ハンカチ王子デビュー

〜 評価はこれからだ 〜



早稲田大学へ鳴り物入りで入学した元早稲田実業のハンカチ王子斎藤佑樹投手が、1年生でいきなり東京六大学リーグの開幕投手を務め、初勝利を飾った。東京六大学リーグの新人開幕投手は77年ぶりで、勝利投手は80年ぶりの快挙だ。おまけに、なんと打撃でも初打席初安打をマークした。

(石材店)「人気先行だとばかり思ってましたけど、なかなかやりますねえ」
(幹事長)「おいおい、評価するのは早すぎるぞ。何てったって相手は東大だぞ」


5回まで完全投球、6回でようやく1安打を許しただけの無失点、毎回の8奪三振でデビュー戦白星というのは、数字だけを見れば素晴らしい結果だ。しかし、相手は東大だ。18季連続最下位の東大だ。東大の監督自身が「うちはあんなもんです。斉藤が良かったというより、相手投手が誰であっても点は取れません」なんていみじくも語っている。

(石材店)「そんなに弱いんですか?」
(幹事長)「はっきり言って、ものすごく弱い」


東大の野球部なんて、甲子園に出ても1回戦で負けるくらいの力しかないのだから、甲子園の優勝投手相手の勝てるはずがない。

(石材店)「なんでそんなに弱いのに東京六大学リーグにいるんですか?」
(幹事長)「それは歴史の問題だわな。東京六大学リーグは古いのよ。昔は東京に大学が6つ位しかなかったから」
(石材店)「2部は無いんですか?」
(幹事長)「そこが東京六大学の良いところだわな」
(石材店)「でも1チームだけダントツに弱いところがいたら、リーグのレベルの足を引っ張るんじゃないですか?」


いやいや、そんな事はない。強いチーム同士の戦いだと勝利至上主義になるが、東大戦には色々と新しい試みができる。まさに今回の斉藤投手の初先発が良い例だ。強豪チームとの対戦でデビューさせてボコボコにやられると、なかなか立ち直れなくなるが、東大相手ならそんな事はありえないから、安心してデビューさせられる。あの元法政の怪物江川だって、東京六大学のデビュー戦は東大相手だった。東大は東京六大学のサンドバッグ的存在と言えよう。

(石材店)「ペンギンズにおけるF川さんの存在のようなものですか」

僕も学生だった頃、何度か試合を見に行った事がある。他チームの応援席は、そこそこ埋まるのだが、東大側は基本的にガラガラだ。東大の学生は全般的に母校愛が欠落しているうえに、チームが弱くて面白くないからだ。それでも僕が学生だった頃は、東大野球部は絶頂期とも言える水準だった。昭和52年春には、なんとリーグ4位となり、我々はBクラス優勝と大騒ぎした。

(石材店)「Bクラス優勝って喜ぶなんて、まるで一昔前の阪神タイガースですねえ」
(幹事長)「明治大学に勝った試合を見に行った事もあるけど、あの時も痛快だったなあ。
       明治大学の応援団なんて、東大に負けた瞬間には、ほんと、もう絶望的な顔してたもんなあ。東大に負けるなんて、
       まるで満濃リレーマラソンで動物姿のペンギンズに抜かれてガックリくる一般ランナーのような精神的ダメージだ」
(石材店)「分かりやすい例えですねえ」


もちろん、明治大学に勝つなんて、そう滅多にあるもんじゃないから、その試合を見れたのは非常に幸運だった。
そもそも、他の大学は選手の目つきが全然違う。私立大学は全般的に、野球に限らず、スポーツ選手はスポーツで入学しスポーツで卒業していく。優秀なスポーツ選手を集め、4年間鍛え上げて、プロや社会人に送り出していく。選手は4年間、合宿所で暮らし、試験の時くらいだけ大学へ出かける。所属している学部は様々なのかもしれないけど、実質的にはスポーツ部だ。それに比べて東大の運動部は、基本的に高校の部活動と同じようなものだ。いくらスポーツで好成績を残しても、何の突っ張りにもならないもんな。
それから、他の大学は応援団も違う。漫画「花の応援団」が人気だった頃だが、それとそっくりの怖いお兄さん方が応援を仕切る。東大の応援団は高校野球の応援団と同じようなものだ。僕の同級生にも応援団員がいたけど、すごく普通の奴だった。

(石材店)「東大が弱いのは分かりました。だから斉藤投手の実力も、まだ未知数って事ですね」
(幹事長)「いかにも、その通り。ただし、斉藤投手の人気は東京六大学に大いに貢献しそうだな」

斎藤投手のデビュー戦を一目見ようと、神宮球場には1万8000人の観衆が集まった。しかも、テレビ、ラジオ中継もあったらしい。これが優勝のかかった早慶戦とか言うのなら分かるけど、なんちゅうても東大戦だ。東大の試合がテレビ中継されるなんて、こらもう前代未聞だぞ。まさに斉藤さまさまです。

(2007.4.14)



〜おしまい〜





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