安倍政権の混迷

〜 改革路線の後退 〜



圧倒的な国民の支持を誇った小泉政権正当な後継者として華々しくデビューした安倍政権だが、全く見るも無惨な混迷ぶりだ。

まずは郵政造反組の自民党復党問題だ。これについては、呆れて物も言えないが、僕と同じ意見がマスコミにも溢れていたので、あえてここでは書かなかった。

(石材店)「あれ?そうなんですか?てっきりサボっていたのかと思った」
(幹事長)「確かに最近、割と忙しくて・・・」

しかし、この際、念を押す意味で一言だけ述べましょう。郵政造反組の自民党復党は、はっきり言って小泉改革路線の否定だ。いくら安倍首相が言い訳しようとも、明らかに改革路線の全面否定だ。
郵政造反組は「たった一度だけ郵政民営化に反対しただけで自民党から永久に追放されるなんてひどすぎる」と訴えてきたし、彼らを受け入れようとする自民党の守旧派も「たかが郵政民営化だけの問題で、造反議員を全面否定するのはおかしい」とかばっている。
しかし、そうではない。「たかが郵政」ではない。郵政民営化は全ての象徴なのだ。昨年の選挙のとき、民主党は「郵政なんて大問題じゃない。もっと大事な問題がある」なんて正論を言い続けて大敗した。これは、郵政ごときの改革すらできないようでは、もっと大事な問題だって改革できる訳がないと思われたからだ。郵政民営化ごときに反対する政党に、他の改革なんてできやしない。多くの国民がそう思ったから、小泉自民党が圧勝し、民主党が惨敗したのだ。国民は、何も郵政民営化だけのために自民党に投票したのではない。郵政民営化に象徴される改革路線を圧倒的に支持したのだ。だから逆を言えば、郵政民営化に反対した造反議員を復党させるって事は、まさに改革路線の全面否定に他ならないのだ。
今回の復党騒動は、来年の参議院選挙を勝つためと言われている。しかし、それは甘い。考えが甘すぎる。確かに、一部の選挙区では、造反組の力を借りなければ当選できない参議院議員もいるだろう。しかし、小泉改革路線を圧倒的に支持してきた国民の自民党支持が、造反組復党により急速に離れている現実を見れば、失うものの方が、はるかに大きい。それくらい、あなた、子供でも分かるぞ。安倍政権って、ほんっとに頭の悪い連中の集団なのか。それとも、小泉のように、自分一人でもガンガンやれるだけの力が無くて、みんなの寄り合い所帯的な支持の上に乗っかっているだけの政権だから、みんなの言うことを聞かなければならないからか。

そして、今回の政府税制調査会長辞任だ。この事件そのものは、アホらしくて論評する気もおきないバカみたいな話だ。単に、政府税制調査会の本間会長が愛人と一緒に公務員官舎に入居していたというだけの話だ。これの一体どこが問題なのか、全く理解に苦しむ。彼は大阪大学の教授であり、大阪に住んでいたが、政府税制調査会長に任命されたから東京の公務員官舎に入った。そもそも国立大学である大阪大学の教授なんだから、何もおかしいことはない。そこに妻ではなくて愛人と一緒に住んだからといって、なんで問題になるんだ?そんなん、ほっといてくれ。

(石材店)「自分の事のように、えらくムキになって擁護してますねえ」
(幹事長)「こういう問題は誰にでも起こりうる問題だからな」
(石材店)「誰にでも、ですか?」


このような事がスキャンダルになるのは、世界広しと言えども日本とアメリカくらいのものだ。例えばフランスだったら、大統領が愛人と子供を作ったって、何の問題にもならなかった。なぜ日本とアメリカだけでスキャンダルになるのか?何も、この2つの国の道徳観が極めて高いからではない。そうでしょ?むしろ、この2つの国は、道徳観の極めて低い国だぞ。アメリカは何でもありの国だし、日本だって女子高生の援助交際全開の国だ。なぜ、このような国でスキャンダルになるのかと言えば、それはマスコミがアホな国だからだ。マスコミがアホな国は、売れれば何でもいいっていうスタンスで、無責任で独善的に、何でもかんでもセンセーショナルに報道しまくる。後の事なんて知ったことじゃない。
本間会長は「女性とは誠実に交際している」なーんてトンチンカンな説明していたけど、いくら誠実に交際していても、愛人では許してくれるような国ではない。

ま、しかし、それでも、首相が官邸に愛人と暮らしていたのならともかく、政府税制調査会長なら、この程度の話なら普通なら辞任する必要はなかっただろう。辞任に追い込まれた本当の理由は、自民党の大半が本間会長を嫌っていた事だ。本間会長を責める材料が何か無いか必死で探していたところに、うまく転がり込んできたスキャンダルだから、ここぞとばかりに大騒ぎして辞任に追い込んだのだ。そうでなければ、アホなマスコミを無視していれば済む程度の話だ。日銀の福井総裁のように。

なぜ本間会長は自民党に嫌われていたのか。当初、財務省の役人たちは消費税増税の必要性を強調する石弘光前会長の続投を画策していた。それを安倍首相は強引に更迭し、企業減税をテコに経済活性化を図るという方針の本間氏を会長にし、安倍政権の「上げ潮路線」を税制面からけん引する役割を期待したのだ。このため、税制の主導権を首相官邸と政府税制調査会に奪われつつあったことへの不快感や、経済成長と財政再建のどちらをより重視するのかという路線対立が渦巻き、本間会長への敵対ムードが充満していたのだ。

僕は、何も、本間路線を全面的に支持するものではない。まず企業減税を進めて経済を活性化させれば、最終的には税収も増えて財政も健全化する、っていうのは、ほんまかいな、という疑問が残る。そんなうまいこといくかいな?
確かに日本の法人税率は高い。もっと下げるべきだとは思う。しかし一方で、実際に税金を払っている法人の少なさを考えれば、税率の引き下げと同時に、売り上げ等を指標とした外形標準課税制度を導入すべきだ。企業が活動している限り、様々な形で行政サービスを受けているのだから、最低限の税金は払うのが義務だ。そうすれば、法人税率を下げても税収は短期的にも必ずしも減少しないだろう。

ま、本間路線をどう評価するかは置いといて、実は彼は小泉政権下で5年間も経済財政諮問会議の民間委員として構造改革に取り組んだ人なのだ。つまり、本間会長は小泉政権の改革路線を象徴する人間なのだ。
小泉政権は国民の圧倒的な支持により、自民党内の敵を徹底的に封じ込めてきた。敵というより、自民党の大半を封じ込めてきた。その小泉が去り、寄ってたかって支える安倍政権になったとたん、封じ込められていた声が一気に吹き出し、小泉改革路線を潰そうとしているのだ。

つまり、今回の本間会長辞任は、スキャンダルではなく、郵政民営化造反議員の復党と合わせて、小泉改革路線の全面否定なのだ。そして、いずれの問題に対しても、安倍首相はリーダーシップを発揮することなく、大勢の声に流されるがままだ。改革路線を維持しようとしているのは、小泉政権の武部幹事長と同じ役回りの中川幹事長くらいのものだ。
他にパッとした人がいない、っていう消去法で、国民の高い支持を得て発足した安倍政権だが、このように改革路線否定の流れが目につくようになると、もはや国民の支持を維持することはできないだろう。

(2006.12.22)



〜おしまい〜





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