プロ野球裏金問題の拡大

〜 待たれる全貌の解明 〜



西武ライオンズが東京ガスと早稲田大学の選手に裏金を渡していた事件が明るみになってから、その後、続々と新しい事実が出てきた。


まず、西武ライオンズの裏金問題に関する調査委員会の発表だ。

@ 西武ライオンズは、日本プロ野球組織(NPB)がアマ選手への利益供与を一切禁じた平成17年6月の倫理行動宣言以前に、外国人1人を含む5人のアマ選手に対し総額6160万円の裏金を支給していた。1人当たり30万円から2800万円で、名目は契約金や報奨金の前渡し、海外渡航へのせんべつ等だった。うち2人は当時学生で、計300万円を受け取っており、学生野球憲章に違反していた。


まあ、これは、東京ガスと早稲田大学の選手の事件を考えれば、それ以前にも当然いっぱいあっただろうから、特に驚く事はない。て言うか、なんとなく金額が少ないような気がする。まだまだ隠しているんじゃないかなあ。
一応、規則としては、日本学生野球協会では、日本学生野球憲章で、選手本人がプロ球団やその関係者から金品や利益を受けることを禁じている。高校では選手の親が受け取ることも認めていない


A 12球団の申し合わせによって新人選手の契約金の最高標準額(1億円プラス出来高払い5000万円)が定められた平成6年から17年までの間に、入団した15選手に対して標準額を超えて計11億9000万円を支払っていた。学生を球団の練習に参加させるなどの学生憲章違反も数回あった。


これも、驚きでも何でもなく、いわば常識みたいなもんだわな。1人当たり8000万円程度ってのは、相場として多いのか少ないのか分からないけど。
そもそも、この最高標準額というのが曖昧なものだ。これは1993年のドラフトから1、2位指名に大学、社会人出身選手の逆指名制度が導入されたのに伴い、獲得競争が過熱して契約金高騰に拍車がかかることを抑える意図で設定されたものだ。同時に、ドラフト前の仮契約や事前交渉での金品の提供も禁止された。1994年入団の選手から1億円が「最高標準額」に定められ、翌年には大学、社会人出身選手は3年以内、高校出身選手は5年以内に一定の出場選手登録日数を満たすことを条件に契約金の50%以内(最高5000万円)を後払いする出来高払い契約金も加えられた。現在もこの額は変わっていない。
ただし、これはあくまでも目安であり、これを超える額を支払っても罰則は無いのだ。独占禁止法の「不当な取引制限の禁止」に抵触する可能性があるからだそうだが、ほんまにこんな事が独占禁止法違反になるのか大いに疑問だ。それは罰則規定を設けない言い訳ではないのか?コミッショナーは各球団に厳守を求めたが、各球団のスカウトらの間では標準額の導入当初から「逆指名獲得のために金額の高騰は避けられない」という見方が広がっていた。


B 昭和53年の球団創立以来、平成17年までの27年間に、新人獲得の謝礼として延べ170人のアマチュア野球関係者に対し、計1億3500万円を支払っていた。1人当たり10万円から300万円の現金か商品券というケースが多いが、中には一度に1000万円、500万円という例もあった。この中には高校、大学の監督らが含まれている。高校、大学野球の監督や関係者への支払いは日本学生野球憲章に抵触するが、謝礼はアマ側から要求されることもあった。


これは、少し衝撃的な事実。@とAは、選手に対するものなので、給料の先払いとか、裏ボーナスとか、なんとなく違和感は無いけど、これは監督とかの関係者に対するものだから、さすがにまずいんじゃないの?

(石材店)「あれ?前回は、金が渡らなければ高校野球の指導者なんか居なくなるって言ってませんでしたか?」
(幹事長)「ま、そうなんだけど、ここまであからさまに発表されると赤面しちゃうよなあ」


そうなのだ。高校野球の監督を始めとする野球関係者に裏金が渡っているというのは常識ではあったが、医者への謝礼と同じで、決して口外してはいけない公然の秘密というか必要悪だったから、こうも露骨に発表されると、ちょっと驚いちゃう。だって170人もだもんなあ。1人当たりにすれば100万円以下なので、可愛いものだけど。ただ、アマ側から謝礼を要求するなんて、ちょっと露骨だよなあ。そこは口に出して言わないでも阿吽の呼吸でやらなければ犯罪ものだよなあ。
一応、規則としては、日本学生野球協会でも、指導者の金品授受については明確な禁止規定はない。ただし、学生野球憲章には「部長、監督、コーチに学生野球の健全な発達を阻害し、又阻害するおそれが有ると認められる時」は処分の対象になると記されており、選手同様、禁止されていると解釈できなくもない。社会人を統括する日本野球連盟にも規定はないが、登録規定でチームや選手が「連盟の名誉を傷つけ、または目的に違反する行為があったとき」は登録を取り消すこともできると定めている。いずれにしても曖昧なところだ。

