再生紙偽装

〜 愚かな環境志向を反省しよう 〜



去年から食品や建設分野で相次いで発覚してきた偽装問題だけど、今度は製紙業界から大きな偽装が発覚した

まずは、日本製紙が年賀はがきに混ぜる古紙の割合を、実際よりも大きな数字で偽っていたことが発覚した。しかし、これは日本製紙に限らず、日本郵政にはがき用紙を納入していた他の製紙会社4社も全て同じような偽装をしていたのだ。驚くのは、その数字だ。40%古紙配合と言っておきながら、実際には1%未満だったり、中にはゼロってのもある。いくらなんでも、ひどすぎるんじゃありませんか。しかも、平成8年の再生紙入り年賀はがき発売当初から偽装をしていた。
さらに、はがきだけでなく、あらゆる再生紙の古紙の割合が嘘だらけだった再生紙とうたいながら古紙が全く含まれていない製品もあった。古紙100%と表示しているコピー用紙が実際には40%、40%と表示している厚紙では0%などだ。呆れて開いた口がふさがらない恐るべき偽装だ。

(石材店)「恐るべき偽装と言いながら、サブタイトルからすると、論旨は違いますね?」
(幹事長)「それは後で述べるとして、今回の偽装発覚で一番驚いたのは、理由は何にせよ、日本製紙なんていう
       日本を代表する大企業ともあろうものが、平気で偽装を続けていた事だよなあ」


実は、耐火用建材の偽造でも、世界を代表する大企業トヨタも偽装が発覚している。そりゃあ、色々と仕方ない事情はあるだろうけど、トヨタみたいな超優良企業が住宅用建材の偽装をしていたってのは、ちょっと信じられない。
もちろん、マスコミは頭が悪いから、何でもかんでも一緒くたに報道するから、本当にトヨタもニチアスと同じような偽装をしていたのかどうかは不明だ。一時期マスコミを賑わせた電力会社の法令違反報道も、水力発電所で発電用の水の一部を手洗い用水に使っていたとかいうような、信じられないくらいしょうもない案件も多かった。大量の水を使って発電している水力発電所で、完全に無視できるくらいの微量の水を手洗いに使ってはいけないのか。呆れかえる報道だ。
しかし、今回の再生紙の偽装は、明らかに悪質な偽装だ。優良企業とは思えない悪質な偽装だ

(石材店)「おっ、まともな論調じゃないですか」
(幹事長)「しかし、ここからが違うぞ」


日本製紙なんていう優良企業が偽装を続けていたのは言語道断なんだけど、その背景を考えると、問題は、むしろ頭の悪いヒステリック環境主義者の方だ。


まず、根本の問題として、再生紙が絶対的に環境に良いという愚かな思いこみだ。頭の悪いヒステリック環境主義者が先導し、頭の悪いマスコミが同調し、頭の悪い環境省が迎合したせいで、広く誤解が広まってしまったが、正確な事実認識が必要だ。

電力会社の人間なら誰でも知っているが、製紙工場は、あんまり電気を買ってくれない。紙パルプの製造過程で発生する黒液と呼ばれる植物性廃液を燃焼させ、エネルギーを再利用しているからだ。この黒液は、もちろん植物から出たものだから地球温暖化抑制の観点からは環境負荷が無い。一方、古紙の再生には、化石燃料によるエネルギーを使用する必要がある。しかも、古紙を再生せずにゴミ発電に回せば、化石燃料の消費を抑制できる。なので、CO2問題からすると、再生紙の方が環境に悪い
もちろん、一方で、紙パルプの原材料である木材の事を考えると、古紙の再生も必要不可欠だ。しかし、何がなんでも再生紙が良いというヒステリックな誤解は解消しなければならない。森林の減少につながるような伐採は止めなければならないが、再生できるだけの量を伐採するのであれば、それを製紙に使う方がトータルとしては環境負荷が抑えられるのだ。

また、再生紙は汚いので、漂白する時に大量の薬品やエネルギーが使われている。消費者が、再生紙なら汚くても許容すれば問題は軽減できるが、プリンターやコピーのカラー化が進展した今、消費者はどうしても白色度の高い紙を求める傾向にある。
なので、あらゆる紙製品の古紙配合率を高めることは、環境に悪い。小さい字の辞典や、美しさが求められる写真集などに使われる紙は、あくまでも白くなければならないので、そういう紙に無理矢理古紙を混ぜるのは、漂白による環境負荷が高まってしまう。

このように、何がなんでも古紙の配合率を高めるのが良い訳ではない。それなのに、なぜこんな状況になったのか。それは頭の悪い役人のせいだ。グリーン購入法なんていう浅知恵の法律ができ、国や自治体にはあり得ない数字の再生紙利用が義務付けられてしまったのだ。なんと、印刷用紙では古紙70%、コピー用紙に至っては古紙100%になっているのだ。あり得なーいっ!

