西武ライオンズ裏金事件

〜 ドラフト改革しかない 〜



西武ライオンズが東京ガスと早稲田大学の選手に裏金を渡していた事が発覚して大問題だ。

(幹事長)「いやーっ、ほんっとに、びっくり!!」
(石材店)「それほど驚くことでもないですよ。いかにも、ありそうな話ですよ」
(幹事長)「だから驚いてるんだよ。プロ野球選手のスカウトの裏金なんて常識じゃなかったの?
       みんな分かってるけど表向きは知らないフリしてるだけじゃなかったの?
       全国津々浦々の高校野球の指導者や父兄は、今までしこたま金をもらってたんじゃなかったの?
       なんで今になってわざわざ表沙汰にするの?」


今さら問題化して一番ヒヤヒヤしているのは現役選手達だろう。選手会は表向きは「今後は起こらないようにして欲しい」とコメントしているが、これは裏を返せば、過去のことは蒸し返さないで欲しいな、という事だ。だって12球団の選手会長はほとんどが逆指名制度で入団した選手だから、みんな札束攻勢で入団した連中ばかりだ。事実、入団時にさまざまな疑惑を取りざたされた選手も少なくない。

もちろん、最近は表沙汰になると事件になっていた。2004年に一場投手(現楽天)への裏金が明るみになったときは、巨人、横浜、阪神の3オーナーが辞任する問題にまで発展した。これを受けて日本プロ野球組織は、利益供与は一切行わないなどの「倫理行動宣言」を2005年に発表し、不正の再発防止を誓った。
でも、だからと言って、これで本当に裏金が無くなると思った人は、全国津々浦々の高校野球界でも皆無だろう。裏金が本当に禁止になっちゃうと、なんのために一生懸命に高校球児を指導しているのか分かんなくなるじゃないか。

(石材店)「そこまで言いますか?高校野球の指導者は純粋な人が大半でしょう?」
(幹事長)「確かに。でも、高校野球そのもののプロ化も著しいぞ」


野球の活躍で名を上げようとして、私立高校を中心に県外選手を野球留学でかき集める傾向が強まっているが、これらの高校では、授業料の免除から始まって、寮費の免除や、さらには生活費支援まで行っている。これらはプロ野球球団からの裏金とは直接関係ないが、高校生の段階からプロ化が進んでいる結果、金銭のやり取りが当たり前という風潮を招いている。

とにかく、今でも裏金の存在は公然の秘密だ。昨年も、ロッテのバレンタイン監督が「球界で約30億円の裏金が使われた」なんて言ってた。プロ野球関係者が何の根拠もなくこういう発言をする訳がない。「抜け道はいっぱいある」と公言するスカウトだっている。2月に12球団のスカウト担当者を集めたドラフト検討委員会が開催された際には、球団代表の1人は「公平性や透明性は確保されているという声が多かった」と説明したけど、スカウト側は「球団幹部がいる前で本音をしゃべれるわけがない」と言っていた。

これは建設業界の談合と同じ構図だ。本当は分かっておりながら知らない顔をしている経営トップと、そうは言っても、ほんとに止めてしまったら仕事にならないから続けてしまう現場の人たち。トップは、本当は分かっているけど、いざ事件が発覚すると「知らなかった。現場の暴走だ」とシラを切って逃げる。全く同じ構造だ。

東京ガスの選手がどうなるかは、まだ分かんない。今のところ野球部から謹慎処分を受けているが、日本野球連盟は「野球生命が断たれることがないよう、再生の機会を与えたい」と述べており、選手生命が絶たれることはなさそうだ。

しかし一方、早稲田大学の選手は退部処分になってしまった。大学の野球選手が退部になると、普通は野球生命が絶たれてしまう。なんとまあ、気の毒な事だ。そりゃあ、金をもらっていたのは悪いかもしれないけど、経緯を見ると、本人に責任があるようには思えない。

