人を喰う自動車

〜 自動化の危険性 〜



トヨタ自動車の高級乗用車セルシオで、半ドアの状態からドアを自動的に閉める補助装置イージークローザーの作動により、ドアに指を挟まれるなどの事故が全国で18件起き、そのうち9件は手の指を骨折するなど重傷を負う事故だったことがわかった。
このイージークローザーと言うのは、ドアが完全に閉まる7ミリ手前になるとセンサーが作動して、モーターにより自動的にドアを閉める装置だ。つまり、中途半端にドアを閉めて半ドア状態になっても、あとは自動で閉まってくれるという仕組みだ。セルシオの場合は、前後4か所のドアとトランクに装備されているが、同じ様な補助装置はベンツやBMWなどの高級車にも装備されている。

(石材店)「えらくマイナーな事件を取り上げますね」
(幹事長)「何を言うかっ!これは私の中では一大テーマなのじゃっ!
       機械の自動化がどんどん進みすぎて、大変危険な世の中になっているのじゃっ!」
(石材店)「文明を拒む老人の発想ですか?」


文明を拒む訳ではない。メリットと危険性のバランスの問題だ。これまでも何度も指摘してきたが、余りにも技術が進みすぎて、何でもかんでも自動化されて便利になった反面、これら自動技術は大きな危険性をはらんでいるのだ。
自動車の窓の開閉は、今は100%近くパワーウィンドになっているが、僕は今でもこれが怖い。自分は怖くないけど、子供が間違って首でもはさまれないか、怖くて仕方ない。ミニバンのスライドドアも自動のものが当たり前になってきたが、これも非常に怖い。一応、挟み込み防止センサーはついているが、実際に事故を防げるような代物ではない。今乗っているミニバンを買う時に、かなりしつこくチェックしたし質問もしたけど、絶対に信頼できないと確信して手動のものを買った。今回のセルシオのイージークローザーも全く同じだ。怖い。怖すぎる。余りにも怖すぎる。

機械の危険性という事で言えば、もちろん、自動車そのものが大変危険な物だ。しかし、自動車そのものには、リスクと天秤にかけても十分すぎるお釣りがくる程のメリットがある。しかし、パワーウィンドに、危険性を許容してもいいだけのメリットがあるだろうか。百歩譲ってパワーウィンドには、メリットがあるとしても、イージークローザーに至っては、そななメリットは全くない。半ドアになったら閉め直せばいいだけだっ!半ドアを閉め直すことも出来ないような奴は車に乗るなっ!

自動車はどんどん進化している。最近は、前を走る車にぶつかりそうになったら自動的にブレーキがかかるような仕組みも実装され始めている。これなんかは、素人が考えたって、とっくの昔に実用化されておかしくないレベルの技術なので、なぜ今まで実装されてこなかったのか不思議なくらいだけど、実はこれも大変怖い。まず、誤作動が怖い。誤作動の怖さは、最近ではエレベーター事故で身にしみているはずだ。コンピューターに制御されたシステムは、完全なブラックボックス化しており、バグが無いとは誰も言いきれないし、バグがあっても事故が起きるまで誰も分からない。炊飯器の自動装置が壊れて米が炊けなかった、っていうくらいなら、腹は立つけど致命的ではない。でも自動車のシステムが誤作動するのは、とても怖い。とんでもない場面で急ブレーキがかかってしまう危険性がある。それから、人間が機械に頼りすぎるようになるのも怖い。機械が自動的にブレーキをかけてくれると信じ込んで、いい加減な運転をし始めるのが怖い。もし機械がうまく働かなかったら、おしまいだ。

いくら危険性があっても、大きなメリットがもたらされる技術は大歓迎だ。気を付けながらも使う意味がある。しかし、単に危険性があるだけで、ロクでもないような機能は撲滅すべきだ
さらに言えば、危険性だけではない。AV機器などに共通する問題だけど、他社製品との違いを出すために、ほとんど誰も使わないようなどうでもいい機能や、ややこしいだけで使い物にならない下らない機能を搭載するのはやめて、もっとシンプルで信頼性の高いシステムにして欲しい。世の中、明らかに間違った方向に進化している。
自動車にしてもAV機器にしてもエレベーターにしても何にしても、その機械がどういう理由でどのような仕組みで動いているのか体感できるのが望ましい。そうでなければ怖くて仕方ない。


(石材店)「幹事長、大変です!洗濯機の脱水槽の回転が止まらなくて、回転している洗濯物に手が巻き込まれて
       指が切断される事故も多発しているそうですよ」
(幹事長)「なんとかーっ!想像を絶する事故やなあ。そんな事が起こりうるのか」


この事故は、別にハイテクでも無ければブラックボックスでもないし、一体なにが起こったのか。
普通なら、脱水が終わる前に蓋を開けた場合、ブレーキが働いてすぐに回転が停止するのだけど、ブレーキ部品が消耗していたため、停止するまでに何十秒もかかる状態だったらしい。それを知らずに、すぐ停止すると思って手を突っ込んで洗濯物を取り出そうとしたため、回転している衣類が指に絡まり、指が引きちぎられたという事故だ。
これは、まあ、何というか、使い方が悪かったとしか言いようがないわなあ。なんで自動で停止する前に開けたのか?急いでいたのか?そうだとしても、自動で停止する前に手動でスイッチを切って停止するのを待てばいいのに、それすらせずに、強引に蓋を開けてブレーキを効かせて停止させようとしたのは、機械を舐めすぎているというか何というか。
ちょっと今回のテーマとはかけ離れているけど、彼女らにとっては、たかが洗濯機でも、ブラックボックス化していたのかもしれない。

(2006.11.8)



〜おしまい〜





独り言のメニューへ