統一地方選挙結果

〜 注目の選挙 〜



(石材店)「第16回統一地方選が終わりましたが、選挙オタクの幹事長の感想は?」
(幹事長)「盛り上がりに欠けたよねえ」

何が盛り上がらなかったかと言えば、まずは立候補者の少なさだ。全国的な傾向だけど、特に僕らの地元はひどい。現職の市長の予想外の引退による新市長の誕生が期待された高松市長選挙だが、なんと立候補者が1人しかいなくて無投票で決まっちゃった。圧倒的に強い現職がいる場合は、当選の見込みの無い対立候補が躊躇するのは分かるけど、新人同士の争いになるんだから、もうちょっと立候補してもいいんじゃないかなあ。市民の選択権が無くなるっていうのは、ちょっと末期的症状じゃない?高松市議会選挙にしたって、旧市街地は定員40人に対して立候補者43人だ。たった3人しか落選しない。やる気ないのか、おまいらっ!

(石材店)「じゃ、あんまり興味無かったと?」
(幹事長)「あえて興味あったのは、長崎市長、夕張市長、東洋町長の3つですね」



@長崎市長選挙

当選 田上富久 無 新  78,066票 長崎市課長
    横尾誠   無 新  77,113  西日本新聞記者
    山本誠一 共産新 19,189  元市議
    前川智子 無 新  8,321  大学非常勤講師
    前川悦子 無 新  2,677  主婦


まずは、4選確実と見られていた伊藤市長が選挙期間中に射殺されるという前代未聞の異常事態になった長崎市長選挙だ。殺害された市長以外に当初から立候補していた3人は、もともと苦戦が予想されていた候補なので、誰が当選しても「本人もびっくり」てな事になるのかなと思っていたら、急遽、補充立候補が受け付けられて、2人が新たに立候補し、実質的には、この新しい2人の戦いとなった。
1人は、殺害された市長の娘婿の横尾氏だ。彼は新聞記者で、長崎県人ではないけど、義父が殺害されるという異常事態の中、後援会に推される形で急遽、立候補を決めた。ここまでなら、政治家が亡くなった時によくあるパターンではある。そして、ほとんどの場合、死者の弔い合戦的なムードになり、同情票も集めて圧勝するのが普通だ。
ところが今回は、強敵が現れた。「市長は世襲制ではない。肉親の情は分かるが、自治の担い手は別問題。リーダーは市民が選ぶべきだ」と批判して、市の職員である田上氏が立候補したのだ。彼の立候補の動機は「政治家の世襲に危機感を感じた」という一点に尽きる。テレビで見ると柔和そうな人だし、マスコミで報じられる人柄も穏和な人らしいが、こういう動機で突然立候補するなんて、なかなか骨のある人ですね。彼が慌てて立候補を届けたのは、届け出締め切りまで1時間を切ったギリギリだったらしい。こういう人が高松にもいれば良いのに。
で、選挙結果は、田上氏が当選してしまった。新聞記者を辞めてまで急遽立候補した娘婿は気の毒だけど、長崎市民は比較的冷静だったと言えよう。全国的に、政治家の世襲は目に余るほどの事態であり、国会議員なんか見てると、いい加減うんざりしてくる。市長が突然、殺害されたっていうのは異常事態だけど、だからと言って、いきなり娘婿に世襲させるよりは、市の事を良く知っている職員のほうが良いと思ったのだろう。
前市長の娘である横尾氏の奥さんは、「これでは父は浮かばれません」と泣いていたが、それはそうだろう。選挙の数日前に理不尽に殺害されて、それでおしまいだなんて、やりきれないだろう。ただ、だからと言って、それまで市政の何の関係も無かった娘婿が世襲する事の正当性の理解は得られなかったということだ。

