高校野球特待生問題

〜 高野連の独善的体質 〜



プロ野球の裏金問題を発端として出てきた高校野球の特待生問題について、日本高校野球連盟(高野連)のドタバタが続いている
そもそもの問題は、西武ライオンズが早稲田大学の選手に裏金を渡していた事件だったんだけど、その早稲田の選手の出身校である専大北上高(岩手県北上市)が、中学時代のスポーツの実績に応じて授業料を免除している奨学制度を設けていて、30人を超える野球部員にも学費免除などをしていた事が問題となったのだ。

これについては、なんで問題になるのか、最初っから全く不思議だった。高野連としては「特定の生徒に特典を与える特待制度は、日本学生野球憲章の『野球部員であることを理由とした金品収受の禁止』という定めに違反している」と言ってるのだが、あまりにも時代遅れというか、現実離れしている。なぜなら、多くのスポーツ校で、野球に限らず、あらゆるスポーツで優秀な選手に対して、授業料の免除から始まって、寮費の免除や、さらには生活費支援まで行われているからだ。そして、野球以外のスポーツでは、これは違反でも何でもなく、おおっぴらに正々堂々と公明正大に行われているのだ。
全国高等学校体育連盟は、生徒の推薦入学や特待制度の内容を拘束するような規定は設けていない。「優れた才能の生徒を推薦入学などで受け入れることは、特に私学にとって学校の特色を出すことにつながる」との観点に立つからだ。優れた競技環境や指導者に魅力を感じて進学先を選ぶことが、国内競技力の維持向上につながっているのが現実だ。
さらに、卓球の福原愛(青森山田高出身)を始めとして、一部の競技では高校生選手でもプロ的な競技活動を行っているケースが増えてきた。サッカーでも特別指定選手という形でJリーグの試合に出場することが可能となっている。

これに対して、高野連だけは頑なに、と言うか、独善的な振る舞いを続けてきた。専大北上高の野球部は、なんと解散に追い込まれたし、さらに全国の高校野球部に対して特待制度の有無の調査を命じ、違反している場合は、選手の出場停止や部長の辞任を要求した。調査の結果は、違反校は376校、該当部員は7971人に上るというものだった。高校数で言えば、高野連加盟の私立773校の実に半分である。ただ、私立高校の多くが野球部員の特待制度を設けているだろうというのは大方の予想通りであり、高野連の会長が「数の多さに驚いている」なんてわざとらしくほざいているのを聞くと、白けてしまう。そんなのは公然の秘密、て言うか、秘密ですらなかった周知の事実だ。

このような高野連の浮世離れした独善的態度と、それによる現場の大混乱に対し、全世界から強い批判が噴出した。当然だわな。そして、その反発に驚いた高野連は、今度は突然、特待制度の打ち切りによって就学継続が困難となる在校生は、卒業まで奨学金給付などを認める事を決めた。退任を求めていた違反校の野球部長に対しても、5月中は自主的謹慎期間とし、6月から再び部長就任を認めることとした。さらに、野球部を解散した専大北上についても再加盟を認めそうな雰囲気である。もう支離滅裂だわさ。

高野連は一体どうなっているのだろう。ほんっとに能なしなのだろうか。もし仮に、連中が私立高校で一般化している特待制度の存在を知らなかったとすれば、呆れかえるほどのバカで執行能力無しだけど、いくらなんでもそれはないだろう。野球関係者に限らず、日本国民なら一人残らず誰でも知っている既成事実だから、高野連だって明らかに知っていたはずだ。例えば、今回の問題を独裁的に扱っている高野連の田名部参事は、平成7年に「金をもらっている選手がいて困る」なんて講演会で話している。それなのに、これまでは放置してきた。面倒くさいから知らん顔してただけだ。誰が考えても、今どき悪い事とは言えない特待制度に対し、声高に規則の厳守を叫ぶのもはばかられるけど、だからと言って実態に合わせて規則を見直すのも面倒くさい。こういう時は、知らん顔するのが一番だ。典型的な事なかれ主義の怠慢だ。

