脳内革命が破産

〜 ニセ科学を撲滅しよう 〜



10年ほど前に大ベストセラーとなった「脳内革命」の著者である春山茂雄破産した。彼は神奈川県で田園都市厚生病院(260床)を始め6法人を経営しているのだが、これら春山院長関連の法人に対して東京地裁が破産手続き開始を決定したことで、病院も閉鎖されることになるらしい。既に新規の外来診療は中止しており、現在入院している患者140人については転院先を探しているとのことだが、突然の話に多くの患者は驚いている。来月には職員の解雇などの手続きも完了するらしい。

破産管財人によると、負債は、春山院長個人分が約18億6000万円、6法人分が約63億円の計約81億6000万円って事だから、かなりトンデモナイ額だ。彼は「脳内革命」が1996年にベストセラーになった後、1998年に東京国税局から約6億5000万円の所得隠しを指摘されたりしていたが、そんなに荒稼ぎしておきながら、この莫大な借金はどこから出てきたのだろう?とっても不思議。

彼に対しては、かつて週刊文春が「脳内革命徹底追及」という記事で「脳内革命で500万人をだました春山茂雄の大罪」を糾弾していた。ただし、その内容は、彼が博士論文を代筆させたり、彼の病院では営利目的でずさんな治療が行われたりしている、などの批判であり、「脳内革命」というニセ学説そのものを糾弾するものではなかった。

しかし、とにかく、このニセ科学者が社会から退場するのは非常に喜ばしい。何てったって、あの当時、多くの人々が「脳内革命」に騙された。大脳生理学に基づいた、きちんとした科学的根拠のある学説だと思いこんでいた。

(石材店)「て言うか、今でもみんな信じてるんじゃないですか?」
(幹事長)「えっ?ほんと?」


そうか、多くの人は今でも嘘を信じているのか。
ま、彼の話の中身は「喜んだり楽しんだりすれば脳内に分泌される物質によって健康になる」なーんていう、たわいもない毒にも薬にもならないバカ話なので、実害は無いようにも思える。ていうか、むしろ「何でも前向きに考えて幸せに生きていこう」みたいな結論になるのなら、悪い話ではない。
ただし、それは宗教の領域である。まるで科学的根拠があるかのごとく嘘で固めたニセ学説というのは、ちょっとタチが悪い。単なる詐欺師の金儲けだ。そして、嘘で固めた治療法を実践するために病院を経営していたとなれば、これは実害まで出てくる可能性がある。例えば、もっと科学的な治療をしなければ助からない患者に対し、気持の持ち方だけで治療しようとすれば、治るはずはない。

このようなニセ科学は、実は氾濫している。例えばマイナスイオンだ。マイナスイオンだなんて、高校で化学を勉強したことのある理系の人間なら、最初っから「またアホな事を言うて」なんて相手にしてなかったが、いつまで経っても野放しではびこっている。

(幹事長)「文系の人間は、こなな意味の無いものをありがたがるのか?」
(石材店)「でも電器メーカーでマイナスイオン関連商品を作っているのは理系の人間ですよ!」


そうなのだ。そこなのだよ問題は。彼ら、電器メーカーでマイナスイオン関連商品を作っている理系の人間達は、自分達が意味の無い商品を作って大衆を騙して売ることに対して良心は痛まないのか?詐欺をやっているんだぞ?売ってるのが文系の人間だからって、罪が軽くなるわけではないぞ。
もちろん、メーカーは、犯罪にならないように気を付けている。どんな宣伝を見ても、「マイナスイオンを発生させる」とは書いているけど、それがどういう効果があるかは一切書いてない。「健康に良い」とか絶対に書いてない。だから「詐欺ではない」と言い張れるのだ。もちろん、電器屋の店員は「体にええでっせ」なんて臆面も無く話す。もしかして、彼らは全く理解できてなくて、嘘をついているという自覚も無いのかもしれないが。

これは「燃焼系」という名前の付いた飲料も同じだ。誰が見ても「これを飲めば体脂肪が燃焼されてダイエットになる」と勘違いするだろうけど、科学的な根拠は一切ない。百歩譲っても、無いに等しい。だから、詐欺だ。でも、名前は「燃焼系」でも、その名前の由来や意味は一切書いてない。「これを飲めば体脂肪が燃焼される」なんて、一言も書いてない。だから、この場合も、たぶん詐欺にはならない。
でもなあ、こんなん許していいのかなあ。

(2006.12.28)



〜おしまい〜





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