(石材店)「結論から言うと、良い結果になったと?」
(幹事長)「ただし、今回の長崎市長選挙の結果には、実は
大いなる疑問がある」

当選した田上氏の得票は78066票、落選した横尾氏の得票は77113票、その差は僅か953票だ。そして、その一方で、元市長が殺害されるまでに期日前投票していた票が7354票にも達するのだ。そして、そのうちの大半が元市長に投票したものだったのだ。元市長の熱心な支持者が早々に期日前投票していたのだ。これらは全て無効票となったが、もし再度、投票する事が許されていたなら、その人たちの大半は、元市長の殺害に同情して娘婿に投票したのではないだろうか。もしそうなら、結果は逆になっていた可能性が高い。それに、補充立候補者の選挙活動期間が異常に短いとう問題もあった。立候補者が死亡するような事態は、普通はあんまりないので考慮されていないのだろうが、選挙期間中に立候補者が亡くなった場合は、選挙を順延して、最初からやり直した方が良いような気がする。

それから、なぜ市長が殺害されたのか、犯人の動機がいまいち不明だ。当初マスコミは、政治的な陰謀だと騒ぎ立て、ものすごい盛り上がりようだったけど、犯人が単なるヤクザで、個人的なトラブルが原因のようなので、すっかりしぼんでしまった。しかし、それにしても、本当に個人的なトラブルが原因なんだろうか。どうも腑に落ちない。もしかしたら、他に理由があるのかもしれない。

(石材店)「ところで、どうでもいいですけど、4位の人と5位の人って、同じ姓だけど、何なんですか」
(幹事長)「何なんやろなあ。二人とも女性で、同姓で。しかも最後の人は主婦だし。単なる嫌がらせ?」



A 夕張市長選挙

当選 藤倉 肇   無 新 3,330票 元会社社長
    羽柴秀吉  無 新 2,988  会社役員
    千代川則男 無 新 1,157  元夕張市議
    若林丈人  無 新  773  前千葉県野田市議
    森谷猛    共産新  461  元夕張市議
    鴨川忠弘  無 新  187  元愛媛県大西町(現今治市)助役
    作出龍一  無 新   40  無職


次は、3月に財政再建団体入りした夕張市長選挙だ。この選挙には最終的には7人が立候補したが、事前には、かなり多数の人が立候補の意向を示していた。その中にはカナダに住所がある人とか、「少しでも給料を貰えるから」とかいった信じられない安易な発想のフリーターもいたようだ。政策でも「山の上に城を建てれば観光の目玉になる」なんていう夕張市の過去の失敗を省みない主張を繰り返す人もいた。
結果を下の方から見ると、たった40票の作出氏って、何だったんだろう。たぶん選挙運動もしてないんだろうなあ。それから、よそ者とは言え、元愛媛県大西町助役という行政経験のある鴨川氏がたった187票ってのもなぜだろう。同じよそ者の前千葉県野田市議の若林氏が773票も取っているのは、選挙運動の差なのだろうか。
そして、当選したのは、元夕張市議や地元外の行政経験者ではなく、地元出身の元タイヤ販売会社社長の藤倉氏が当選した。民間企業での豊富な経験を強調したのが良かったのかもしれないし、労働組合や経済界などが支援したのが大きかったのだろう。

ここまでは、別に驚くことでもなんでもない。個人的に驚いたのは、羽柴秀吉氏が藤倉氏に肉薄した次点だったということ。彼は、本名を三上誠三氏といい、青森県五所川原市出身の実業家で、旅館「秀吉のやかた」や土木業などを経営する羽柴グループの代表をしている。しかし、一般には全国で色んな選挙に出ている怪しいおじさんとして有名だ。