ところが、プロ野球の裏金問題から芋づる式に明るみになったもんだから、さすがにもう知らん顔できなくなった。でも、かといって今さら堂々と認めるのも抵抗があるので、今まで知らなかったフリをしているだけだ。「ぜーんぜん知りませんでした。わたし」なんてカマトトぶって、やおら暴君のように強権を発動して処分に突っ走ったのは、6月になれば夏の甲子園の予選が始まるからだ。高野連の一番大事なイベントは夏の甲子園だ。当たり前だ。これが無ければ高野連の存在意義なんてゼロに等しい。夏の甲子園までには問題を片づけたい。そのために解決を異常に急いだ。1ヵ月だけ出場禁止だなんて意味不明の処分は、単に夏の甲子園に間に合わせたかっただけだ。

しかし、頭の悪い高野連が思ったほど、問題は簡単には終結しなかった。特待制度を廃止すれば、学費支払いが困難となる選手が退学や転校に追い込まれる可能性が出てくるからだ。そんな事は小学生が考えても想像できる事だけど、高野連はそこまで真剣に考えてなかった。また、退任させられた野球部長は後任が見つからない学校が相次いだ。そして、その結果、世界中から高野連に対する非難の大合唱が巻き起こったのだ。

高野連は、学校側の裁量で救済することを認めたのだが、どのような事例が救済対象に該当するかの基準は設けず、「学校長の判断で審査してほしい」としている。要するに、自分たちは頭が悪いから考えられないのか、あるいは怠慢で面倒くさいからか、ともかく全部学校に丸投げしている。そもそも、今回の特待制度の調査と申告にしたって、明確な基準は示さずに学校の自主申告に任せていた。なので、違反校が1校もいないなんていう怪しい県もあった。

面倒くさいから原則は変えたくない高野連は、来年度以降の新入生は従来の方針通り、野球を理由とした特待制度は認めないとしている。しかし、そもそも他の競技では特待制度は禁止されてないのに、野球だけが規制されては同じ高校スポーツとして不公平である。どこまで許すか公平なルール作りが必要であり、そのためには野球憲章も見直さざるを得ない。それが面倒だと言うのなら、もう高野連なんて廃止にすればいい。有力私立校は一斉に脱退して、新しい組織を作ればいいのだ。


ところで、今回のドタバタ劇の裏には、なーんと、あの独善と偽善の固まりの朝日新聞がいるのだ。夏の甲子園を主催している朝日新聞は、高野連に理事を派遣しており、高野連は朝日新聞の意向で動いている面が強い。そのため、今回のドタバタ劇について、他のマスコミが一斉に高野連批判を展開するなか、朝日新聞だけは100%高野連を擁護する記事で終始している。もともと朝日新聞に公正な報道を期待するのが間違っているのだけど、それにしてもここまで偏向した報道をして恥ずかしくないのだろうか。面白いことに、さすがに世論の高まりに押されてか、テレビ朝日は最近になって高野連の批判を始めた。新聞と違ってテレビは視聴者の反応を無視する訳にはいかないからだろう。
そろそろこの辺りで、高野連も猛省し、現実に即した制度を作っていくべきだろう。


(石材店)「ところで今年の阪神タイガースは弱いですねえ」
(幹事長)「おっ、いきなり、そう来たか」
(石材店)「かろうじて連敗を9でストップさせたとはいえ、先が思いやられますねえ」
(幹事長)「いーやいやいや、なんのなんの。4年前に18年ぶりの優勝を遂げるまで、17年のうち最下位が10回という輝かしい
       歴史を誇るタイガースだぞ。4月や5月の序盤でたかが9連敗したくらい、屁でもないわ」
(石材店)「この弱さの根元は?」
(幹事長)「戦力から言って妥当なところだと思うけど。先発ピッチャーは、これってのがいないし、打線も非力。
       いくら抑えピッチャーが良いとはいえ、それだけでは勝てんわなあ」
(石材店)「やっぱり井川が抜けたのは痛い?」
(幹事長)「あなな勘違いクソ野郎はいなくて結構。アメリカでもいきなりマイナー降格じゃないか。当然の報いだわな」
(石材店)「もうペナントレースには関心が無いと?」
(幹事長)「何をおっしゃるウサギさん。序盤でこれだけ負けると、もう負けが怖くなくなる。
       たまに勝つと嬉しいけど負けてもぜーんぜん悔しくない。これこそがタイガースの本来の姿じゃないか。
       この数年間がちょっとおかしかっただけ。優勝なんて考えずに、不安なく楽しめます」

(2007.5.12)



〜おしまい〜





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