彼は甲子園には出ていないが、高校時代から好打の内野手として活躍し、西武のスカウトから練習を見てもらい、3年生の時には西武の施設で入団テストのような事を行い、ドラフト指名が約束された。本人も西武入団の意志があったが、なぜか高校関係者と西武球団から早大に進学するように勧められたとのことだ。大学生なら希望枠があるから、選手側から西武球団を指名できるけど、高校生は自由競争になるから、他の球団に取られることを恐れたのだろうか。選手本人は、西武側が授業料や生活費を負担するというので納得して覚書を交わし、早大に進学したのだ。もちろん、大学卒業時にドラフトで指名することは確約され、もらった金は契約金から返却するという契約だったから、あんまり悪いことをしているという感覚は無かっただろう
そして、早大入学時の2004年春から本人は毎月10万円を受け取っていたのだが、父親も毎月20万円ずつ受け取っていた。本人のは生活費で、父親のは学費という位置付けだったのだろうか。その後、一場投手への裏金問題をきっかけに、もう止めた方がいいと判断した西武から、2005年10月に「今後の学費などは一括して渡す」ということで500万円を受け取った。
事件が発覚してからは、西武から「金銭授受は西武と父親がやった事で、本人は何も知らなかったと言ってくれ」と口止めされたのだが、本人が自責の念から真相を告白したのだ。

どうでしょう?選手本人は悪いと思いますか?高校生の段階の判断として、そんなに悪意があった事ではないと思う。最終的には自分から真相を言っているし。悪いとすれば、あくまでも囲い込みを図ろうとするプロ野球球団側であり、それを後押しする高校野球指導者は父兄側である。
それなのに、実際に重いペナルティを課せられるのは選手である。もちろん球団関係者は処分されるだろうし、高校時代の指導者も処分されるだろうけど、それは自業自得であり、高校生の時に甘い言葉で誘われた選手の社会生命を絶つのは気の毒だ。西武が選手に口止めを依頼したのは、純粋に「選手を守りたい」という判断だったのだろう。ほんと、選手が気の毒だ。

それから、早大は「自分達は全く関与していない被害者である」との立場だが、西武のスカウトが早大進学を勧めたのは、一体どういう事だろう。なぜ早大だったのだろう。全く無関係と言い張れるのだろうか。

さて、このような事態を本気で止めさせるのなら、方法は1つしかないドラフト制度の改正だ。ほんと、簡単なことだ。完全ウエーバー制を導入すれば済むことだ。巨人の意向に引きずられて、希望枠なんていう無茶苦茶な制度を続けているから不正を生むのだ。これを止めて完全ウェーバー制を導入すれば、いくら裏金を渡したって意味がほとんど無くなるから、不正は少なくなるだろう。
これまで巨人は、
  @ 自分達は強くて常に上位にいるから完全ウェーバー制を導入すると不利になる
  A 自分達は人気球団だから選手から逆指名してくれる
という2点があったから、希望枠に固執してきた。しかーし、最近の巨人の低落ぶりを見ると、完全ウェーバー制を導入したら、むしろ巨人には有利になる。さらに、最近の巨人の人気の低迷ぶりを見ると、選手からの逆指名だって、あんまり期待できない状況になっている。もう他球団を敵に回して希望枠にこだわる必要性は無いだろう。
完全ウェーバー制が嫌なら、以前のような抽選でも、まだマシだ。とにかく逆指名制度がある限り札束が乱れ飛ぶ現状は変わらない。

さて、しかし、既にプロ選手として活躍している人は、今さら過去を責められないだろうし、今後は逆指名を止めればいいとしても、今回、早大野球部を退部になってしまった選手は気の毒だ。どうすれば彼を救済できるのか。
実はこれも簡単。四国アイランドリーグに呼べばいいのだ

(石材店)「おっ、そう来ましたか。意外な落としどころ」
(幹事長)「行き場の無くなった彼も救済できるし、有望な選手が来てくれれば四国アイランドリーグも
       レベルアップするし、みんなハッピーだぞ」


(2007.3.17)



〜おしまい〜





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