(石材店)「有名なんですかっ!」
(幹事長)「えっ?知らなかった?」


彼は若い頃、近所の坊さんから「お前は戦国武将豊臣秀吉の生まれ変わりじゃ」と言われたため、それ以来、羽柴秀吉を名乗り、自宅は大阪城の形をしている。そして、東京都知事選挙、長野県知事選挙、大阪府知事選挙、参議院選挙、衆議院選挙、大阪市長選挙など多数の選挙に片っ端から立候補してきた。今回の立候補が13回目だ。もちろん、全部落選しているから立候補し続けているんだけど。
落選し続けているのは、名前からしてあまりにもふざけているからだけど、長野県知事選挙ではヘリコプターから演説したり、大阪府知事選挙では金箔を使用した武士の鎧兜姿のポスターを貼ったりとか、派手な選挙活動で注目されてきた。長野県知事選挙では、田中康夫知事の「脱ダム宣言」を非難し、ダム建設推進を積極的に唱えた唯一の候補であったことで注目されたりもした。羽柴秀吉を名乗るだけあって、本人の最終目標は大阪だそうで、それ以外の選挙は、あくまでも売名行為らしい。一昨年の衆議院総選挙では小泉首相の選挙区から立候補したが、これなんかも完全に売名行為だわな。
こんな人がトップに肉薄する次点だなんて、すごいものだ。一つ間違えば市長だったんだから。「本人もびっくり」かもしれない。この人、過去に2回倒産したことがあるにもかかわらず、今の財産は200億円とも言われており、そういう意味では、財政再建団体となった夕張市の再建ができると期待されたのかもしれない。

(石材店)「意外にまともな人なんですね」
(幹事長)「でも、疑惑もあるらしいよ」


地元では、経営している旅館「秀吉のやかた」が古びてくると、なぜか無人の時に原因不明の火災が起き、保険金で立派に再建される事で有名らしい。以前は平等院鳳凰堂の形をしていたんだけど、全焼して建て直し、今は国会議事堂の形になっている。う〜ん、超あやしい。


B 東洋町長選挙


当選 沢山保太郎 無 新 1,821 住民団体代表
    田嶋 裕起  無 前  761 町長


最後はいよいよ東洋町長選挙だ。

(石材店)「やっと興味本位じゃない重要な選挙の話題ですね」
(幹事長)「はい。これは、まことに重要な選挙でした」


東洋町は、原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場の誘致が最大かつ唯一の争点だった。現職の田嶋町長は、いきなり最終処分場を誘致しようとしたのではなく、あくまでも、それに向けた第1段階調査(文献調査)に応募しただけだった。文献調査の結果、地盤とかが最終処分場には不適当だと判断されれば施設の誘致は無くなるし、仮に適していると判断された場合でも、その後、町が「やっぱり誘致はいやだな」と言えばストップする。それなのに、調査に応募するだけで年間10億円もの巨額の補助金が出るのだ。
こんなうまい話があっていいのか?自宅に「ええ儲け話がありまっせ。何もしないで10億円が入りますぜ」なんて電話がかかってきたら100%間違いなく詐欺だけど、一応、国が言っていることなので詐欺ではないだろう。こななうまい話があるのなら、我先に応募があっていいような気がするんだけど、これまで応募の実績は無い。幾つかの市町村で水面下の動きはあったが、すぐさま反対運動が巻き起こって頓挫してきた。行政をあずかる者としては、昨今の危機的な財政事情を打開するために喉から手が出る巨額の補助金だけど、反対運動に腰が引けてすぐに諦めていた。
それを偉大なる領主様である東洋町長は、類い希な勇気と英断により果敢にも応募なさったのだ!当然のように、これに対する反対運動が巻き起こった。自分とこには金が落ちない周辺市町村や、さらには高知県知事や徳島県知事までが反対し、また反原子力で凝り固まったマスコミが寄ってたかって町長を非難したもんだから、反対派のムードは一気に高まり、遂にリコール運動となった。これに対して町長は、リコールじゃなくて自ら辞職の道を選び、選挙によって町民の意思を問うたのだ。

