって何も動きはしない。決議に従って加盟国が動いて、初めて実効が伴う。逆に言えば、国連で決議されなくても、加盟国が勝手に動けば、事態は進む。あのイラク戦争だって、最初は安保理での決議が求められ、当然のように拒否権行使にあって否決されたけど、アメリカは無視して同盟国と一緒に一方的に攻め込んだわけだ。
あの時、イラクは、まさにアメリカを攻撃しようとしていた訳ではない。潜在的に悪いことをしそうな国だっただけだ。北朝鮮も全く同じ。だから北朝鮮に対してだって、国連で意味のない決議するより、今すぐにでも、アメリカが同盟国を募って攻めていけば話は早い。たぶん、中国やロシアも、非難はするだろうが、アメリカと正面から戦おうとはしないだろうし。
5大国は互いに非難し合ってきたけど、さすがに面と向かって正面衝突する事は少ない。ソ連がアフガニスタンに侵攻した時も、アメリカがグレナダやパナマに侵攻した時も、互いに激しく非難はするけど、すぐに対抗して軍を派遣したりはしない。そなな事したら全面戦争になっちゃうもんな。アメリカと中国が戦った朝鮮戦争は過去の話だ。

このように、国連の決議なんて、ほとんど意味を持たない。可決されても否決されても北朝鮮は変わりはしない。国連憲章に基づく実効力を伴う制裁条項が盛り込まれた決議が可決されたとしても、それを中国やロシアが守らなければ、何の意味も無い。なぜなら今や北朝鮮の貿易の大半は中国やロシアが相手であり、日本との貿易は少なくなっているからだ。そして、決議を無視したからと言って中国やロシアを制裁することなんて、国連にはできるわけがないのだ。
日本は国連の決議過大な期待をするのはやめよう。無責任なマスコミの報道を鵜呑みにして過大な期待をして後悔するのは、トリノオリンピックワールドカップでおしまいにしよう!

(2006.7.14)



〜おしまい〜





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