西武のスカウトは、事情聴取に対し、「監督への謝礼は、他の球団でもやっているのではないかと考え、後れを取るわけにはいかなかった」とか「契約金の上限破りは、申し合わせを守っている球団はない」などと証言しているが、全くその通りだ。みんなわざとらしくきれい事を言っているが、それが常識だ。マスコミは、何も知らなかったかのごとく驚いたフリをしているが、それは偽善と言うものだ。まあ、マスコミは偽善と独善と金儲けの固まりだからしょうがないけど。
マスコミだけでなく、野球関係者も口をそろえて「自分の時は一切なかった。プロ側がそうした行為を広く行っていたとは知らなかったし、今聞いてびっくりしている」とか「自由獲得枠対象になった選手から、入団が決まった場合の謝礼の話を聞かされた事もあるが、私は関与しなかった」なんて話したりしている。「過去にプロ球団から現金をもらっていた指導者もいたと思う」なんて語る高校野球の元監督もいるけど、みんな自分は潔白だと主張している。ほんとかなあ。


次に、横浜ベイスターズの発表だ。

C 2005年に日本大学から入団した那須野巧投手に、契約金の最高標準額(1億円プラス出来高払い5000万円)を大幅に上回る5億3000万円の契約金を支払っていた。1年目の年俸も、申し合わせの1500万円の2倍である3000万円を支払っていた。

いやあ、これにはびっくり。これは西武ライオンズのAと同じだけど、額にびっくり。そりゃあ那須野投手は前評判は良かったけど、それでも5億円も払うほどの逸材なのか?そうでないことは、入団してからの低迷ぶりが証明している。これくらいのレベルの選手に5億円も払っているのか?本当にびっくりだ。
ベイスターズは、2004年12月に那須野投手と契約金に関する覚書を交わしているが、当時明治大学に在籍していた一場投手への現金供与が発覚し、横浜の砂原オーナーが引責辞任した僅か1ヵ月後だったってのも驚きだ。今さら契約をご破算にはできなかったって事か?

もちろん、何度も何度も言うように、最高標準額が守られていないのは周知の事実だ。選手に球団を自由に選べる権利が生まれれば、好条件を提示できる球団ほど有利になる。その状況を選手側も利用し、契約金のつり上げを狙った。争奪戦が過熱すればするほど大きな金額が動いた。当たり前すぎる話だ。
しかし、それにしても、ここまで高額だとは思わなかった。トップクラスの選手でも、せいぜい2〜3億円くらいかと思っていた。なんと、ある現役選手の獲得に20億円超をつぎ込んだ球団もあるらしい。即戦力投手の獲得には10億円以上が支払われることも珍しくないらしい。

さらに、この5億3000万円のうち3000万円が、日本大学の鈴木監督に渡ったとする報道も出てきた。5億3000万円なんていう中途半端な金額からすると、これは間違いなく事実だろう
何日か経ってから、鈴木監督も那須野投手も口裏を合わせて金銭授受を全面的に否定したが、何日も経ってからというのが実に怪しい。最初に報道された直後には、一切コメントせず、「反論しないのか?」という報道陣の質問に対して「勘弁して下さい」と言って逃げていた。事実と違うのなら「勘弁して下さい」なんておかしいじゃないの。「そんなのはでたらめだ」と怒ればいいのに。この時点では隠せるかどうか不安だったのでとりあえず逃げて、その後、関係者の間で口裏を合わせて否定したんだろう。入団契約への関与についても「本人、ご両親、横浜球団の3者で契約した」と自分の関与を認めなかったが、報道内容に対する法的措置については、「報道されたような、そういう目で見られていたと思う。自分の身を清く正しくしていかなくてはいけないと反省している」なんて意味不明のコメントをしている。まともに法的措置なんて取ったら、法廷で本当の事を言わなけりゃならなくなるから、それは絶対に避けたいわな。


さらに驚いたのは、専大北上高の発表だ。

D 西武ライオンズから現金供与を受けていた早稲田大学の清水選手の出身高である専大北上高(岩手県北上市)は、中学時代のスポーツの実績に応じて授業料を免除している奨学制度があるが、30人を超える野球部員にも学費免除などをしていた。

(石材店)「あれ?これも驚くんですか?こんなん常識じゃなかったんですか?」
(幹事長)「だから驚いているんです。これって違反なんだって。もうびっくり」


そうなのだ。日本高校野球連盟が、特定の生徒に特典を与える特待制度については、日本学生野球憲章の「野球部員であることを理由とした金品収受の禁止」という定めに違反していると言ってるのだ。なんでえ〜?
これは野球に限った事じゃなく、他のあらゆるスポーツで行われている事だ。多くのスポーツ校で、様々な種目の優秀な選手に対して、授業料の免除から始まって、寮費の免除や、さらには生活費支援まで行われている。そして、野球以外のスポーツでは、これは違反でも何でもない。おおっぴらに正々堂々と公明正大に行われているのだ。だから、大半の野球関係者も、これが野球憲章に違反しているだなんて思ってなかったんじゃないか。専大北上高に対しては、日本高野連審議委員会で最も重い除名処分が下されるらしい。こなな事で、そこまでやるか?と思ったけど、これはそれだけじゃなくて、清水選手と西武との問題が悪質と見なされたからのようだ。


まあ、どれもこれも、口には出さないけど常識だった事ばかりで、これらが明るみになったことは、球界の正常化に向けて良い兆しではある。この際、全球団の全選手に関する過去をすべて洗いざらい暴いて欲しい気もする。そうでないと、明らかになった選手だけが気の毒だ。

(2007.4.15)



〜おしまい〜





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