あり得ないんだから、製紙業界は、「そんなん理不尽じゃ」と言えば良かったんだけど、なかなか言い出せなかったようだ。
年賀はがきに関する日本製紙の言い訳としては、最初は、工場内で発生した損紙も古紙としてカウントできると考え、本当の古紙パルプは6%に過ぎなかったけど、合わせれば30%になるので、近い将来の技術革新も織り込んで配合率40%が実現可能と判断して受注したとのことだ。ところが、実際には、工場で発生した損紙は古紙とは認められなかったため、いくら技術革新したって、6%を40%にする事は不可能なので、偽装するしかなかったのだ。仮に、古紙配合率を要請通り40%にすると、黒い汚れが製品に混じり、お年玉くじの番号が判別しにくくなったり、郵便番号読み取り機を使った仕分け作業に支障をきたす恐れが出るのだ。

もちろん、「できませんでしたわ」って謝れば済む事だけど、それじゃあ商売にならんわな。製紙業界は過当競争気味なので、契約を他社に持っていかれてしまう。他の各社も状況は似たようなもので、営業上、他社ができているものを自社はできないとは言えないので、結局、みんなして嘘を付いていた訳だ。みんなが口裏を合わせて嘘を付いていたのか、あるいは、他社はできるのではと疑心暗鬼でやっていたのかは分からないが、業界全体で、不可能な条件での発注を引き受けていたという事に間違いはない。
製紙業界も、何もしなかったわけではない。公称の古紙配合率が実態とあまりに乖離していたので、環境省に対し、コピー用紙の古紙割合を100%から70%に引き下げるよう要請していた。しかし環境省は、今回の偽装発覚を受けて、「多くの人の善意を踏みにじる遺憾な行為だ」なーんて正義感づらして基準見直しを保留した。もともとは、理解能力ゼロの環境省の理不尽な勘違い規制が諸悪の根元だったのに、一方的に製紙業界を責めて自分たちは被害者づらしている。環境省のやる事って、何から何までアホな事ばかりだ。
ま、しかし、役所は、自分が作ったアホな規制のおかげで、自分たちが使える紙が無くなってしまった。まともに使える古紙100%のコピー用紙なんて、この世に存在しないんだから。

それから、別の問題として、再生紙のコストアップも背景にある。もともと化石燃料を使うためにコストが高く着く再生紙だが、さらに経済成長が続く中国で古紙需要が増え、国内には劣悪な品質の古紙しか残らなくなったことも、品質維持との両立をより困難にしている。

(石材店)「ここにも中国の影ですか」
(幹事長)「誰か間違ってボタンを押して核戦争が始まってくれないかなあ」


このように環境負荷は高いし、コストも高いという、悪いことづくめの再生紙なんだけど、ヒステリック環境主義者やマスコミや環境省のせいで、一般社会では、環境への配慮という誤解から再生紙を選択する風潮が強まっている
今回の偽装発覚で、消費者団体からは「年賀状は心を込めて送るもの。それがインチキなら、その思いに汚れをつけることになる。リサイクルされた紙が信用できないとなると、これまで環境によいと思って使ってきた消費者にとってはがっかりだ」なんてコメントが出ているが、諸悪の根元が自分たちであるという自覚は無いのだろう。一方の責任者である環境大臣も「消費者を裏切る行為だ」なんて批判しているけど、こいつも無自覚だよなあ。
もちろん、こういう間違った考えを広めたのはマスコミだ。頭の悪い独善的で自己中心的なマスコミは、どんな問題でも、極めて一方的な論調でしか報道しない。そして、このような風潮に迎合した各種団体や企業は、思考停止状態に陥り、環境重視をアピールするために、パンフレットでも名刺でも何でもかんでも印刷物に「これは古紙100%の再生紙を利用しています」なんて書くようになった。デパートの包装紙にまで書かれるようになった。以前から「ほんとかなあ」なんて素朴な疑問を抱いていたのは、僕だけではないだろう?

こんなアホな社会で生き残るために、製紙業界はやむを得ず偽装を行ったわけだ。

(石材店)「相変わらず、マスコミと役所には厳しいですが、企業には甘いですねえ」
(幹事長)「ただし、今回は、製紙業界にも言いたいな」


上記のように、やむを得ない事情で偽装を続けてきた製紙業界に同情の余地はあるだんけど、その一方で、製紙業界は、リサイクルに熱心だというアピールをしてきた。ちょっと居直りすぎなんじゃないか?製品の高品質と古紙配合率アップという両立困難な二つの要請が背景にあるとはいえ、だからと言って偽装しているものを積極的にアピールするのは、やり過ぎってものだよ
本当に環境負荷の小さいものは何か、という根元的な問題や、技術的な問題、さらには良質な古紙の確保が追いつかなくなった事情を勘案すれば、製紙業界がやった偽装は仕方ないものだと思える。しかし、だからと言って、リサイクルに熱心だよなんてアピールするのは調子に乗りすぎだよなあ。製紙業界は、2006年の古紙利用率は60%と世界トップクラスになり、自分たちをリサイクル優等生とPRしている。ちょっと倫理観が無さ過ぎだよなあ。良識ある企業なら、本当の事を訴え、社会に蔓延した誤解を解消する責任があるだろう。

(石材店)「結局、どうすれば良いと?」
(幹事長)「紙の消費量を抑制させるべきでは?」


情報化が進めば、みんな紙ベースじゃなくてパソコンの画面で見るようになるから、紙の消費は減る、なんて言われて久しいけど、実際には紙の消費量は増加している。なぜかと言えば、情報化が進んで書類の修正が容易になったから、なんぼでもプリントアウトしてコピーするようになったからだ。どう考えても、紙の消費量が多すぎる。僕が会社に入った頃は、まだまだコピー機は少なかった。コストが高かったからだ。そもそもワープロなんて無いから書類は手書きだからプリンターなんて大型コンピューター用しか無かったし。でも、それはそれで何不自由なく社会は回っていたはずだ。
森林伐採を厳しく規制すれば、天然パルプの価格が上がり、古紙再生も相対的に有利になるだろうし、紙の値段が上がれば消費量も抑制されるだろう。グリーン購入法なんていうアホみたいな法律で規制するんじゃなくて、もっと根本的なところで規制すれば、あとは市場原理が解決してくれる。

(2008.1.20)



〜おしまい〜





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