安倍首相の突然の辞任

〜 なぜだっ!? 〜



安倍首相が突然、辞意を表明した。もう、ほんと、びっくり仰天。あまりの事に、2ヶ月近く、ずうっとサボり気味だったこのコーナーに書かざるを得ない。いや、書きたいっ!

安倍首相は辞任を決意した理由について「今後、テロとの戦いを進めていくには、局面を転換しなければならない。新たな総理のもとで戦いを継続すべきと考えた」と述べているが、全く意味不明、理解不能だ。
また、「テロとの戦いに対する率直な思いを民主党の小沢代表に伝えようと思い、党首会談を申し入れたが、断られた」とし、これも辞任を決意する一因だったことを認めているが、これに至っては、もう、やる気の欠如としか言いようがない。野党の党首から会談を断られて首相を辞めるなんて、聞いたこと無い。呆れかえる。
かつて、せっかく自民党政権を打倒して首相になったのに、様々な困難に直面して、あっさりと投げ出してしまった細川元首相を思い出す。共通するのは、どちらも世間知らずのボンボンってことだ。

安倍首相は「改革を進めていく決意で続投し、内閣改造を行ったが、国民の支持、信頼の上で力強く政策を進めていくのが困難な状況になった」と述べているが、今の段階で、一体何が障害になったのか、分からない。辞めるのなら、惨敗した参議院選挙の直後だろう。なぜ、今なんだ?

もちろん、僕は自民党の強い支持者でもなければ、むしろ小沢党首に一度は政権を任せてみたいくらいなんだけど、それとこれとは別で、今回の辞任は理解できない。そんなに簡単に投げ打つくらいなら、最初からやるな、と言いたい。言いまくりたい!

そもそも、参議院選挙で惨敗したからと言って、安倍首相が辞める理由は全くない、というのが僕の基本的スタンスだ。安倍首相は決して好きでもないし、小泉元首相に比べると迫力も情熱も無く、期待値は限りなくゼロに近いし、小沢党首の方がはるかに期待できそうだし、本当は政権交代に期待したいんだけど、だからと言って、参議院選挙で惨敗したからと言って辞める必要性は全くない。ありません。

参議院選挙での自民党敗北の理由は、ひとえに年金問題だ。それも、年金制度の根本的な問題ではなくて、単に社会保険庁のズサンな管理が問題になっただけだ。これは単に自民党政権の問題ではない。て言うか、社会保険庁の職員の問題だから、むしろ、その労組が支持する民主党の問題だとも言える。社会保険庁の労組は、パソコンの導入にも強固に反対していたくらいの無能集団だ。それなのに、選挙戦術の稚拙さから自民党が批判を一手に受けてしまったのだ。
年金制度については、社会保険庁のズサンな管理よりも、むしろ制度としての根本的な問題の方がはるかに大きい。将来が恐いぞ。ところが、その年金制度の根本的な制度改革については、民主党の提案は極めてズサンだ。何の財源の根拠もなく、税金を投入して解決させようとしているが、あり得ない非現実的な施策だ。それなのに、そんな大事な事は全く議論されないまま、参議院選挙では民主党が圧勝してしまった。ま、小沢党首の選挙戦術の勝利なので、個人的には一概に悪い結果でもないけど。

参議院選挙で惨敗したんだから、衆議院を解散するべきだという意見もあるが、これは全く非論理的だ。なんの説得力もない。2年前の郵政の衆議院選挙で自民党は2/3を超える圧勝したのだから、たかが参議院選挙で過半数を取れなかったからと言って解散する必要はない。二院制の制度の趣旨から言って、与野党の数がねじれたら解散しなければならないなんて理屈は無い。そんなんやったら、二院制なんてやめて無用な参議院なんて廃止にすればいいんだ
衆議院選挙で2/3もの議席を与えたと言うことは、4年間は自民党に任せたという国民の意思表示だ。自分から解散したい場合を除いて、制度上、4年間は解散する必要はない。たかが参議院選挙の結果に左右されて、政権がそんなに短期間でコロコロ変わると困るじゃない。

参議院で野党が過半数の議席を持つという状況のもとでは、政府は、当然ながら、野党の意見をよく聞いて尊重する必要がある。しかし、最終的には衆議院で2/3の議席を持っているのだから、絶対多数で再可決すればいいのだ。制度的にそれが許されているのだから、何も野党から批判されるいわれはない。国民は、それだけの横暴をする権利を2年前の郵政選挙で自民党に与えているのだ。

だから、もう一度、結論を言えば、安倍首相は辞める必要は、ぜーんぜんないなのに辞めるだなんて、無責任にもほどがある。そんないい加減な気持だったんなら、最初からやるな。


ところで、首相もいい加減だけど、そもそも、日本国民もいい加減だよなあ。参議院選挙の結果も極端だったけど、2年前の郵政選挙での自民党圧勝だって、考えてみれば、理性的なものではなかった。個人的には、改革が大きく前進するだろうという期待で喜ばしい結果だったが、あの圧勝ぶりは、冷静な判断としてはあり得ないよなあ。今どき、自民党が2/3を獲得するなんて。民主党が敗北した理由は、簡単だ。郵政民営化に反対したからだ。郵政民営化は、改革路線の大きな象徴的な存在ではあったが、それにしても他の問題は完全に無視された。今回の年金選挙だって同じ構造だ。

このように、選挙結果が、その場その場の気分次第で大きく左右されるというのは、民主主義として未熟だと思う。て言うか、国民はアホだと思う。政治家を批判する前に、国民を批判しなくっちゃ。民主主義が成熟していない日本では、何かあると何でもかんでも国の責任にするけど、国って、そもそも国民なんだから、責任は自分達にある。政治が悪いと批判するのなら、その政治家を選んだ自分達に責任があるのだ。

首相もいい加減、国民もアホだけど、自民党だって、いい加減でアホだ。そもそも、なぜ安倍首相が誕生したのか。安倍首相は、特に政策的に優れた考えを持っていた訳でもなければ、強烈なリーダーシップも無いし、単なる育ちの良い坊ちゃんに過ぎない。しかし、圧倒的な小泉元首相の後を受け、自民党としては、それ以後の選挙で勝てる顔が欲しかったのだ。逆に言えば、他にはロクな顔がいなかったという事だ。当時は、国民の間の人気という点では、安倍首相が圧倒的に高かったのだ。
それなのに、いざ本番の選挙で惨敗したんじゃあ、何の存在意義も無いよなあ。ところが、じゃあ代わりに誰を首相にするかと言えば、これが見あたらない。なりたい人は山ほどいるだろうけど、選挙で勝てる顔になれる人は乏しい。単なる一時の人気で首相を選んでいたんじゃあ、いつまで経っても問題は解決しないよなあ。

(2007.9.12)



〜おしまい〜





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