ガス漏れ死亡事故

〜 ガスは怖いか? 〜



北海道の北見市でガス漏れによる死亡事故が起きた。一酸化炭素中毒により3人が死亡したほか、重体2名をはじめ11人が負傷したのだ。

(石材店)「やっぱりガスは危険ですよねえ」
(幹事長)「日本全土からガスを一掃し、全国民オール電化計画に邁進しようぞ!」

と言いたいところだが、昔ならともかく、最近はガス中毒による死亡ってのは、そんなに頻繁にある事故ではない。それに電気にしたって、滅多に無いけど感電することもある。なのでガスは100%危険で、電気は100%安全だと言うつもりはない。

(石材店)「最近、妙に大人しいというか理解がありますねえ。
       でも今回の事故における北海道ガスの対応は糾弾すべきではないですか?」
(幹事長)「確かに、北海道ガスの対応は、素人には不可解とも思えるほど、まずいものだったなあ」


1人目の人が死んだのは1月18日だが、その前日の17日に現場の近くで「ガス警報器が作動した」という通報が北海道ガスに寄せられた。しかも2軒でだ。北海道ガスは、当然、現場に点検に行ったが、原因が分からなかったため、特に処置を施さなかったらしい。しかも驚いた事に、近所で同時に2軒も通報があったにもかかわらず、それらが関連したものだという発想が無かったとのことだ。ここが信じられないところだ。普通に考えれば、ほぼ同時に近所で2軒の通報があれば、辺り一面にかなりガスが充満していると判断するのではないか。それとも、ガス警報器の作動って、そんなに日常茶飯事で数多く発生しているのか?
この時点で北海道ガスが何らかの対応策を取っていれば、3人とも死なずに済んだだろうが、「よもや事故とは思わなかった」らしくて、警察や消防との連携を全く取らなかったた。
さらに、翌日の18日に1人目が死亡したのだが、その事実さえ19日に残りの2人が死亡するまで把握してなかった。ガス警報器が同時に近所で2軒も作動した翌日に、原因不明で1人が死亡したのに、全く掴んでなかったなんて、そんなもんかなあ
この時点でも、何らかの対応を取っていれば、後の2人は死亡せずに済んだのだが、何もしなかったため、翌々日の19日に2人が死亡したのだ。

北海道ガスは「18日に1人が死亡したという情報を警察か消防からもらっていれば、発見できたと思う」と言っているが、死亡原因が不明な時点で、警察からガス会社には情報は行かないだろう。それは逆であり、まずガス漏れ情報を先に警察や消防に流しておくべきだった。それなら1人が死亡した時点で、すぐに連絡が行き、後の2人の命は助かっただろう。

と言うことで、北海道ガスの対応は極めてまずかったと糾弾されるべきではある。なんちゅうても北海道ガスは地方ガス会社としては大手だ。全国には210の都市ガス会社があるが、北海道ガスの販売量は全国8位だ。札幌、小樽、函館など北海道の主要都市を供給エリアとする東証1部上場企業だ。ガス会社と言っても、小さなLP業者とは訳が違うのだ。そういう意味では、今回の危機管理は、素人が見ても不可解なほど、ずさんだ。またまた不二家のペコちゃんも、びっくり!


ただし、今回の事故は、北海道ガスには気の毒な点がある。それは、北見市のガス事業は、実は1年前まで北見市がやっていたという事実だ。何が問題かと言うと、安全なガスへの切替が進んでなかったという事だ。
従来、都市ガス供給で使われてきたガスは、プロパン、ブタンなど石炭、石油系を原料とするガスだが、この製造過程で一酸化炭素が発生するため、中毒を起こしてしまうのだ。一方、近年、切替が進んでいる天然ガスには一酸化炭素は含まれないため、漏れても中毒はしないのだ。もちろん、火災の原因になるのは同じだが、すくなくとも一酸化炭素中毒にならないだけでも安全性は大きく改善される。
現在、全国のガス会社で天然ガスへの切替が進んでおり、ペンギンズの地元の四国ガスも同様で、最近、天然ガスに切り替えられた。北海道ガスも同様で、大半に地域で天然ガスへの切替が終わっている。
ところが事故が起こった北見市は、ずっと市営だったため、切替の動きが無かったのだ。市は財政難で設備を更新するお金が無いから切り替えられなかったのだ。そして、最終的にガス供給をギブアップした北見市から北海道ガスへ、北見市でのガス供給事業が移管されたのだ。北海道ガスでは、北見市では2009年秋から切替を進める予定だったらしい。もっと早くできないのか、という声も聞こえてきそうだが、ガスを切り替えるには、当然、新たな設備工事も必要なため、時間はかかる。もっと早い段階で北見市がギブアップしていたら、もっと早く切替も進んだかもしれないが。