個人的には、この選挙の勝敗は読めなかった。事前にマスコミどもが派手な反原子力宣伝を繰り広げたもんだから、一見、世論はこぞって原子力反対派で、町長の当選は難しいと思わせがちだったが、それはあくまでも反原子力で邁進するマスコミどもの宣伝工作の一環であり、実際には、地元の人たちは良識があって、町の将来を考えて現職の町長の投票するかもしれないと思っていた。反対する人は声高に叫ぶけど、賛成の人は声を潜めているはずだし。
そもそも、この町長は、独善的な偽善者であるマスコミによって腹黒い悪者のように叩かれていたけど、実は正反対。根っからの市民派の政治家なのだ。

(石材店)「えっ?そうなんですか?」
(幹事長)「顔で判断したら、いかんぜよ」


町長は若い頃から社会正義に目覚め、共産党の町会議員を7期も務めた。その後、無所属として町長を3期も務めた。人柄も良く、根っからの市民派政治家なのだ。それに対して、反対派の沢山氏は、地元民じゃなく隣の室戸市の元市議会議員だ。長らく市民運動をやってきただけあって、何でも反対するのは得意で、声高にアピールして一躍ヒーローになった。でも多くの町民は、腹の中では「なんじゃい、あいつは。よそ者のくせして偉そうに言うて」なーんて苦々しく思っており、反発が多いのではないかと予想していたのだ。

ところーが!結果は反対派の沢山氏の圧勝だった。田嶋町長が負ける事はあり得るけど、こんなに差がつくとは思ってもみなかった。ここまで完敗すると諦めもつくけど、最終処分場って、そんなに反対されていたのね。あんな大金が転がり込むと言うのに。

確かに、町長の行動は独断的ではあった。議会にもロクに相談せずに突き進んでしまった。それに対する反発は理解できる。しかし、議会に相談したりしたら、一気に反対運動が巻き起こり、身動き取れなくなってしまう。何度も言うけど、あくまでも文献調査であり、実際に施設を誘致するかどうかは先の話だ。調査によって適しているという結果が出てから住民投票で誘致を決めればいいのだ。調査だけで大金が転がり込むんだから、それでいいじゃない。それくらい町長の独断でやってもいいじゃない。ただで大金が転がり込むんだから、いいじゃない。何で反対するのか理解できない

でも、いくら僕が理解できなくても、これだけ大差がつけば、もう駄目だわな。リベンジはあり得ないわな。しかも、東洋町だけでなく、こなな文献調査の段階で町長がクビになるような事例ができちゃうと、密かに応募を考えていた他の市町村長も、もう恐くて応募なんてできなくなるよなあ。これは国の原子力政策の大問題だ。

(石材店)「どうすればいいんでしょうねえ。やっぱり公募制には限界があるんですかねえ。
      幹事長が好きな高知県知事も『札束で頬をひっぱたくような制度は許せない』と言ってるし。
      国が前面に立って地道に理解を深めていくしかないんですかねえ」
(幹事長)「いや、違う。もっと補助金を巨額にするのだ。もっと巨額の札束でひっぱたくのだ!」


年間10億円なんてみみっちいことを言わず、1000億円くらい出せばいいのだ。東洋町の規模からすれば、それで一世帯当たり1億円くらいになる。一世帯に1億円も入るのなら反対する人はおらんだろう。嫌なら1億円もらって町外に移住すればいいんだし。
1000億円なんて、大金過ぎると思うかもしれないけど、10年先くらいまでの高レベル放射性廃棄物の処分費用だけで3兆円と試算されており、それに比べれば妥当な額じゃないかなあ。
超巨大国家の中国でエネルギー需要が爆発的に急増しており、今後のエネルギー確保は国家の死活問題だ。また地球環境問題も危機的状況だ。これらを一気に解決する唯一絶対的な解決手段が原子力の一層の利用だ。そのためには高レベル放射性廃棄物の最終処分場も不可欠であり、1000億円くらい安いもんじゃないか。やっぱり高いか。

(2007.4.27)



〜おしまい〜





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