多発するガス中毒死

〜 常識の欠落こそ問題だ 〜



1月に北海道北見市でガス漏れ死亡事故が大きな騒ぎとなったばかりだが、ガス機器の不完全燃焼による一酸化炭素中毒の死亡事故が、21年間で239件も発生し、355人もの人が死亡していた事が分かった。

(石材店)「やっぱりガスは危険ですねえ」
(幹事長)「ほんとほんと。こなな危ない物質は日本国土から一掃し、全家庭オール電化計画を強制するしか策は無い!」

と言いたいところだが、今回も、あんまり安易にはしゃぐ気にはなれない。

今回、経済産業省が発表したところによると、湯沸かし器やストーブなどのガス機器の不完全燃焼による一酸化炭素中毒の死亡事故が、1986年から2006年までの21年間で239件発生し、355人が死亡していたらしい。さらに、火災やガス爆発など一酸化炭素中毒死以外のケースを含めた死亡事故の総数は433件で、死者数は570人に達する。さらに、死亡者が出なかったケースを含めると、事故総数は3337件にものぼる。メーカー別で言えば、不完全燃焼による一酸化炭素中毒の死者数が最も多かったのはパロマ工業で、続いて松下電器産業、リンナイの順になっている。ただ、これはパロマの器具がことさら危険だという訳ではなく、単に売れた数が多かったという事だろう。

従来、ガスの危険性と言えば、まずはガス爆発を連想していた。ガス漏れ検知器の普及により、最近はガス爆発の話を聞くことは少なくなっていたので、ガスの危険性に対する認識が希薄化していた。しかし、実はガスによる死亡事故は、不完全燃焼による一酸化炭素中毒事故の死者が半分以上を占めていたのだ。
しかし、ガス爆発事故なら派手に報道されるから認識しやすいけど、ガス中毒の場合はあまり報道もされないため、認識が薄くなりがちだ。誰がどこでガス中毒死したかなんて、これまで誰も正確な数値を掴んでいなかったのだ。
そもそも死因がガス中毒なのかどうかだって、曖昧なものだ。1月の北見市でのガス漏れ死亡事故だって、1人目の犠牲者は、最初は病死って事で処理されていたため、ガス会社には連絡がいってなかった。ガス器具メーカーの業界団体「日本ガス石油機器工業会」が2月に公表した数値は、今回の経産省の数値を大幅に下回っていたが、これは意図的に隠そうとしたのではなく、メーカー側だって本当の数値は掴めていなかったからだ。

ガス中毒死事件が発生しても、すぐにガス器具メーカーに連絡がいく訳ではない。なぜなら、ガス中毒死の責任の大半は、ガス器具メーカーではなく使用者にあるからだ。使用状態が不適切だったからだ。もしガス器具に欠陥があったのなら、すぐに連絡もいくし、大騒ぎになるだろうけど、ほとんど全てが不適切な使用方法に原因があるから、これまでは問題視されなかったのだ。

不適切な使用方法と言っても、使用者の責任ではないケースとして、工事業者による改造の問題がある。パロマ製のガス器具による事故の原因は、大半がこれだ。パロマ製のガス器具には、室外に排気するための排気ファンが作動しない場合、ガス供給がストップする安全装置があるのに、修理業者が安全装置が働かなくなるように勝手に不正改造した結果、事故が発生したのだ。もちろん、修理業者は悪意を持って改造したのではなく、安全装置がやたら作動して使いにくいから、安全より利便性を優先して改造したのだ。原子力発電所では考えられない発想だが、世の中では珍しい事ではない。
一方、リンナイ製の器具による事故では、改造が原因のものは無く、空気供給口にすすやほこりなどがたまって不完全燃焼を起こしたケースが大半だ。
責任が工事業者か使用者かの違いはあっても、いずれにしても、使用状況が悪かったために起きた事故である。もっとストレートに言えば、ガス器具使用時の換気不足によるものだ。

今回、私が言いたいのは、事故の根本原因はガスの危険性ではなく、国民のおバカ化ではないか、という事だ。ガス器具を使う時は、換気を十分にする事くらい当たり前じゃないか、って事だ。そんなん常識じゃないか。室内で火を燃やすんだから、閉め切っていたら酸素がどんどん減っていき、そのうち不完全燃焼を起こすくらい、小学校で習っただろう。ビーカーの中に火のついたマッチ棒を入れると、しばらくすると消えただろう?それは酸素が無くなったからだぞ。そんな常識を知らないのか?

(石材店)「ううむ。結構きびしい意見ですねえ」
(幹事長)「自分の常識の無さを棚に上げて何でもかんでも他人の責任にする風潮がひどすぎるぞ。
       いつから日本人は常識欠落人種になってしまったんだ?」


ガス器具だけじゃない。一時期、シュレッダーによる指の切断事故が大騒ぎになった。あれだって同じだ。シュレッダーなんて、本当に恐い装置だ。僕なんか会社で長年使っているけど、いまだにシュレッダーの前に行くと緊張する。指が吸い込まれないか、ネクタイが吸い込まれないか、ものすごく恐い。シュレッダーなんて、それくらい恐い装置だ。それなのに、業務用のシュレッダーを自分勝手に購入して子供のいる家の中に無造作に置いておくなんて、完全に常識の欠落。指を切断した子供は本当に可哀想だけど、その責任は全て愚かな親にある。あるいは、そういう使われ方が分かっておりながら無造作に売っているホームセンターに責任がある。メーカーは業務用に製造しているのであって、小さい子供がいる家庭での使用なんて念頭に無かったはずだ。
それなのに、バカで無知で偽善の塊であるマスコミはメーカーを非難して止まない。こういうマスコミの偽善的な態度が、国民をますます非常識化していくのだ。

今回のガス中毒死に関しても、ガス器具には「ご使用と同時に換気扇を回す等、換気にご注意ください」とか「閉め切った部屋で長時間使用すると空気中の酸素が減少し、不完全燃焼防止装置が働いて消火することがあります」なんて書いてあるんだけど、事故にあった人は、それを読んでいない。ま、普通は、そんな小さな字は読まないか。しかし、そんな事は読まなくても常識だよ。大きな字で「不完全燃焼すると中毒死します」っていうくらい書かないといけないのかなあ。でも、「吸いすぎると死にます」って煙草の箱に書くのと同じで、いくら書いても、結局は使用者の意識の問題だよなあ。

(2007.3.15)



〜おしまい〜





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