さらに、その天然ガス転換に合わせて、古くなった管の更新も予定していたらしい。今回、破損した管は「ねずみ鋳鉄管」と呼ばれる鋳物製で、腐食がないため、かつては全国で使用されていた。ただし、衝撃に弱いため、全国のガス会社はポリエチレン管への取り換えを急いでいた。しかし、道路を掘り返す工事は大変で、1mあたり工事費が数万円もかかるため、北海道ガスの供給エリアでも8割程度が残っているらしい。
ただし、北見市の設備は、かなり老朽化が進んでいるらしく、今回の事故現場から3km離れた地区でもガス漏れでガス管が破断していたことが明るみになった。北海道ガスは「北見市に特異な原因があると考えざるをえない」としているが、市営事業のため、設備管理が悪かったのではないか、などと勘ぐってしまう。

(石材店)「なんとなく落としどころが見えてきましたが」
(幹事長)「そう。今回の事故の根本原因は、公営事業の非効率性ではないかな」


ガス事業に限らず、全国の自治体で数多くの公営事業が行われてきた。そしてその多くが極めて非効率的な運営により財政難となり、その結果、設備が老朽化しサービスが劣悪なものとなっている。民間企業に力が無かった戦争直後なら存在意義もあっただろうけど、今となっては、全く無用の長物というより、むしろ百害あって一利無しの状態だ。ゴミの収集や焼却などは、最近は民間委託が進んできたため、サービスが向上したうえに経費も安くなっている。ガス事業は、北見市のように民間企業に譲渡されるケースが増えている。水道事業も、設備が老朽化しているのに財政難で更新できない自治体が増えており、これも民営化すべきだろう。


ところで、ガスの危険性という観点からすれば、滅多に起きないガス中毒より、火災の方が怖いと思う。
兵庫県宝塚市のカラオケボックスで3人が死亡した火災事故は、店員が油入りの中華鍋をガスこんろにかけて揚げ物をしている最中にサラダ油が発火したのが原因だ。店員は「注文が重なって忙しく、鍋から目を離してしまった」とのことで、店の管理体制が問われる事故だが、いくら注意喚起したって、こういう業界は中小業者がひしめいており、管理体制が十分になるのは不可能だろう。
調理による火災の撲滅には、電化が一番よろしい。もちろん、油は温度が高くなれば自然発火するから、ガスの火から直接燃え移らなくても発火の可能性がゼロになるわけではない。しかし温度管理も容易だし、火災の可能性が激減するのは間違いない。
ずっと火に専念できる場合はいいけど、今回の火災のように、忙しくて目が行き届かない場合は、電化にすることをお勧めしたい。

(石材店)「って、完全に宣伝になってますよっ!」


そうそう、それから最後に言いたい。今回の事故は3人が死亡し、さらに2人が重体という、かなり重大な事故だ。しかし、その割にはマスコミの報道は控えめだ。て言うか、常識的なところだ。こんなもんだろう。
ところーが、もしこれが原子力関連の事故なら、こんなにあっさりは済まない。朝から晩まで徹底的に、その報道ばっかりになる。何年か前に東海村で原子力関連工場の作業員が死亡した事故があったが、あれなんて一般市民に犠牲が出たわけじゃなく、あくまでも現場の作業員が死亡しただけなのに、まるで日本に原子爆弾が落とされたかのようなバカ騒ぎぶりだった。マスコミの対応には、本当に腹が立つ。

(石材店)「最後は、やっぱり、そこに落ち着きましたか」


(2007.1.23)



〜おしまい〜





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